グルメ
【高知グルメPro】地元愛されイタリアンから人気の和食屋に夜の〆の屋台餃子までそろう「廿代町」のおススメグルメ6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2022年9月11日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす美食おじさんことマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は、お母さん一人で切り盛りする旨いものがそろった和食「なとな」にお邪魔してきました。
高知に通いだして4年になる。
もう百軒以上の飲食店を訪ねただろう。
高知の人より、高知の飲食店には詳しい。
そんな自負があった。
しかし、なんでこんないい店を知らなかったのか。
しかも高知市の繁華街にあるというのに。
店の名は「なとな」という。
元気なお母さんが一人で切り盛りをされている、居酒屋である。
訪れると、「おまかせでいい?」と、お母さんが聞いてきた。
「はい、お願いします」と答える。
何しろ働いているのはお母さん一人だから、お客一人ひとりの注文に応えるのは無理だろう。
飲み物を注文して待っていると、
「はい。うちの山で採れたワラビとゼンマイにイタドリね」と、煮物の盛り合わせを出してくれた。
山菜数種類とコンニャクや肉じゃが、昆布巻などの煮物である。
食べて、思わず微笑んだ。
どれも味付けがピタリと決まっている。
濃すぎず淡すぎず、心がほっこりとなる味付けなのである。
こんにゃくも、味付けがいい。
こっくりとした味わいで、酒がちょうど恋しくなる濃さなのがいい。
昆布巻きは、豚肉と切り干し大根を巻いたものであった。
はは、これはうまいわ。
ちくしょう。お酒のお燗、もう一本お願いします。
次に来たのは、うるめいわしの刺身である。
ぶつ切りで生姜とミョウガ、ネギと合わせてある。
これまた素晴らしい。
脂がグッと乗っていて、うまみに甘みが広がる。
お次は、カツオの刺身と来た。
申し訳ないが、こちとらカツオにはうるさい。
今まで何軒もの店でカツオを食べてきたのだから、質にはうるさいぞ。
だが、これまたいいカツオだった。
この豪快な、分厚い切り方がいい。
炙ったばかりの、少し暖かいのもいい。
腹身と背の両方が盛り合わせてあるのもいい。
そして身は、実にしなやかで、もちっとした、歯を押し返す、ほのかな弾力がある。
キリッと辛い、高知ならではのニンニクと抱き合わせて食べれば酒が進んじゃう。
続いて、「コイカの炒め」が運ばれた。
キャベツと小ネギ、エリンギを炒め合わせたもので、イカの味を主体にして、塩や醤油はひかえめにしたシンプルな味付けである。
なにより、イカの内臓から出る味が全体に回っていて、それが深い味となり、これまた酒を呼ぶのだな。
厨房前に下がっている、手書きされた料理名の短冊を見ているうちに、どうしても追加したくなった。
「すいません。ふんわり卵焼きと、母ちゃんのおみそ汁、塩おにぎり、かつおチャーハンをください」。
そうなのだ、このラインナップを見たら、どんなに腹一杯でも頼むしかないだろう。
「はい卵焼き、うちの卵焼きは薄口醤油少しだけ。薄口だけの方が卵の味が生きると思って」と、おっしゃる。
うん、卵の甘みが生き生きと迫って、気持ちが和らぐよ。
塩おにぎりはふんわりと握られて、舌の上で米の甘みが舞うんだな。
みそ汁も、しみじみとうまい。
そして、かつおチャーハンである。
カツオのフレークと生姜を炒めたもので、カツオのうまみが米一粒一粒にからんで、レンゲを持つ手を加速させる。
紫蘇のアクセントが、憎いねえ。
いやあ、なんでこんな店を知らなんだ。
聞けばお母さんは51歳で、もうこの店は21年やられているという。
「また高知に来たら寄ります」。
そう約束して店を出た。
店の外には、こんな文句が書かれた案内が、掲げられていた。
「いらっしゃいませ。田舎のもんで、ほっこり、ゆっくり、どうぞ、どうぞ。お母より」。
高知県高知市追手筋1丁目「なとな」にて