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この情報は2026年6月30日時点の情報となります。

土佐の高知には「お客」という言葉がある。
単なる来客対応ではなく、地域に根づいた「宴会文化」をこう呼ぶ。
「人が集まり、飲み、食べ、語り合う場」を丸ごと指す言葉で、開放的な土佐人の気質を本当に良く表している。
この「お客」に、絶対に欠かせないのが、「皿鉢料理」。

色とりどりの大皿に美しく盛りつけられた料理や刺身、カツオのたたきは、「お客」の主役だ。
単なる「料理の盛り合わせ」という言葉では言い表すことは不可能。宴会そのものをひとつの風景として成立させてしまうような、不思議な力を持つ大皿だ。
香美市土佐山田町にある「かとう仕出し店」のオーナー、加藤正三さん(80)は、その主役たちを半世紀以上作り続け、地域のお客文化を支えてきた。

「お正月用に200枚ほど作っていた時代もありましたねえ。今は宴席自体が減ってますけど…」
加藤さんが料理の道に入ったのは、高校を卒業してすぐ。
東京の料理学校を経て、高知市内などの店で修業し、30歳の時に地元の土佐山田に店を開いた。
当初は鮮魚店と仕出し店を兼ねていたが、5年後には仕出し専業に切り替えた。
「昭和から平成にかけては本当に忙しかった。夜も寝ないで皿鉢を作り続けたこともありました。アルバイトの方も数人雇っていましたね」
妻の二佐世さん(78)と一緒に店を切り盛りし、地元では評判の仕出し店として多くの住民に愛されてきた。
お正月やお盆、節句などの繁忙期は、多忙を極め、一心不乱に働いてきた。結婚式や葬儀での需要も多かった。

もともと鮮魚店も営んでいたこともあり、魚の活け造りは得意料理。その丁寧な仕事から出来上がる美しい皿鉢は、どの宴席でも卓上の主役として輝きを放ち、顧客を喜ばせてきた。
しかし、最近は皿鉢を注文しての宴席が少なくなってきたうえに、長年手伝ってくれてきた二佐世さんも病気がちに。
「80歳も超えたので、もうこの辺で…」と決断。
「後を引き継いでくれる人がいれば任せたい」として、全国から後継者を募ることにした。
店舗は鉄骨造り2階建てで、延べ約40坪。1階が店舗で2階が居住用スペースになっている。

冷蔵設備は新しく、大型のものや台下冷蔵庫などが4台と充実している。
皿鉢などの食器類やほかの備品なども全て引き継いでもらっていいという。
また、店の料理を引き継ぎたい希望があれば、伴走支援も行い、長年の顧客名簿も譲ってくれるそうだ。

皿鉢料理は、一つの大皿料理ではあるが、「お客」の席では、人々の会話や笑い声、その時の感情をも包み込む大きな器でもある。
食べ終えて空になっても、美しいデザインが現れて、宴席の雰囲気を保ち続ける。
半世紀にわたって、土佐山田の宴席を盛り上げてきた「かとう仕出し店」。
加藤さんが皿鉢料理に込め続けて来た思いを承継し、新しい息吹を皿鉢に組み込んでくれる方が現れることを期待したい。
かとう仕出し店
住所:高知県香美市土佐山田町秦山町2丁目3-51
経営は上手く行っているのに、後継者がいないために廃業せざるを得ない――そんな悩みを持つ企業が全国的に激増し、大きな社会問題になっている。
高齢化先進県である高知県は全国に輪をかけて、事業承継の課題が山積している。
「県内での事業承継を少しでも増やしたい」。このコーナーは、事業を譲りたい人と受け継ぎたい人を繋ぐ連載です。

高知県事業承継・引継ぎ支援センター
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