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【高知グルメPro】地元愛されイタリアンから人気の和食屋に夜の〆の屋台餃子までそろう「廿代町」のおススメグルメ6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2023年10月15日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす美食おじさんことマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は、高知市の大人気観光スポット「日曜市」でタコスがいただける「MASACASA TACOS マサカサタコス」を紹介します。
日曜日の朝を高知で迎えたら、朝市で朝食をとろう。
僕はそう決めている。
ホテルのビッフェや喫茶店でモーニングもいいが、朝市で食べる方が、豊かな気分になれるからである。
朝市には、それぞれに思想や哲学がある。
全国の朝市に行ったが、高知の日曜市が多彩で、ダントツに面白い。
「さあ今朝は何を食べようかな」。
おばちゃんたちが作る田舎寿司かいなり寿司かな、あるいは芋天かな、と歩いていると、緑、赤、白というトリコロールで彩られている屋台があった。
店名は「MASACASA TACOS (マサカサタコス)」という。
こりゃスペイン語でマサさんの家か。
鉄板の前に出された品書きを見れば、タコスの店ではないか。
メニューが面白い。
「紅はるかとパプリカ」という高知野菜を使ったタコス、「四万十鶏のトマトスパイス煮」、そのふたつのミックス、そして一番気になるのが「イリカス」である。
何かと言えば「豚のホルモンミックス」である。
日本でタコスといえば、鶏肉、豚肉、牛肉と野菜類が一般的であるが、本場でタコスを食べた経験からいうと、かの地で内蔵類を挟んだタコスが多くあるのであった。
これは本格的なり、侮れないぞと、早速「イリカス」を注文した。
「ありがとうございます」。
人懐こそうな店主はそう言って、トルティージャを鉄板の上に置き、さらにチーズと内蔵類を乗せて焼き始めた。
どうやら茹でた大腸や小腸、胃袋をぶつ切りにしているようである。
「お待たせしましたイリカスです」。
待つこと数分、紙皿の上に乗せられたイリカスには、オレンジ色のサルサ(ソース)とたまねぎがかけられていた。
早速自分でたたんで頬張れば、何より皮が香ばしく目を見開いた。
トウモロコシの甘い香りが口いっぱいに広がる。
その香りに続いて、内蔵の様々な食感と脂の香りが追いかける。
下処理が確かなのだろう。
臭みはなく、クニュッ、シコッと内臓が歯の間で弾み、実に楽しい。
自家製の皮は、「トウモロコシの高い香りが美味しいですね」といえば、地元のトウモロコシ「地きび」を使っているのだという。
平日お店を出しているキッチンカーでは、自分で育てたトウモロコシを使ってメキシコの伝統方法で作ったトルティーヤを使い、ここ日曜市では高知の地きび粉とメキシコの粉をブレンドして皮を作っているのだという。
店主の都筑正寛さんは、チカーノ、メキシコ文化が根付くロサンジェルスで、音楽をやりながら20年暮らしていた。
その中でタコスを愛し、毎日のように食べていたという。
タコスを自分で作り、しまいには店まで出された。
それがたまたま帰国して高知に来た時に在来種の地キビと出会って、これでタコスを作りたい、そう思い、ロスから高知へ移住したのだという。
「トウモロコシに惚れてロスから高知へ移住なんてすごいですね」。
そういうと都筑さんは笑いながら答えられた。
「トウモロコシにも惚れましたが、高知県人の人柄が好きになって移住したんです」。
今まで他県から高知に移住した人とたくさんあってきたが、同じように答えられる人が多い。
「MASACASAとは、お名前である正寛の家という意味ですか」。
「はいそれもありますが、MASAは、トルティーヤになる前の生地という意味があります。そしてCASAは家という意味もありますが、日本語の傘とも重ね併せています。第3の居場所 雨よけの場所となるようにとの願いも兼ねて」。
そんな思いで作ったタコスは、1日150食くらい出るのだという。
いつかは自分で育てた地きび100%で作りたいと考えている都筑さんを動かしているのは、高齢化で生産者が減少している地きびという高知の伝統食を、なんとか存続させていきたいという思いである。
最後に「もうすぐ自分達で育てた、ハバネロを使えます」と、都筑さんは嬉しそうに話された。
高知県高知市追手筋日曜市「MASACASA TACOS マサカサタコス」にて