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「刺身喰う!貝焼く!肉も焼く!〆にはおじやと炊き込みが待っている創業50年の愛され茶屋」美食おじさん マッキー牧元の高知満腹日記 SEASON2

       

この情報は2020年11月22日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす美食家・食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は、焼き物・フライに麺類まで、昔からメニューを変えず提供し続けている「萩の茶屋」を紹介します。

高知県人はカツオを愛する。
いや、それだけではない。貝を愛する人達でもある。
どの居酒屋に行っても、ナガレコやチャンバラ貝や、その他の高知特有の貝が用意してあり、どの卓でも頼んでいて、老若男女が貝と接吻しているのである。
そんな貝好き人間が集う店があると聞いた。
貝を次から次へ焼く店があると聞いた。
海辺に立つ「萩の茶屋」である。
店に入ると、すでに満席だった。
大勢のお客さんが、目の前の焼きで貝を焼いている。
店の入り口には大きな水槽があり、様々な貝が出番を待っている。
さあ、今日は何を焼こうかと品書きを開ければ、なんと貝や魚料理だけではない。
牛、鶏、豚の焼肉、各種フライもの、八宝菜に蕎麦やうどん、ラーメンまである。
それもそのはず、50年前に創業したときは、街道を走るお客さんのための大衆食堂だったという。
当時はバラック小屋だったというが、それが貝を焼くようになって、人気を得て次第に大きくなり、現在の形となった。
さすが貝好き県である。
しかし貝焼きが中心になっても、当時と全くメニューを変えていないという。
どんなお客さんにも喜んでもらおうという姿勢が貫かれているのが、なんとも嬉しい。
それでは早速食事を頼んでみよう。
まずは、イカとネイリ(ハマチ)の刺身をもらった。
イカはねっとりと甘く、ネイリはコリっと弾む身から脂の甘みがこぼれる。
その後は待望の焼き貝といってみた。
まずは長太郎貝(帆立の仲間で緋扇貝-ヒオウギ貝-)だが、高知だけこの長太郎という名で呼ばれているのである。
赤貝に似た二枚貝の長太郎を焼けば、加熱された貝がカスタネットのように貝殻を動かす。
焼き上がった貝に口をつけ、まず汁だけをちゅっとすする。
ああ熱々の汁は、うまみの洪水である。貝柱がほの甘く品がある。
肝も濃密で、少し半生くらいに仕上げるのがいいだろう。
ハマグリにも似た大貝(大アサリ)は、噛んだ瞬間にミルキーな汁がこぼれ出す。
むむう。とても色気がある貝だなあ。
ナガレコは一般的にはトコブシと呼ばれる貝で高知ではナガレコと呼ぶ。
焼き上がりを噛めば、あっさりとしながら甘い香りが鼻に抜けて、たまらない。
ハマグリも頼んで焼いてみれば、ミルキーな貝の汁がどっどっと口の中に溢れでた。
どの貝も味が濃い。
これはつまり、豊富なミネラル分が海に流れ込んでいる証拠で、山野率が高く、淀みなき綺麗な川が多い、高知ならではの特性だろう。
だから高知の人は、貝好きとなるわけである。
そしてこの濃い貝を、片っ端から焼いては酒を飲む。
貝の旨味に酒の旨味を合わせる。
こいつは、永遠に飲んでいられる肴なのだな。
マテ貝、バカ貝もおすすめだそうだが、最近はとんと見かけなくなったという。
貝で勢いがついて、ロースと砂肝の焼肉も頼んでしまった。
貝焼きと焼肉が両方楽しめるのは、全国探してもこの店しかないのではなかろうか。
しかも焼肉だってレベルが高い。
〆は欲張って、「貝おじや」と「太刀魚ご飯」を注文してみた。
ああ、貝の出汁を吸い込んだ米が、しみじみとうまい。
一方、太刀魚ご飯は、太刀魚を炊き込んだ醤油味のご飯で、ご飯の中から現れて ほろりと崩れる太刀魚に笑顔が溢れる。
時期を変えてまた訪れたい。
高知の濃密な貝と接吻したい。
 
高知県土佐市宇佐「萩の茶屋」にて