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【高知グルメ】美しいスイーツとドリンクに魅了される古民家カフェ「Equivalent(イクイバレント)」ほっとこうちおすすめ情報
この情報は2023年9月17日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、テレビ、ラジオ出演や料理評論、紀行、雑誌寄稿を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は高知市の中心部にあるフレンチ「AUXBONSBRUITS!(オーボンブリュイ!)」にお邪魔してきました。
抜けがいい。
高知市の中心部、オーテピア高知図書館の隣の2階席に座って窓から見る景色が、広々として開放感がある。
ただ真に抜けがいいのは、料理である。
季節の食材を巧みに使い、組み合わせる食材数を最低限にし、中心となる食材を巧みに活かす。
だから食べると、季節の香りがふっと体の中を吹いていく。
食べた後に余韻を残しながら、キレ良く、食べるごとにお腹が空いていく。
それが抜けのいい料理である。
訪れて座り、メニューを見て困った。
食べてみたい料理が多すぎるからである。
まずビストロとしての肉料理が誘う。
シャルキュトリー盛り合わせ(ハムとソーセージ類、これは自家製か?)、レバーパテ、豚肉のリエットにパテドカンパーニュ。
ニース風胃袋の煮込みにフランス人の大好きな、ステークフリット(ステーキとフライドポテト)。
野菜もビストロ定番の料理が並ぶ。
自家製ハムとチーズのサラダにリヨン風サラダと、ニース風サラダ、シンプルなサラダもある。
ここは高知。どんな魚を使っているのか気になる海の幸グラタンや、フランス産小麦のガーリックライスや本日のオムレツというのも気になる。
本日の料理が手書きされた黒板を見れば、トゥールーズ風ソーセージや豚3種のテリーヌもあるではないか。
散々悩んだ挙句に頼んだのは、以下である。
前菜には、四皿を選んだ。
「水ダコと小夏の取り合わせ」は、味付けと食材の取り合わせにセンスがある。
なにより小夏の軽い酸味が水蛸の淡い甘みを引き立てているのがいい。
一皿目として、食欲をグッと引き寄せてくれる。
その他、プチトマト、キュウリのピクルス、ヴィネグレットであえたコリンキーという付け合わせも、洒落ている。
次に「イチジクのカルパッチョ」が運ばれた。
イチジクにバルサミコと蜂蜜がかけられ、その上に砕いたクルミとパルミジャーノがふられている。
バルサミコ酢の酸味、チーズの塩気とコク、クルミの香りと食感、蜂蜜の甘みの中で、イチジクがよりイチジクらしく輝く。
これも取り合わせの妙だけでなく、それぞれの量が巧みに考えられているので、美しいバランスとなっているのだろう。
次は、「アジの燻製炙り仕立て」である。
なにより魚の質が高い。
直前に軽く燻製しているのだろう。
アジの鮮度と質が高いからこそ、燻製香に負けずに脂の味わいが生き、炙ることで味に深みが出ている。
紫玉ねぎ、ピーマン極細切り、レンズ豆、マヨネーズ風ヴィネグレット、ヨーグルトというアジを盛り立てる脇役陣の配置も、実に心憎い。
そして、おそらくご主人が大切にしているシャルキュトリー類やパテの中から、「腕、足、タン、豚三種の温製テリーヌ」が運ばれた。
食べれば、コラーゲンの甘み、三種の肉が生む、それぞれの食感。グリビッシュソース風の酸味、パートフィロの香りとカリッとした食感など、様々な要素が口の中で弾んで、ああ楽しい。
クニユ。コリ。カリッ。
クニユ。コリ。カリッ。
ああ、楽しい。
これまた付け合わせの、空芯菜がいい。
そして運ばれました「トリッパアラニソワーズ」。
ニース風にトマトと煮込んだ胃袋、ハチノスである。
普通は長細く切るが、こちらでは、長い切り方と四角にちかい切り方の2種類が入っている
これが歯応えの絶妙な違いを生み出していて面白い。
臭みは微塵もなく、優しい味のトマトソースに抱かれて胃袋は気分が良さそうである。
じゃがいもと白インゲン豆、アスパラ二種の付け合わせも素晴らしい。
そしてメイン、肉料理には、「土佐ボークのプティサレ」選んだ。
油煮、コンフィにした豚肉である。
しっとりと仕上がった肉を噛みしめれば、脂がとろんと溶けていき、ワインが猛烈に恋しくなる。
フランス料理はこうでなくちゃ。
何かフラン人でもないのに、懐かしさを感じる、温かい気分を呼ぶ料理である。
ちなみに本日のポタージュを聞いて反省した。
「新玉ねぎのポタージュ」だという、なぜ頼まなかったのか。
さらに「本日のオムレツはなんですか?」と聞いてみた。
すると「オムレツは他に注文された料理を見て、中身を考えます」と、答えられた。
なんということだろう。
これも、また次回は絶対頼まなくてはいけない。
厨房で孤軍奮闘するオーナーシェフは、東京のクレモンティーヌやオーバカナルと言った名店で働き、高知に戻って店を開いて7年になるという。
お客さんには常連の女性一人客も多く、愛されていることがわかる。
一人や二人なら、カウンターでシェフと喋りながら過ごすのもいいだろう。
最後にシェフは言われた。
「東京で働いていたと言っても、自慢するようなことではないです」。
そう言って、恥ずかしそうに笑う姿に、誠実があった。
高知県高知市帯屋町2丁目「AUXBONSBRUITS!(オーボンブリュイ!)」にて