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「酒を白飯を誘う、鮮魚よりも魚を主張する土佐の干物」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2019年3月17日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなすタベアルキストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

燦々と降り注ぐ太陽の下で、魚たちが、気持ちよさそうに昼寝している。

それは捕獲され、処理され、さらに陽の光を浴びて、水分を抜きとられようとしているのに、まだ生きているような気配がある。

焼いて食べると、その気配はますます確信に変わった。

口の中で魚が爆ぜる。

干物だというのに、生の魚より凝縮した味が、太陽の香りを伴って「どうだあ」と迫って来る。

ああ、酒が飲みたい。

ご飯を掻き込みたい。

干物を齧り、噛み締めながら、しみじみと思った。

ここは高知市の桂浜に近い港町、御畳瀬である。

「干魚のやまさき」を営む山崎裕正さんは、会社を辞めて干物屋を始めたのだという。

この地に生まれ、漁師だった父の元で育った。

「小さい頃から干物が好きだったんです」という。

旅行会社に勤めているころ、高齢化によって地元の干物屋が次々と辞めていくのを見ていた。

知り合いの干物屋が引退した時「やめるき、やらんか」と言われ、会社を辞められた。

漁師を引き継いだ弟と漁に出、市場で妹と処理をし、一年後に干物屋を始めた。

主となるのは、弟が目の前の海で獲ってきた、沖ウルメとアオメと呼ばれる、メヒカリより大きい、トモメヒカリである。

今の時期がピークで、沖ウルメは日に何トンと獲れる。

それを処理して、天日干しにする。

「お天気様々、なにがありがたいってお日様です」と、山崎さんはいう。

そこには機械で乾燥させていく、現代の干物とは違う、滋味がある。

太陽の恵み多き高知だからこそ、生まれる味なのだろう。

沖ウルメは、水深200~~250mに生息し、真ウルメより脂が多い。

かじると、脂が滴る。

太陽の香りがする。

噛めば噛むほど、味が出て、生きているゼと攻めてくる

尻尾あたりも味が濃く、噛みしめるうまさに顔が崩れる。

一方アオメは、メヒカリより脂があっさりとして上品である。

メヒカリよりふんわりと柔らかく、脂が緩い。

ムースを食べているかのような、感触がある。

今はこの2種類とサメのみりん干しが中心だが、イカやアジ、たまにノドグロもやるという。

脂が乗ったノドグロもいいだろう。

でもやはりこの二種の小魚にとどめを刺す。

毎朝の食卓に、この魚が焼かれて登場する。

そして白いご飯を掻き込む。

これ以上の幸せが、どこにあろうか。

 

高知市御畳瀬「干物のやまさき」にて