起業・事業承継
【高知家の後継者募集】地域の必須インフラのガソリンスタンドを残せ!梼原町「氏原石油」
この情報は2026年9月30日時点の情報となります。
トンネルを抜けると、車道が海に繋がっているような不思議な風景に出会う。視線の先の海が道と重なるため、そんな錯覚にとらわれる。
ここは土佐清水市の市街地から足摺岬へ向かう県道。太陽と海に直接触れ合えるような場所だ。

目的地は、切り立った断崖の近くに立つ「民宿西田」。沈む夕日を一番楽しめると地元では評判だった宿だ。
「ここの夕日は本当に美しいんです。夕日が綺麗な宿として人気がありました」
オーナーの西田洋一さん(79)が強調する。
父が始めた民宿事業を承継して、今の場所へ1974年に新築、1995年に増築し2021年に改装した。

「高度成長期から平成にかけては、多くの宿泊客が来てくれました。だから、53人の定員でしたが、80人規模に増築したんですよ」
西田さんが当時を懐かしむ。
リーズナブルな値段設定だった事に加え、客室から見える夕日の美しさで人気が高まった。満室が続き、断るのに苦労した時期もあったそうだ。
ただ、加齢に伴う身体の衰えは隠せず、5年ほど前に別の事業者に業務委託し、2年前に休業。
「若ければ、新たな展開を考えるけれど、体力的に自分で再開することはもう困難」として、全国から後継者を募集することにしたという。
敷地は約400㎡で、建物は鉄骨・コンクリートブロック造り2階建て(地下1階)、延べ約1150㎡。

客室は17部屋あり、最大収容人員は84人。
5年前にリノベーションし、一部の客室には、ウッドデッキも備えられている。

部屋は全室和室で、大広間や食堂用途だった部屋があり、承継者のアイデア次第で自由に活用できる。
「2028年のNHKの大河ドラマで、ジョン万次郎が取り上げられます。観光客はきっと増えるでしょう。タイミングはいいと思います」

西田さんの妻、美枝さん(77)が応接室の窓から見える海を見ながら微笑んだ。
眼前に広がる太平洋は水平線まで青く輝き、陽光のきらめきが眩しい。
部屋に荷物を置き、夕暮れまでの時間をテラスで過ごす。目の前には、ただただ大きく真っ青な海が広がる。太平洋は、近くで見ると想像していた以上に広い。
スマートフォンを置いて、ウッドデッキの椅子に腰をかける。風が頬を撫でていく。

やがて西の空が少しずつ色を変え始める。青かった海に夕暮れの影が忍び寄り、空は淡いオレンジに染まる。天空にある時よりもひと際大きく見える太陽が、金色の光を放ちながら水平線に沈んでいく。

この光景を見るだけで、身体の中に澱のように溜まっていたものが、少しずつ消えていく。時間がゆっくりと流れる。忘れていた自分の呼吸を、少しずつ思い出す。ここは、そんな時間を過ごせる場所だ。
民宿を閉じて約2年。再開を望む人々は少なからずいるだろう。この宿泊施設が、夕日のように沈んでしまうのは、あまりにもったいない。意欲ある後継者のチャレンジに期待したい。
民宿西田
住所:高知県土佐清水市足摺岬716-1

経営は上手く行っているのに、後継者がいないために廃業せざるを得ない――そんな悩みを持つ企業が全国的に激増し、大きな社会問題になっている。高齢化先進県である高知県は全国に輪をかけて、事業承継の課題が山積している。「県内での事業承継を少しでも増やしたい」。このコーナーは、事業を譲りたい人と受け継ぎたい人を繋ぐ連載です。
高知県事業承継・引継ぎ支援センター(088-802-6002)
メール kochi-center@kochi-hikitsugi.go.jp
担当 谷、野本