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主人が高知にいるときだけ開店する人気板前割烹「将人」 美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2021年11月21日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は、スペインのマドリード、銀座、神戸にお店を展開している主が高知に滞在しているときだけOPENする「将人」にお邪魔してきました。

店主が高知にいるときだけに開店する。

そんな店が高知市内にある。

年間約半年だけ開くというその店の名は、「将人」という。

ここは以前「座屋」という割烹だった。

いや、今でも「座屋」は二階で営業しており、「将人」は一階カウンター席が主の岡添将さんが高知にいるときだけに開店する板前割烹なのである。

「座屋」は、東京銀座、神戸、そしてスペインのマドリードに店を展開している。

岡添さんも国内と海外を飛び回っていたが、コロナ禍で考えるところがあり、今回の形を決めたという。

店に入ると、人懐こそうな岡添さんがいた。

初めてお会いするのに、どこかで会った気がする。

長い間様々な店を回ってきたが、こういう感覚を受ける人がいる店は、間違いない。

すぐに打ち解けて、今回のきっかけやマドリード店の様子などを話すことができた。

20年前の10月に「座屋」を開店させ、その後2005年神戸、2008年に銀座、2013年にマドリードと店を開いていったという。

先付けに出されたのは、「炙り生カラスミと餅米」である。

ほどよい塩分を餅米が受け止め、なにより少し焦げた香りが、食欲を煽る。

続いてお造りは、皮目だけを藁焼きにしたモンズマ、ウニ、 金目鯛にタコと真鯛だった。

どれも質が高い。中でも素晴らしかったのはモンズマである。

スマガツオ、ヤイトガツオと呼ばれる小型のカツオで、本マグロの中トロに似た色合いをして、そのなめらかな食感も綺麗な脂も、中トロを感じさせる。いや中トロより美味しいかもしれない。

そう思わせるほどの魚で幻の魚とも言われ、10月から11月が旬である。

藁で皮目を炙ったことで燻した香りがつき、その香ばしさと滑らかな肉体との対比が面白い。

さらにはそのモンズマを、刺身用に特製してもらったという田野屋塩二郎さんの塩でいただくと、グッと旨味が膨らんでくる。

お造りに満足したところで、「ぶり大根」が出された。

普通のぶり大根より色が淡い。

聞けば45度で調理したブリで、噛めばどこまでもしなやかである。

添えた大根は、源助大根をブリの骨出汁で炊いたという。

これまた出汁がしみて、酒が無性に恋しくなる。

高知の地酒「どくれ」と合わせれば、米の甘みと相まって顔が崩れる。

そして次は「サーロインと松茸しゃぶしゃぶ」をいただく。

サーロインのしゃぶしゃぶもいいが、牛脂が溶けた鍋つゆにまみれた松茸がいい。

すき焼きもそうだが、松茸と牛脂は相思いだと思う。

そして締めは、この店のスペシャル、白米と生卵である。

米は、93歳のおばあちゃんが作っているという大野見米で卵は土佐ジローである。

「93歳のおばあちゃんですか」と驚けば、「いやあ、僕の妻のおばあちゃんなんです」と、岡添さんは笑われた。

地方に来るとこういうことがあるから楽しい。

香り米である。

まず飯椀によそられたご飯の香りを嗅ぐと、焼いたような香りに包まれるが、口に含むと甘い香りとなって誘惑する。

炊きたての白いご飯に酔ったところで、卵かけご飯となった。

これは岡添さんが、何回も試作して行き着いた、最も美味しい方法だという。

まず割った卵の黄身だけを縦、横、斜め、斜めに切り、八等分にする。

ご飯に醤油をかける(混ぜない。この場合は、出汁醤油)。

卵をご飯にかける。

箸にて高速でかき混ぜる。

かき混ぜ続けること約2分、TKGは飲み物となる。

食べれば、ふわりと泡立った卵が心地よく唇に触り、まず黄身の甘みが広がる。

次に醤油のうまみが顔を出し、ご飯の甘みが追いかける。

うっとりとなるが、もう食べ出したら、一気呵成で食べてしまう。

だが、まだ幸せは終わらない

づけを載せる、サンマ塩焼きで食べる、いくらで食べると攻められ、塩ご飯といく。

塩は粒子細かく、ミネラル感高く、米の甘みを最大限に持ち上げる。

まだ終わりではない。

最後がおこげである。

おばあちゃんが丹精込めて作ったお米を存分に味わう。

この食べ方に込めた米への敬意と、岡添さんのお客さんへの感謝に、心が暖かさに満ちていった。

高知県高知市廿代町「将人」にて

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