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【高知グルメPro】地元愛されイタリアンから人気の和食屋に夜の〆の屋台餃子までそろう「廿代町」のおススメグルメ6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2023年9月10日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、テレビ、ラジオ出演や料理評論、紀行、雑誌寄稿を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は「妙においしい」カレーいただきに、高知県吾川郡仁淀川町の「ドライブイン引地橋(ひきちばし)」にお邪魔してきました。
高知市から車で1時間半をかけてリベンジに来た。
高知県吾川郡仁淀川町にある「ドライブイン引地橋」である。
「そのカレーライスは、妙においしい」。
その噂を聞きつけ前回来たのだが、「すいません。ご飯が売り切れてしまいました」の一言で、落胆の谷底へ突き落とされた。
「せめて、カレーソースだけください」と、言いたかったが、ぐっと堪えて山菜そばを食べ、すごすごと帰ったのである。
【記事】仁淀川沿いの人気ドライブインで贅沢天ぷらうどん「ドライブイン引地橋」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記
今回は万全を期し、開店直後に訪れた。
山の中にあるのに関わらず、変わらずの人気で、まだ11時過ぎだというのに満席だ。
「カレーライスください」。
席に座るやいなや注文した。
「はい、カレーライスですね」と、返すおばちゃんの声に安堵する。
カレーライスは750円。
前菜は、串が乱立するおでん鍋から、豆腐とこんにゃくを選ぶ。
田舎豆腐である。
それは、紐で縛って持ち運びできるくらいに、固い。
これなら豆腐の角に頭をぶつけても、かすり傷くらいはできるかもしれない。
しっかりしているので、ずしっと腹に響く。
こんにゃくもまた、都会のこんにゃくが軟弱に思える、しっかりとした作りである。
辛子をつけようと箸を伸ばせば、辛子ではなく辛子味噌であった。
おでんひとつとっても、都会とは違う非日常感がある。
田舎おでんにしみじみと浸っていると、愛想のいいおばちゃんがカレーを運んできて声をかける。
「お待ちどうさまでした」。
さあ、いよいよ主役、カレーの登場である。
大きい切り方をされた、玉ねぎがたっぷりと入っている。
肉はソースに埋没しているのか、見当たらない
最初の一口に、甘さを感じる。
そこに懐かしさが追いかける。
幼い頃、学校の帰り道、どこかの家からカレーの匂いが漂ってきて、ああ今夜はうちもカレーだといいなあ、と思った記憶が蘇る。
甘く懐かしさがあるが、後から辛い。
むむ。これは辛いが、唐辛子の辛さではないぞ。
辛いというよりヒリリとする感覚、これは白胡椒の刺激か。
その奥にスパイシーさも潜んでいる。
ひとくち目は甘いが、これはお子様が食べられないカレーだな。
昭和のお子様カレー風を装いながら、大人のカレーなのだ。
だから人気を呼ぶんだな。
だからご飯が切れちゃうんだな。
甘さがあるといっても玉ねぎの甘さだけではない。
その時牛肉バラを発見した。
ああ、この牛脂の甘みも加わっているのか。
さらに小さく人参も発見した。
だが、どこにあるのかわからないほどの大きさである。
ニンニクの香りもある。
食べるたびに虜になっていく魔力がある。
ここのカレーのおいしさとは、一見何気無い、どこにでもあるカレーのようでいながら、インド料理でも欧州カレーでも、ましてや喫茶店でもない独自性である。
独自性といっても際立っているわけではない。
作れと言われても作れない不思議があるところが、魅力なのである。
ほら、クラスにいたでしょ。
一見地味に見えながら、話すと変な趣味があったりして妙に大人びていたやつ。
そんな感じである。
ご飯ものということで、前回断念した「焼きめし750円」もいただく。
具は玉ねぎ、ピーマン、人参、豚肉、卵で、パラパラに炒められ、こういうドライブイン系では珍しく、塩分少なめの味である。
さらにデザートに、ところてんもいってみた。
酢と甘味、出汁、胡麻と生姜入りだった
高知のところてんはカツオ出汁味が基本だが、酢が入っているのは珍しい。
「ドライブイン引地橋」は高知から愛媛の松山に抜ける山間の道にあり、昭和前から茶店であったというから、もう百年近くこの地で店を開いていることになる。
今の建物になったのは、35年前からだという。
食べ終わっておばちゃんに声かけた。
「カレーライスおいしかったです、玉ねぎの大きさと量がいいですね」。
そういうとおばちゃんは言った。
「ありがとう。玉ねぎ、そう?でも食べにくいでしょ」
といって、優しい笑みを浮かべるのだった。
高知県吾川郡仁淀川町引地「ドライブイン引地橋」にて