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【高知グルメ】焼肉屋のこだわり丼!「焼肉てんぐ」と四国霊場第30番札所「善楽寺」ほっとこうちオススメ情報
この情報は2022年7月10日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹にとんかつ、フレンチにエスニック、そしてスイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが、高知の料理店・生産者さんをめぐって紹介する高知家の〇〇の人気連載記事「高知満腹日記」。今回は高知市の中心エリア、はりまや町に店を構える「アンナータ」にお邪魔してきました。
その店は、ビルの二階でひっそりと佇んでいた。
看板も、店名も出されていない。
二階に登り、自動ドアが開けば「いらっしゃいませ」と、温かい声がかかり、シェフが現れた。
すでに高知では100軒近くレストランに行ったが、はりまや橋の近くにこんな店があるとは知らなかった。
店名は「アンナータ」という。
店内は清潔感に富んだカウンターと個室に別れ、シェフ一人で切り盛られているようである。
料理が始まった。
カウンターから望む厨房でシェフが作られ、自ら運ぶ。
一皿目は「秋田のじゅんさいと高知のトマト」による料理だった。
トマトジュレとじゅんさい、トマト、ブッシュバジル、柚子などが合わされて涼やかなガラスの器に入れられている。
トマトの柔らかな酸味と甘みがじゅんさいを包み、バジルや柚子が後から香る。
爽やかな夏の到来である。
猛暑の日中を過ごした体が落ち着き、途端に食欲がせり上がってきた。
続いて運ばれたのは、「稚鮎フリットの内蔵ソースとハーブ」である。
二匹を連なるように揚げ、鮎肝のソースをかけ、ハーブや木の芽をかけてある。
ガリッ。
稚鮎を頭からかじる。
稚鮎ならではの拙い甘みが広がり、肝ソースの苦い旨味が追いかける。
肝を取り出してソースにしてあるのがいい。
肝付きのままフリットにしても美味しいが、かじった時に肝の味わいが勝って、稚鮎の繊細さが味わえない。
だがこうしてソースとして添えるなら、肝の苦味も身のほのかな甘みも味わうことができる。
さらにハーブや木の芽と合わせれば、その清澄な香りが、深山の川で泳ぐ鮎の光景を思い浮かばせる。
次に運ばれたのは、花を浮かべた白いスープである。
山羊のチーズのムースとスープ、オリーブオイル、ヤマモモ、ブラックベリー、エルダーフラワーを合わせた料理だという。
ムースとスープの酸味がいい。
ふくよかなコクを持つチーズ自体の酸味が、穏やかに舌や喉を洗うように流れていく。
そこにフルーツの甘酸味が調和して、気分が豊かになる。
続いて運ばれたのは、魚料理だった。
「高知産金目鯛の炭火焼き 茶豆と豆乳ソースマジョラム風味」である。
なにより金目鯛がうまい。
加熱が精妙で、身に力がある。
一口食べた瞬間に「うまいなあ」と、独り言を呟いてしまった。
ソースの優しい甘みとマジョラムの軽い爽やかさも、魚の味を持ち上げている。
高知は室戸岬などで良質な金目鯛が獲れ、今までいろんな料理をいただいたが、この魚のたくましさとデリケートな面を表したこの料理は、図抜けている。
魚料理の余韻に浸っていると、サラダが運ばれた。
温かい野菜料理だという。
ハーブなどを様々入れて深みと香りをつけた温かいホエーを、野菜にかける。
スープに酸味があって、それが野菜の甘みを引き立てる。
リュウキュウや人参、じゃがいも、玉ねぎ、葉野菜など、20種ほどの野菜が、ホエーに気持ちよく浸かり、生き生きと自分の味を主張する。
同時に運ばれる全粒粉のパンが、これまた酸味があっておいしく、ホエーに浸して食べるとたまらないのだな。
続いてはパスタである。
「愛媛のケンサキイカのワタとスミを使ったパスタ」が運ばれた。
いやあ濃密です。
サラダの優しさとは一転して、イカのすべてが凝縮したソースに酔う。
これもまたパンで拭って食べるとたまらない。
最後の皿は、「京都七谷鴨の炭火焼き 茗荷のマリネ」である。
的確な加熱で調理された鴨の鉄分が、口の中で爆発する。
金目鯛といい鴨といい、ただ炭火で焼くだけでなく、そのものの滋味を高める焼き方が素晴らしい。
修行先を聞いて、合点した。
神戸の三つ星スペイン料理「カセント」だという。
「あの店で修行させてもらったことで、焼きの概念が変わりました」。
そうシェフは静かに言われた。
シェフはこれからも、豊かな高知の食材を使って、様々な料理を生み出すに違いない。
また一つ、高知を生かす料理人に出会えたことが、なんとも嬉しかった。
高知県高知市南はりまや町1「アンナータ」にて