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暑い高知で食べたくなる「〇〇〇出汁のところてん」と「〇〇かき氷」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

この情報は2022年7月17日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹にとんかつ、フレンチにエスニック、そしてスイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが、高知の料理店・生産者さんをめぐって紹介する高知家の〇〇の人気連載記事「高知満腹日記」。今回は高知のローカルフード「ところてん」をいただきに中土佐町の「高知屋」に行ってきました。

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高知も、毎日暑い日が続いている。

こんな時僕が思い浮かべるのは、中土佐町久礼の「高知屋」である。

ところてん、一杯二百円を食べたい。

なんとしても食べたい。

その一心で中土佐に向かった。

お母さんは健在で、「ところてんください」というと、「はいよ」と、器に入れてくれる。

ガラスの器に入れられた「ところてん」は、さりげない。

海苔も辛子もなく、鰹出汁の中で涼やかに佇んでいる。

そう。高知でところてんといえば、鰹出汁なのである。

関東では酢醤油に和辛子と刻み海苔や青海苔、関西は黒蜜が普通である。

東北では、酢醤油のほかに、味噌や醤油、中国地方では麺つゆ、沖縄では黒蜜やもろみ酢と様々な食べ方があるが、高知は鰹出汁一択なのである。

箸で掴み、そうっとすすると、ひんやりと唇に触れる。

ところてんは、そのまま舌を冷やしながら、ぐにゃりと崩れる。

噛めば、そこにあったのは海の声だった。

孤高の海底に響く、無垢の息吹だった。

ところ天とは、かくも澄んだ味わいなのか。

一本一本に、静かな海の滋養が溶けている。

四万十の水を使ったカツオ節の出汁と醤油が出会ったつゆは、同じ海の産物として、ところてんの純粋を邪魔しない。

炎天下の中、クーラーもなきこの店に入ってところてんを食べる。

白髪のお母さんの、優しい笑顔に出会う。

もうそれだけで、猛暑は去っていく。

 

目的は達した。

しかしそこに、「文旦のかき氷」というのを見つけてしまったのですね。

これはもう頼むしかない。

頼めば、薄黄色のシロップがかけられたかき氷の上に、文旦の果実がいくつか乗っている。

もう見たからに涼やかではないか。

食べて笑った。

文旦と「きびとう」を合わせたというシロップが実にいい。

かき氷にありがちな、シロップの甘過ぎがない。

微かな苦味があって、甘すぎず、口の中を爽やかな風が吹き抜けていく。

冬のうちに収穫し、自然解凍で見事に収穫時の食感が再現されている文旦のひんやりが、このかき氷の魅力をふくらましている。

いやあ、まいったなあ。

文旦かき氷と、ところてん、両方をまた食べにこなくてはいけないじゃないですか。

この文旦かき氷、以前来た時にはなかった。

創業大正10年、「高知屋」はゆっくりと進化しているのであった。

高知県高岡郡中土佐町久礼「高知屋」にて