グルメ, 高知へ移住
【高知グルメ】Iターン移住の地域おこし協力隊が営むレトロ古民家の間借りカレー「さわとぽんず」
この情報は2026年8月28日時点の情報となります。


高知市内から東へ車で70分、「四国で一番小さな町」田野町。中心部から数分の海沿いに並ぶ製塩ハウスで、塩作りに精を出す田野屋青蜂・白鯆さんがいた。
二人は高知家の〇〇で以前に訪問した田野屋塩二郎さんのお弟子さん。塩二郎さんに魅せられ、夫婦で関西から移住し、田野町で塩職人を始めて5年。
まずは、天日塩に対する思いを聞いてみた。
左・田野屋白鯆さん 右・田野屋青蜂さん
二人が高知に来たのは2018年。関西で仕事をしていたが「本当にこのままで良いのか?」と思っていた時に、高知県移住フェアで後の師匠となる田野屋塩二郎さんに出会う。
塩二郎さんの第一印象は「ヤバい人だと思いました(笑)あの方は全てが独特じゃないですか。」という。
しかし、塩の話をするときの塩二郎さんは「怖い」という印象とは真逆で、とても楽しそうに話をしていて、そのギャップや雰囲気、オーラ、話すべてにおいて一瞬のうちに引き込まれた。
二人とも高知どころか四国にも来たことがなかったが「そんな世界があるんだ、やってみたい!っていう思いが勝り、高知への移住も全く抵抗がなかった。」と白鯆さん。一方、「塩がどうやって作られるかも知らなかったのに、いきなり大丈夫かな?ちょっと待て、と。」と及び腰だった青蜂さん。
だが、塩作りに触れると「最初は不思議な感じでした。静かな空間で海のにおいに包まれて塩を触る、ということがすごく新鮮でした。」と塩の世界にはまっていった。

塩のお世話は、奥が深い。最初は「良い塩」「悪い塩」も分からず、手探り状態だったという。
青蜂・白鯆の塩は、太平洋と奈半利川が混ざり合う、目の前の海からくみ上げた海水を使用する。
「塩は海水によって出来上がりが違ってきます。流れ込む川の混ざり具合で完成品が変わるんです。」と青蜂さん。
天日塩は、完成まで3カ月ほどかかるため、単純計算で1年間に4回しか作れない。
主な作業は、毎日水を足し、1時間に1回かき混ぜる。
「夏場の今なんかは朝5時から始めます。熱くなるのでだいたい7時くらいまでが勝負かな。」と白鯆さん。
ハウス内の温度上昇に合わせるように塩も熱くなる。そうなるとヘラで混ぜることもあるが、できるだけ手で混ぜたいので早い時間から始める。
「塩作りで一番重要なのは混ぜ方。気温と温度の調整も大事。つぎ足す水の量や混ぜる感覚、ハウス内の風の通し方で乾燥の仕方が変わる。色んな細かい調整で粒の大きさを変えていく。」と青蜂さん。

怖いもの見たさでハウスの中にお邪魔してみた。
青蜂さんがドアを開けた途端、2メートル程離れていても中のもわっとした熱が伝わってきた。意を決して入ってみると、5秒ほどで全身から汗が噴き出てきた。
「今はだいたい70℃くらいですかね~」ハウスから出ると33℃の外気温がクーラーの風にあたっているかのように涼しかった。
「お世話をしていると、サウナ行かなくても1日に何回も整ってますよ。」と飄々と語る青蜂さん。

塩二郎さんには二人の他にも弟子がいる。
兄弟弟子は独立したら田野町を出て、県内の他市町村で製塩をしているが二人は田野町にとどまって製塩をすることにした。
「塩職人になると決めた時から最初から田野町でやるつもりで高知に来た。他の土地で続ける選択肢はなかった。」と二人は口を揃える。
「それに、全国的に見て、田野の海水は塩を作るうえでとても良い。ここの海水以上の質はなかなかない。あと、晴れの日が多く、比較的天気が安定しているのも良いところですね。」と青蜂さん。

独立して約5年。
「口で説明するのは難しいけど…甘い塩、やわらかい、丸い、ちょっとふわふわしててガツンと塩味がこない滑らかな塩が理想。修業時代から8年作り続けてきても、これだ!と思う自分の究極の塩がなかなかできなくて…。」
出来の悪い塩が出来た際は思い切り廃棄して、塩の“雪”が降ることもあると青蜂さんが話すと、
「そこまで自分の技術を早くもっていかなきゃ。でも、塩が出来るまで長い時間がかかるから、ちょっと失敗したと思ってもやり直すことが出来ないのが難しい。」と塩作りの苦労を語る白鯆さん。

独立5周年を前に白鯆さんが長年考えてきた商品が最近完成した。その名も「まっさらあられ」。
「自分が食べたいもの、塩の味が一番分かる塩むすびのような商品を作りたかった。」と白鯆さんの出身地・滋賀の米を使ったあられと田野町で作った塩で商品開発をした。それを5周年の2026年8月8日に発売。
「まだまだ作りたい商品があるので、それを通して多くの人に天日塩の美味しさを知ってもらえるようにしたい」

天日塩を使用した新たな商品を開発していきたいと行動力のある白鯆さんと、物静かで、感覚で塩を作るという職人気質な青蜂さん。
タイプの違う二人の絶妙なバランスがあるからこそ、塩作りにおいても角のない優しい塩が完成するのだろう。