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【高知家の〇〇特別企画『高知に来たら必ず訪れたい店』】大切な人に食べてもらいたい誠意と丁寧が込められたイタリアン「トラットリア トロドーロ」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2023年4月23日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹にとんかつ、フレンチにエスニック、そしてスイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する高知家の〇〇の人気連載記事「高知満腹日記」。今回は、高知家の〇〇の2000記事公開記念企画「マッキーさんが高知に来たら必ず訪れたい店」の第五弾として、前回に引き続き、マッキーさんから「変態シェフ」の称号を授かったオーナーシェフが営む高知市菜園場町のイタリアン「トラットリア トロドーロ」を紹介します。

先日はトロドーロを代表する二つの料理である「リッボリータ」と牛肉の煮込み「ペポーゾ」をご紹介した。

【記事】ここでしか食べられない個性が光るイタリアン「トラットリア トロドーロ」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

今回はそれ以外の料理をご紹介したい。

まずは前菜の内臓料理である。

「ランブレドット、ギアラのフィレンツェ風煮込み」という品書きを見た瞬間、頼むことを決めていた。

内臓好きなら「ギアラ」という文字を見たら、頼まずにはいられない。

牛の第四胃袋で、赤センマイ、赤センとも呼ばれる。

ふんわりとした食感で、中に刺し込んだ脂がおいしい部位である。

ランプレドット(Lampredotto)とは、ギアラを野菜類と煮込んだフィレンツェの伝統料理で、屋台で売られているB級グルメ的な料理である。

この一品、ギアラからにじみ出た脂の甘みと野菜類の優しい甘みが抱き合った、穏やかなうま味が舌に広がって、実にいい。

さらに焼いたパンには、イタリアンパセリとセロリのペーストが添えられる。

この緑のペーストをパン塗って、ランプレドットを乗せがぶりとやる。

気分はもうフィレンツェである。

パスタは3品お願いした。

まずは、「タコと黒オリーブケイバーキタッラ」である。

トマトソースにケイパーや黒オリーブを加えたプッタネスカソースにタコを加えたパスタである。

何よりソースが美味しい。

丸い甘みを持つトマトソースに、黒オリーブのかすかな苦みやケイパーの酸味が溶け込み、そこにタコの味が染み込んで、深く複雑な味になっている。

さらにセロリの葉の香りがアクセントになって、爽やかさも加える憎い演出である。

このソースを受け止め、柔らかく煮込まれたタコがからむよう、太めのキッタラを選んでいるのも素晴らしい。

何気ないようでいて、繊細な計算が行き届いたパスタである。

続いては、肉のパスタを2種類。

「全粒粉を練り込んだパッパルデッレ  国産イノシシのラグー」。

こちらは、全粒粉による素朴な味わいの幅広パスタが、煮込んだイノシシの力強さを受け止める、骨太な料理である。

塩味がピタリと決まり、食べた瞬間に赤ワインが恋しくなる。

食べながら、「イタリア料理を食らってるぞー!」と立ち上がり、大声で叫びたくなる。

そんな高揚感を与えてくれる料理である。

そして、「四万十豚のラグーレモン風味 タリオリーニ」は、塩だけで豚肩ロースのブロックを1日マリネしてから、白ワインと玉ねぎ、人参、セロリで柔らかくなるまで煮込んだ後、レモンの皮をすりおろして、仕上げにバターで絡めたという。

一皿に時間と手間をかける山本シェフらしい料理である。

それでいてレモンの利かせ方がよく、料理に軽やかさを出し、かつ豚肉自体の甘みを引き立てている。

だから、瞬く間に食べ終えてしまう。

食べながら「あの人に食べさせたいなあ」と思う料理である。

山本シェフの作る料理には、どれも丁寧という調味が生きている。

そして、伝統料理にただ忠実なだけでなく、自らのアイデアを加えたより良きものへと変化させているのである。

誠意を込めた丹念と常により良き答えを求める丁寧は、人の心を捉える。

だから、また来たくなる。

東京には、優れたイタリアンが山ほどある。

一方、高知は、イタリアン自体が日本で一番少ない。

それなのに、またここへ来たくなるのは、そんな料理の変化と山本シェフの誠意に会いたくなるからなのだ。

高知県高知市菜園場町4丁目「トラットリア トロドーロ」にて

 

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