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【高知グルメPro】フレンチなのにシノワとは?高知でいただく本格ガレットの店「le garçon chinois(ルギャルソンシノワ)」フードジャーナリストが行く高知満腹日記

この情報は2025年5月11日時点の情報となります。

フレンチにエスニック、割烹にとんかつ、居酒屋から立ち食い蕎麦まで、年間700軒食べ歩き、料理評論、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす、食べるプロ「食いしんぼおじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の飲食店・生産者さんをまわって紹介する高知家の〇〇の人気連載記事「高知満腹日記」。今回は、高知市のフレンチ「le garçon chinois(ルギャルソンシノワ)」で本格ガレットをいただいてきました。

高知市の中心エリアからほど近い、菜園場商店街に隣接した桜井町にあるその店から、灯りが漏れていた。

外には、椅子と丸テーブルが三つほどおかれ、フランス語で「le garçon chinoisと書かれた赤い枠のドアと窓から、室内が見える。

中をうかがうと、レストランのようである。

温かみのある明かりに照らされて、カウンターの数人のお客さんがくつろいでいた。

一階は、厨房と向き合うカウンター席と、2人掛けテーブルが二つ置かれている。

折しも、カウンター席はマスターと楽しそうに談笑する常連客で埋まっていた。

その自然ななじみ方が、この店の居心地の良さを語っている。

我々は4人だったので、2階に案内された。

JAZZの演奏シーンを写したモノクロ写真が飾られた階段を登っていくと、素敵な空間が現れる。

4人掛けテーブル席と2人掛けソファー席が置かれたその空間は、友人の家に招かれたような、暖かみがあった。

メニューを見ながら、食前酒にジントニックを頼む。

静かに流れるJAZZボーカルを聴きながら、ジントニックを飲み、前菜を待つ。

心地よい。

音楽に身を任せ、ジントニックを飲んでいると、まどろみたくなってくる。

ほどなくしてサービスの女性が、ラギオールのナイフとフォークをセットした。

最初は「鶏レバーのパテ」と「パンドカンパーニュ」が運ばれる。

パテを食べれば、レバーが隠し持った甘みと鉄分の旨みが、優しく滲む。

そんなバテを、パンドカンパーニュに塗りつけて口に運び、赤ワインを合わせた。

うむ、幸せだ。

次は、ハムと卵、チーズを乗せた蕎麦粉のガレット(クレープ)の中でも定番中の定番、「ガレットコンブレット」である。

ちなみにコンブレットとは、「完璧な」という意味で、この組み合わせこそ最強だろう。

溶けたグリュイエールチーズにハムが乗せられ、真ん中には半熟の卵が鎮座している。

食べれば、チーズのコクにハムの塩気と卵の甘み、そしてガレットの素朴な味わいが加わって、唸る。

まさに、完璧の組み合わせである。

おそらく高知で、本格的ガレットがいただけるのは、ここだけだろう。

お次は、「ムール貝 白ワイン蒸し」が運ばれた。

フライパンのまま運んでくるとは、センスがいいね。

黒い貝殻から、オレンジ色の身がのぞいていて、思わず喉が鳴る。

貝をいただく前に、蒸し汁を少し飲んでみた。

ああ、これは、蒸し汁だけで白ワインが飲めちゃうね。

食べ方はこうである。

二枚貝の一枚を外し、その一枚の貝殻をスプーン代わりにして、身を外し、口に運ぶ。

ムール貝はこう食べなくちゃ雰囲気が出ない。

食べたら、すかさず白ワインを飲む。

もはやここは、フランスブルターニュか。

最後は「鶏肉とポテトの香草焼き(ロティサリーチキン)」が運ばれた。

ローズマリーと共に焼かれた鶏は、味をふっくらと膨らませ、「早く食べて」と、誘いかける。

ナイフで切って口に運べば、皮はバリッと香ばしく、肉はしっとりとほぐれていく。

そして、たっぷりと含んだ肉汁を舌に流す。

大きめに切って、頬ばり、口の中を鶏のエキスで溢れさせる。

今度は赤ワインだな。

鶏肉で気持ちを充足させたら、デセールといこう。

「季節のタルトはなんですか?」と聞くと、「イチゴのタルトです」と答えられた。

「焼いたタルトの上にイチゴを乗せているのですね?」と、聞くと、「いえ、イチゴも焼いています」というではないか。

イチゴのタルトは、焼かれて凝縮したいちごの甘みがいい。

ついでにフランス菓子の定番である「タルトブルダルー(アーモンドタルト)」も頼む。

ナッツが乗ったタルトブルダルーは、アーモンドクリームがいい。

メニューの数は多くない。

だが自分の好きな料理だけに絞って、的確な料理を出しているところがいい。

最後にご主人に聞いてみた。

「なぜフランス料理なのにシノワという店名なのですか?」と。

すると洒落た彼は答えた。

「ずっと上海でフランス料理の店をやっていたんです」。

中国の給仕人。そういうことだったのか。

フランス人にしか出せないような慣れ親しんだ、安定した味わいは、彼が歩んできた人生の味なのだろう。

店舗情報

le garçon chinois(ルギャルソンシノワ)

住所:高知県高知市桜井町1丁目2−23 

電話: 080-2970-8930

営業時間:火曜〜木曜:18:00〜23:00

     金曜:18:00〜00:30

     土曜:12:00〜15:00(ランチ)/18:00〜00:30

定休日:日曜日・月曜日

インスタグラム:@legarconchinois_takashi