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「静寂なる村の民家でいただく世界の香りを活かした料理の数々」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2021年3月21日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は高知の野菜や肉、魚を、世界で学んだ香りで活かす料理を静寂なる村の民家でいただく「村の小さな台所おきな」をご紹介します。

時間が、のたりと流れていた。

時折、鳥が鳴く音しか聞こえない。

住民はいるのだろうが、気配を感じない。

そんな静寂な村に、レストランはあった。

日高村は、高知市から車で30分走っただけで着く田舎である。

山林比率が高い高知県は、こうして都市部から少し行っただけで自然に囲まれる。

店主岡村嘉彦さんが、築40年の民家を改築したそのレストランの名前は、「村の小さな台所おきな」という。

上がり框で靴を脱ぎ、奥の居間に通される。

元の持ち主は、相当な資産家だったのだろう。

居間に飾られた調度品が、そのことを語っている。

家という日常ながら、調度品の豪華さが非日常を演出している空気がたまらない。

つまり親しい人の家に招かれたような安堵感がありながら、普段では味わえない非日常のコーフンがある。

料理は料理人である岡村さんが、海外で働き体験した料理が主になっている。

そんな方がなぜ高知で店を開いたの? しかも田舎で? と思う

聞けば、学生時代から海外に出ていて、アメリカからニュージーランドに移り住んだときに、現在の奥さんと出会ったのがきっかけだったという。

奥さんのご実家が高知だったのである。

上海でシェフしていたときに里帰りし、高知の野菜のポテンシャルに驚いた。

ああ、ここで料理を作りたい。

そう強く思ったのだという。

そこで子供が生まれたことをきっかけに、高知へ移り住んだ。

物件を探していたが、縁があり、この日高村の家は、持ち主が高知市にも家があって使っていないので、いかがですか、と声がかかったという。

さあ、料理が運ばれて来た。

グリッシーニに続いて、アンティパストミスト前菜の盛り合わせである。

お肉は、地元の松田精肉店が扱う31か月のあかうしをハムにしたという。

噛むごとに味が膨らみ消えずに、香りがある。

豚肩ロースと四万十鶏のももと胸肉を低温調理したもの、細くシャキシャキと弾む、オレンジ入りキャロットラペ。

さつま芋とけらじミカンをシャンパンで煮詰めたもの。

日高村のレモンを入れて白ワインを振りかけて作ったタコのガリシア風味。

佐川町のマスカルポーネ。

米醤油や宇佐のカツオ節、赤ワインで煮たうずら卵などが盛られている

脇には、味噌パウダーや31種類の香味料を混ぜたというゆかりに似た風味の中近東調味料のデュカ、ラベンダーなどのハーブ塩が添えられる。

さすが世界を旅して来た料理人である。

様々な国の料理や調味料を高知の豊かな産物で生かしている。

次はパスタ料理「柿と日高トマトのクリームバリスタ風」である。

パスタはリングイネを使い、柿、トマト、ペルーレッドコンドル種のコーヒーのエスプレッソとクリームを合わせて。

一見すると想像できぬ味だが、コーヒーの香ばしさと柿の甘い香りが共鳴しあっておいしい。

続いてパンは自家製パンで、アールグレイ風味のバターが添えられる。

魚料理が続いて出された。

昆布締めしてから、魚醤や赤ワイン、醤油を合わせた漬け汁に漬け、パルミジャーノをつけて炙ったという。

これまたいい。

旨味が染み込んで、白味魚の淡い甘みを生かしている。

ここにも、モッツレッラチーズとタラゴン風味のヴィネグレットが添えられる。

岡村さんの料理は、こうした香りのアクセントがあって楽しい

肉料理は、そびえ立つ「ラムシャンク」であった。

おそらくニュージランドでの体験が生きた料理であろう。

堂々たる皿で、肉汁に富む仔羊肉を口いっぱい頬張る醍醐味がある。

デザートは、ウィークエンドシトロン(レモン)と柚子、シナモンが香り高いシュトーレン、コーヒーのアイスと柿マスカルポーネとクリームにカカオニブ、ハエブナミント。

散々と降り注ぐ太陽の力が育てた、高知の力強い野菜や肉、そしてミネラル豊富な黒潮で育った魚たちを、世界で学んだ香りで活かす料理を静寂なる村の民家でいただく。

日本中探しても、こんな素敵な経験は、なかなかできない。

 

高知県高岡郡日高村沖名「村の小さな台所おきな」にて

 

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