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暑い夏にカツオの町でいただく旨辛い料理「市場食堂 ど久礼もん」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2022年8月7日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす「美食おじさん」ことマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は「カツオの町 中土佐町久礼」で、暑い夏に食べたくなる「辛い料理」をいただいてきました。

今年は猛暑が続いている。

こんな時は冷たい料理もいい。

だが、うだるような熱さが続くと、体の底からある欲求が芽生えてくる。

「辛いものが食べたい」である。

こういう季節こそ、辛い料理を食べて大いに発汗したくなるのである。

そこで僕は、中土佐町の久礼に向かった。

今まで中土佐町久礼では、田中鮮魚店の様々な魚料理や、うつぼのすき焼き鍋、ところてんの店などを紹介してきた。

どちらかというと、魚料理の町である。

辛いものとは縁がなさそうである。

しかしここに、魚介も駆使した辛い料理があるという。

それは聞きずてならないと、中土佐に向かったのである。

店は、久礼大正町市場にある食堂「ど久礼もん」という。

ど久礼もんの「どくれ」とは、高知弁で、ヘソを曲げた頑固者、あるいは、知恵が働き、相手の鼻を明かす痛快な理知性をもった人という意味があるらしく、我々をどんな機転で驚かしてくれる料理が出るか楽しみである。

まずはカレーときた。

「なぶらスープカレー」という。

黒い大きな器にカレーがいらられ、湯気を立てている。

なぶらとは、魚の群れのことで、大正町市場に揚がる、かつお・まぐろ・イカ・シイラと、地元の野菜、人参、玉ねぎ、カボチャ、じゃがいもなどが入った、具沢山のスープカレーである。

おそらくカレーにシイラが入っているのはここだけであろう。

スープをすすれば、ベースにしたトマトの旨味と鰹節出汁が合わさった、まろやかな旨味が広がる。

しかしその後から、辛味が顔を出し、口の中を暴れまわる。

このまろやかさと辛味刺激という対比がいい。

優しくて厳しい、褒められて叱られるような、両者の魅力に翻弄されながら食べていく感覚にはまった。

続いては、カツオ丼ときた。

丼いっぱいに敷き詰められたカツオの切り身の上には、とろろがかけられている。

そこへど久礼もん特製「俺のタレ」をかける。

この「俺のタレ」がいけません。

出汁の旨味と醤油の濃い旨味がからんだタレが、カツオの鉄分を盛り上げて、ご飯が止まらなくなるのであった。

この「俺のタレ」は、海鮮丼用のタレで、漫画「土佐の一本釣り」主人公の題材となった名物漁師、川島さんが考案したタレだという。

カツオでなくとも、刺身を並べてタレをかければ、ご飯が何杯でもいけちゃう危険なものらしい。

さあ最後は、ど久礼もんのスペシャリテ「焼きラーうどん」が運ばれてきた。

キャベツと玉ねぎ、人参とにら、カツオによる焼うどんで、真ん中に卵を落とし鰹節がかけられている。

たべればソースの旨味の中から、ヒリリと辛味が現れ口内粘膜を襲う。

聞けば、 「漁師のラー油」と特製ソースを入れているのだという。

「漁師のラー油」は焼き上げたカツオを入れたラー油で、辛いだけではない旨味が存分にある。

うどんを食べたあとで、残った具材にご飯を入れて混ぜ、食べてみた。

ああ、これもたまりません。

何かいけないことしているような高揚感があって、今までご飯もうどんも食べたというのに、食欲に再点火してしまった。

「この焼きラーうどん、やみつきになりますね。秘訣は、漁師のラー油と特製ソースの割合ですか?」

そう聞くと、店の方が言った。

「はい。でもそれ以外に秘密のものを入れてます」。

ああなんだろう。

また、それを探りに来なくちゃいけないじゃないか。

 高知県高岡郡中土佐町久礼「市場食堂 ど久礼もん」にて