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こんなところに?非日常というスパイスが効いた高知のインド料理「多国籍食堂 錆と煤(さびとすす)」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2023年4月2日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹にとんかつ、フレンチにエスニック、そしてスイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する高知家の〇〇の人気連載記事「高知満腹日記」。今回は南国市で人気の多国籍食堂「錆と煤(さびとすす)」にお邪魔してきました。

車道から一本入った、細い路地のどん詰まりに、小さな家が建っていた。

赤銅色の錆が一面に広がったトタン張りの壁が、家の長い歴史を物語っている。

知らなければ、その家が飲食店だとは、誰も気づかないだろう。

いやそれよりも、家があることさえ、誰も気がつかないだろう。

多国籍食堂「錆と煤」は、そんなさりげなさで、ぽつねんと佇んでいた。

店に入ると、香ばしいスパイスの香りに包まれる。

「いらっしゃいませ」。

民族衣装に身を包んだ、小柄な女性が挨拶をする。

店主の山田和子さんである。

高知県出身の彼女が店を始めたのは、7年前だという。

着物を作るところに弟子入りし、その後アクセサリーや絵を売ったりして、16年間京都で暮らして、高知に戻ってこられた

京都での終わりの3年間は南インド料理店で働き、インド料理の魅力を知り、高知で店を始めたのだという。

店はおじい様が持っていた家を改装した。

最初はカウンターだけで、完全予約制で始めたのだという。

だがその味が評判を呼び、今では県外からも人が来る店になった

板敷きの座敷に上がり、メニューを選ぶ。

ノンベジとベジプレートがあるが、今日は全部乗せたスペシャルプレートと、本日の特製ビリヤニプレート、マサラドーサ(豆粉と米粉で作ったインドのクレープ)をお願いした。

やがてスペシャルプレートが運ばれる。

中央のご飯と生野菜の上には、ひよこ豆のせんべい「パパドゥ」。

銀のプレートの向正面にある円柱の小さなボウルには、四種類のカレーと、左端には自家製ヨーグルトと野菜のサラダ「ライタ」、その隣は南インドの酸っぱく辛いスープ「ラッサム」が置かれている。

カレーは、一番左がダルカレー(豆のカレー)、野菜のコランブ(南インドのスパイシーで酸味の効いたカレー)、魚のカレー、鶏とカシューナッツのカレーである。

さらに手前にはドライタイプのカレー。

青菜のマスタードオイル炒め、ナスのモージュ(スリランカ風揚げ茄子の和え物)。

ドーパミンが出て体に良いとされる、むくな豆と干し柿のココナッツ炊き、ジャガイモのサブジ(スパイス炒め煮)が盛られている。

さらには、ルッコラペーストやナッツ類、カチュバルサラダ(インド風スパイシー生サラダ)と盛りだくさんである。

まずはパパドゥを細かくしてライスにかける。

その上からカレーをひとすくいずつかけていき、ドライタイプも試し、それらを少しずつ混ぜていく。

最後は全部混ぜて渾然一体、野菜や豆の甘み、魚や肉の滋味、ココナッツや様々なスパイスの香り、ナッツの香り、生野菜のみずみずしい歯ごたえ、ラッサムやヨーグルトの酸味などが混ざり合い、共鳴しあい、陶然となる。

やはりこれは良く混ぜ混ぜして、手で食べるのが一番美味しかろう。

一心不乱、次第に魅力の沼にはまっていき、抜け出せなくなるカレーである。

次に、ビリヤニ(インドの炊き込みご飯)セットもいってみよう。

普通ビリヤニは、ターメリックなどで黄色く色づいているがこれは珍しく白い。

長粒種のインド米から芳ばしい香りが流れる。

スプーンを突っ込んで持ち上げてみれば、なんとゆで卵が現れた。

半熟である。

これもご飯と混ぜ混ぜして食べる。

インド版TKGか。

これらをインド惣菜とともに食べる。

むくな豆、かぼちやのペースト、海老の豆衣あげ、春菊の炒め物とサツマイモのギー炒め、人参のアチャール(漬物)などである。

卵と米の甘みにスパイスが忍び寄って、これまた癖になる。

合間にマサラドサをつまみ、食べていると、もうここは高知ではない。

南インドである。

干し柿やブルーチーズなど、要所に、自らアイデアを生かした味わいも他の店には無いもので、いい。

以前紹介したシャンティといい、風変わりな立地にある高知のインド料理は、非日常感というスパイスが加わって、コーフン度が違う。

また、ここに来よう。

汚れた指を舐めながら、そう誓うのだった。

 

高知県南国市立田632-19「多国籍食堂 錆と煤(サビトスス)」にて