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【高知グルメPro】満腹でも食べられる「梅おろしぶっかけ」が美味い土佐市のうどん屋「黒潮うどん」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2023年11月12日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす美食おじさんことマッキー牧元さんが高知の食や生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は、土佐市高岡にある「黒潮うどん」にお邪魔してきました。

「うまいうどんが食べられる」。

ご主人の姿を見た瞬間に、そんな直感が走った。

ふくよかな体躯から、いかにもうどんが好きです、毎日食べていますというご主人である。

体全体から、「うどん、旨いよ!」というオーラが出ていた。

土佐市にある街道沿いのうどん屋である。

店名を「黒潮うどん」という。

思えば今まで、高知県で数多くのうどん屋に行ってきた。

高知のうどんは、いい意味で特徴がない。

さぬき風もあれば、関西風もある。

更にはどこにもない個性を忍ばせているうどん屋もある。

さあ「黒潮うどん」は、どんなうどんを食べさせてくれるのだろう。

まずは「きつねうどん」といってみた。

丼中央に大きなお揚げがどーんと乗った、まっとうなきつねうどんである。

 一瞬、大阪のうどんに似ている柔らかさを感じたが、その中にコシを感じる。

28回から30回ほど噛んで、やっと無くなっていくのは、そのたくましいコシのせいだろう。

ちなみに大阪のうどんは20回ほどである。

昆布だしが効いた甘めのつゆに、甘辛出汁がたっぷりと染み込んだ油揚げがいい。

次にいただいた、冷たい「梅おろしぶっかけ」は、海苔、紫蘇、梅たたき、大根おろし、梅くらげといった構成である。

梅くらげと海苔が、ぶっかけ汁とうどんにまぶされ、上に大根おろし、梅たたき、紫蘇がもられている。

こいつを突き崩して混ぜ食べれば、その酸味と香りに引き込まれて、つるると食べ終えてしまう。

これなら、たとえお腹がいっぱいでも食べられてしまうだろう。

食べ進むうちに、きしめん状の幅広うどんが一本現れた。

これも手打ちでしか味わえない楽しみである。

こいつに梅たたきをつけて、つるりといく。

この梅たたきは、カリカリ梅をたたいてまぜているのだという。

幅広ゆえに更に噛む回数が増え、口の中で小麦の香りと梅の香りが舞う。

ああ、楽しい。

次に温かい「肉おろし醤油うどん」といってみた。

甘辛く炊いた肉がどっさりと乗った、迫力のお姿である。

あとは海苔、ねぎ、生姜、大根おろし、削り節といった布陣で、なにより肉の味がいい。

これはまぜるというより、肉料理を食べてご飯をかきこむ要領で、濃い味の肉だけを食べてから、うどんをすするといった食べ方がおいしいとみた。

うん、これはお腹をぐっと減らして食べたいな。

最後におにぎりを頼んでみたが、これが良かった。

高知の仁井田米だという米が、甘く、香り高く、口の中でホロホロと崩れていく。

ここに来たらうどんだけでなく、ぜひ食べてもらいたい。

食べ終わってご主人からお話を聞いた。

店は27年になるという。

元々うどんが好きで、うどん屋を始めたいと、金比羅の方で修行なさったというから、正当派の讃岐うどん系列である。

そして高知に帰りうどん屋を始められた。

だが周りから、「なんでよりによってうどん屋なの?」と、散々言われたという。

「香川県でラーメン屋を始めるようなものだよ」とも言われたらしい。

今でこそ高知でうどん屋は増えたが、当時うどん屋はアウェーだったのだろう。

しかし徐々に評判を高め、高知県人にうどんの魅力を知ってもらい、27年間続いている。

いまでは、毎朝8時くらいから、250〜300玉を打つという。

うどんの出汁も無添加ゆえに、スッキリとして気持ちがいい。

「塩と水と粉だけですから、うどんのもちは良くない。だから開店早々に来るのがいいですよ」と、教えてくれた。

最後に聞いてみた。

「一番好きでよく食べるうどんはなんですか?」と。

即答だった。

「醤油うどんです。今日も食べました。食べると、修行していた頃のことを思い出すんです」。

そう言って美味しそうな体を揺らし、笑われた。

高知県土佐市高岡町甲237-1「黒潮うどん」にて