高知家の◯◯高知家の◯◯ 高知県のあれこれまとめサイト
高知県のあれこれまとめサイト
  • facebook
  • x
  • instagram
  • youtube
 

四万十の山間で超稀少な四万十牛を腹いっぱい食らう「横山精肉」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2023年2月26日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹にとんかつ、フレンチにエスニック、そしてスイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する高知家の〇〇の人気連載記事「高知満腹日記」。今回は、四万十市の山間、西土佐の「横山精肉」で四万十牛の焼肉を堪能してきました。

四万十川を見ながら、四万十牛を食べる。

そんな贅沢ができるのが、西土佐江川崎にある横山精肉である。

街道に面した横山精肉は、四万十川流域で育てられた未経産のメスの黒毛和牛である四万十牛を中心に販売する精肉店。

ここでは、買った肉を店舗に隣接したテラスでBBQでいただけるのである。

コンロ貸出料金五百円を払うだけで焼けちゃうのである

これは肉好きとしては、たまらない。

しかもテラスは四万十川に面しているので、雄大な自然を眺めながら、ゆったりと焼肉を食べられるのが嬉しい。

さあ、それでは肉を買おう。

ずらりと並んだ肉たちを見ていると、コーフンしてくる。

「落ち着いて」。

つい全種類買いそうになるのを、心の声が制す。

なにしろ横山精肉は、契約牧場の横山畜産から仕入れた年間生産数100頭程度しか出荷されない四万十牛のほとんどを扱っているという精肉店である。

肉は各部位があり、ヒレ、肩ロース、リブロースから始まり、お尻よりのランプやイチボ、ハラミ、肩肉の一部の希少部位のトンビ、肩肉の下で霜降りのミスジほか、サンカク、シンタマなどが用意されている。

精肉店なので、焼肉屋より値段も安い。

しかも、すべてが塊肉。

ホルモンも鮮度がいい。

焼肉マニアなら、落涙ものだろう。

これで落ち着けっていう方が無理である。

どうやらここには、そんな肉好きの方が多く来られるようで、最近はランプ(モモ肉の中でも柔らかいサーロインの隣に位置する)やイチボ (ランプよりもお尻の先にあり、モモ肉の中で最も脂がのる)、フランク(別名ササミ、外バラ肉の一部)やシンシン(内ももの柔らかい芯部)が人気で、ロースが売れないのだという。

さあ我々も選ぼうぞ。

購入したのは、カルビにハラミ、そしてカイノミ(ヒレの下部位)とイチボである。

我ながら、なかなか渋い選択であった。

まずは大好物であるカイノミからいってみよう。

塊肉に塩を振り、じっくりと焼いていき、仕上がったらハサミで切り分ける。

うむ。バラ肉とヒラ肉の良さを持ちながら、ほんのり内蔵の香りもするというカイノミの特徴が見事に現れて、旨いったらありゃしない。

これも塊で焼くからだろう。

肉を頬張りながら林と川を眺めていたら我慢できなくなって、朝10時だというのに缶ビールを買ってしまった。

さあ、次はハラミとイチボである。

特製のタレも購入し万全の体制にして、焼きあがったハラミとカルビを切って食べる。

食べては外の空気を吸う。

なにか肉を食べながら体が浄化していく感覚があって、食べるにしたがってお腹が空いてくる。

やはりここは内蔵でしょうと、上ホルモンを買おうとしたら、店主の横山さんが「並みの方がおすすめです」というではないか。

聞けば、上ホルモンは直腸や大腸、ホルモンは小腸なのだという。

いわゆるコプチャン、マルチョウと呼ばれるやつで、脂がたっぷり付いているので、こちらの方が美味しいだろう。

脂を適度に落としながら焼いていく。

最後に、これもこちらの辛味噌をちょいとつけて焼き上げ、タレにつける。

ああ、これはビールもいいが、大至急ご飯である。

プリッとしたホルモンを噛み締めれば、甘い脂がジュジュジュと舌に流れて、ご飯で迎えたくなる。

ホルモンおかわりと行きたかったが、ぐっとこらえて目先を変え、四万十豚ロースといってみた。

豚ステーキである。

肉汁をまとわすようにしながら、じっくりと焼いていく。

最後は背脂の部分を焦がすように焼いて余分な脂を落とし、切って食べた。

おお、これもいい。

キメが細かいが、ただ柔らかいのではない、噛む喜びがある豚である。

グッと少し力をいれて噛むと、歯が肉に包まれ、脂が甘い香りを放ちながら溶けていく。

最後は、主役のイチボである。

イチボのステーキである。

これは肉を膨らますように焼き、切ってから塩だけで食べた。

噛んだ瞬間に肉汁が溢れ、鼻息が荒くなる。

もっと私を噛んでといっているかのようなイチボを、食らう。

猛々しい滋味が口に溢れ、気分が上気していく。

だが、しつこいようだが、目の前は大自然。

コーフンが大気によってなだめられ、再び肉に向かう気が高まっていく。

そう。焼肉は外、自然の中で食べてこそ真価を発揮するのだ。

 

高知県四万十市西土佐江川崎「横山精肉」にて