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「天空の畑で作られている生姜は、普段我々が接している生姜にはない幸せを運んでくる」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記 その79

       

この情報は2019年12月8日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

天空の畑である。

標高600メートルだというが、それより高地な感じがする。

車が一台やっと通れるかどうかの道を走ること30分、ようやく酒井さんご夫婦が耕された畑が見えて来た。

ラッキー農園である。

その日は快晴で、生姜の収穫作業の最中であった。

4年前に酒井さんご夫婦にお会いした時に、こんなことを言われていた。

「この光景に出会ったとき、ああ日本だ、自分は日本人だって思ったんです」。

北海道のメッキ工場で働いていたという酒井さんは、夫婦でサーフィンをして暮らす土地を探していて、この土地に引き寄せられた。

北海道では感じる事のできなかった”日本の原風景“に魅せられ、農業を始めようと、思い立ったという。

そして住民の半数以上が65歳以上になったこの限界村に、移住する。

「隣りの土地は、もう90才だからもうそろそろ畑を辞めようと思っているというおばあさんから譲り受けました。先日若手の飲み会に出ろって言うので出かけたら、全員70歳でした(笑)」

300年前に開墾されたこの土地で、山頂の湧き水を使い、無農薬でトマトと生姜を作り始められた。

掘り出されたばかりの生姜は、ずんぐりむっくりとして、普段野菜売り場で売られている生姜とは、まったく違う。

我々が見てきた生姜は、どちらかというと「もう疲れました」と言ってくたびれた顔をしているが、こちらは生き生きとして、優しい顔つきなのである。

聞けば、ゆっくり育てているという。

さらには、水をやっていないので日持ちする

そしてこの、雲海の上で育つ、天空の畑の空気と水という清涼の中では、野菜も不純を取り入れようがない。

取り立てをかじった。

生姜が生きている。

かじった瞬間に水分が弾け飛ぶ。

辛味がスッキリしてえぐみがない。

澄んだ辛味なのである。

後から香りとほのかな甘みがにじみ出る。

この生姜を二ヵ月おいて、水分が落ち、辛味も香りも強まったところで出荷するという。

後日、銀座のバーでこの生姜を使ったモスコミュールを飲んだ。

カクテルの中に生姜の力がみなぎっていて、喉元あたりをくすぐる。

体に養分が行き渡っていくかのようなカクテルだった。

飲みながら酒井さんご夫婦の素敵な笑顔を、思い出した。

「ラッキー農園」の酒井さんご夫婦は、いつも明るい。

底抜けの笑顔にいつも引き込まれる。

正しいことをやっている人には、いつも救われる。

酒井寿緒さん、笑子さん。

お二人は、その素敵なお名前通りの人生を歩まれている。

高知県長岡郡大豊町佐賀山「ラッキー農園」にて