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食は地方が断然面白い!高知のローカルガストロノミー「IHARA」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

この情報は2022年7月24日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす「美食おじさん」ことマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は高知のローカルガストロノミー「IHARA」を訪ねてきました。

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井原尚徳シェフとの出会いは今から7年前、2015年の7月だった。

彼は、東京のイタリアンの名店「カノビアーノ」で修行後、高知県土佐市でギリシャのサントリーニ島の景色を模した「ヴィラサントリーニ」のシェフになった。

いただいた伊勢エビ料理は、紅茶の香りとゴーヤスープの苦みを添えて、その甘味を引き立ていた。

そして何より、目前に広がる湾の景色を再現したという盛り付けが素晴らしかった。

またデザートでいただいたココナッツのブランマンジェは、濃厚なその味わいとバランスをとるために、メロンのスープが注がれるが、フレッシュだとなじまないため、一ヶ月寝かせたメロンを使っていた。

このように、新たな若き才能に目をみはる。

だが、一方でまだアイデアが先行して、まだ着地できていない料理もあり、こりゃあ定期的にこなくてはいけないと、思ったのである。

最初の見込み通り、彼はどんどん進歩していった。

国内各地にも食べ歩いて刺激を受け、高知県内の優れた生産者も開拓して、ここにこなくては食べることの叶わぬ料理を、次々と生み出していくことになる。

いま「ローカルガストロノミー」という言葉が、日本に広まっている。

今まで美食といえば、大都市中心だった。

しかし今は若いシェフたちが地元で、大都市を意識しない、地元の食材を使った創造的な料理を生み出しているのである。

単なる郷土料理でない、郷土料理の再構築や食材の新しい使い方など、しなやかな感性で新しい料理を生み出している。

「地方が断然面白い!」。

グルメやフーディーたちはそういって、旅に出る。

そのレストランで食べるためだけに、旅に出るのである。

全国のそうした優れたレストランで食べ歩いた僕の知見では、高知でそのことが実現できるのは、井原尚徳シェフしかいない。

そう思って何回かいただいた。

いただく度に、驚かされる。

2018年にいただいた黒むつは、ただ焼くと少し野暮ったいこの魚に、色気を漂わせていた。

一方赤牛は、猛々しさの中に繊細があった。

2020年に、新築したレストランでは、また赤牛をいただいた。

よく活動した健やかな牛は滋味が豊かで、噛むほどに味わいが出てくるたくましさがある。

そんな肉を、精妙な加熱が生かし、ほんのりと漂う薪火の香りが、肉の猛々しさを膨らます。

また赤牛の出汁に、すりおろした黒皮大根を混ぜたソースも、うますぎずに、牛肉の味をそっと持ち上げていた。

そんな才豊かな井原シェフが今年独立し、3月15日に店を開いた。

名を「IHARA」という。

オープンキッチンの厨房には、髪を染めた井原シェフがいる。

今回は、コースをいただく時間がなく、アミューズと魚料理をいただいたが、高知の「ローカルガストロノミー」として推薦したい料理が輝いていた。

アミューズは、「ビーツマリネ長太郎貝 マヨネーズマリネサンド」。

プチプチと弾ける「アメゴの卵のモナカ、コリンキー」。

ほんのりとした苦みが魅力な「アメゴの稚魚  カダイフ衣のフリット」。

レバーの甘い香りが魅了する、「パートブリック、はちきん地鶏チキンレバー」。

「ほうれん草と大豊レーヴエン農家民宿 渡辺牧場のチーズのチュイル」といったラインナップで、ほらもう才能が見え隠れしている。

魚料理は、「白甘鯛 昆布締め」ときた。

昆布締めされて、上品な甘みが凝縮された白甘鯛に、ブイヤベースソースと魚のコンソメソースがかけられ、うま味が膨らむ。

添えた蒸し焼きレッドオニオンや、焦がし玉ねぎ山椒のパウダーと言ったアクセントも心憎い。

こりゃ、またすぐに食べにこなきゃ。

そして、日本中の名だたる料理評論家やフーディーたちに伝えなきゃ。そう思った。

高知県高知市はりまや町2丁目「IHARA」にて