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【高知グルメPro】どんぶりでかき込む旨さ!鰻丼にうなぎのタタキに天ぷらまでいただける「鰻屋 成八」食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記
この情報は2024年4月14日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなすフードジャーナリスト「美食おじさん」ことマッキー牧元さんが、高知の料理店・生産者さんをめぐる「高知満腹日記」。今回は高知県の佐川町で地元の食材にこだわったスペシャリテ作りに挑む「自然イタリア料理 da zero」にお邪魔してきました。
晴れ渡る青空の下、畑の真ん中に、ぽつんと店が佇んでいる。
二度目の「自然イタリア料理 da zero(ダ ゼロ)」訪問である。
店の前に立ち、大きく深呼吸をする。
それがこの店の食事をする前の、心構えかもしれない。
都会から来た体を引きずりながらも、里山の自然と少しでも繋がる気がするからである。
「いらっしゃいませ。ご無沙汰しております」
ご主人・的場篤志さんが、爽やかな笑顔で出迎えてくれた。
陽光が差し込むテーブルで食事が始まった。
白いスープが運ばれる。
「入河内大根のポタージュとスカモルツァチーズ」
大根の優しい甘みがたっぷりと舌を包み込む。
滋味が体の隅々まで染み込んでいく。
燻製チーズの塩気がアクセントになって、大根の甘みが引き立つ。
入河内大根は、高知県安芸市で作られる5〜6キロになる大きな大根で、皮は紫色をしており、それを燻製にして粉状にし、ポタージュの表面にふりかけているのだという。
続いての魚料理は「縞鯵のカルパッチョ 文旦とセロリのソース ディルオイル」である。
縞鯵は、定置網の船上神経〆を直接仕入れ、一週間熟成後、セロリと土佐文旦、自家菜園のディルと合わせて、サラダ仕立てにしたのだという。
縞鯵は、味が澄んでいる。
雑味のない綺麗な味である。
しかし、よく噛んでいくと、旨味が湧き出てくる。
高知の澄み渡った豊かな海が再現されている皿だろう。
野菜の中では、トマトが素晴らしい。
野菜ソースがさわやかに縞鯵に寄りそう。
雑味なくきれいな縞鯵と、新鮮な野菜の呼吸が同化する。
そんな素敵な瞬間が生まれていた。
続いては野菜料理で、「人参のロースト」である。
中里自然農園の人参をローストし、人参のソースに人参ラペ、アオリイカ、金柑コンポート、チーズサブレを合わせてある
何よりこれは、人参のローストが素晴らしい。
人の手がかかっているのにかかっていないような自然さがあり、人間をいたわる甘みがある。
すくすくとストレスなく育った甘みなのだろう。
イカの甘みも脇役にしてしまう、力強さもある。
こうして地方で優れた野菜に出会うと、日本の未来に勇気が湧いてくる。
つづいては、「カルナローリ米のリゾット」である。
鰆のアフミカータ(燻製)と春菊、蕪、ミモレットチーズ、ヘーゼルナッツのローストが添えられていた。
食べればまず、春菊の香りと硬く茹でた茎の食感が来て、鰆のまったりとした旨みが広がる。
その後に米の甘み,蕪の甘みが来て最後に燻製香が漂う。
ナッツのアクセント、チーズの旨みの底支えが憎い。
素晴らしく美味しいリゾットである。
海と里が、美しく手を結んだ力がみなぎっている。
聞けばリゾットに使ったイタリアの米、カロナローリ米は高知で作っているのだという。
袋を見せてくれた。
これもまた高知の底力だろう。
肉料理は、「仏産 鴨ロース肉のロースト アグロドルチェ 菊芋のクレマ」が運ばれた。
鉄分の旨味を誇る鴨に、優しい甘みを忍ばす菊芋のピュレがよりそう。
肉の猛々しさと根菜の素朴さが抱き合う。
心を温める料理である。
デザートのドルチェは、「マスカルポーネムース 苺 ピスタチオ ザバイオーネのセミフレッド」であった。
紅ほっぺ苺の甘酸味とピスタチオの香り、モスカートダスティの練れた甘さに、チーズのコクを広げるどこまでもなめらかムースが絡む。
夢見心地にさせるドルチェである。
小菓子は、チョコレートとフィナンシェに、イタリアの郷土菓子「ブルッティ・マ・ブオーニ(Brutti ma Buoni)」が、木の板に盛られている。
この菓子は直訳すると、ブルッティは「醜い」、マは「でも/しかし」、ブオーニは「おいしい」ということで、つまり「見かけは悪いけど、味はおいしいのよ!」という菓子なのであった。
まさにその通り、素朴だけどしみじみと美味しい。
食べ終えて思う。
食材も料理も数年前から、さらに良くなっている。
聞けば二、三年前から、いい野菜を作り、いい魚を良い状態で処理する生産者が、一気に増えたのだという。
だから野菜を主役にしたコースを作りたく、魚のカルパッチョの後に人参のローストをもってきた。
お客さんは、こういう人参の食べ方は初めてだと、喜ぶ。
土地に根差した料理をどうやって作るか?
常にその熱意があり、一皿一皿のクオリティを上げて、季節の食材に焦点を当てた料理は心を打つ。
まだまだやりたいことが多いそうで、伊勢海老や赤牛ヒレ肉などの、食材のグレードが上がっているほか、中里自然農園をはじめとした農家の方々が楽しみながら作っている野菜の味が濃いのだという。
「この季節になったらダゼロのこの料理を食べたいなと思わせる。毎シーズンのスペシャリテを作っていきたいです」
最後にご主人は、限りなき未来に向けて、笑顔を輝かせた。
高知県高岡郡佐川町丙3051「自然イタリア料理 da zero」にて