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洋食にカレーに本格イタリアン!全メニュー制覇したい高知の老舗レストラン「アミーゴ」 美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2022年4月10日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹にとんかつ、フレンチにエスニック、そしてスイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する高知家の〇〇の人気連載記事「高知満腹日記」。今回は、ピッツァじゃなくピザな老舗レストラン「アミーゴ」の人気メニューをいただいてきました。

イタリアンなのになぜか名物が、ポタージュスープに「エビライス」という名の炒飯であり、またそれが美味しかった話を前号で書いた。

【記事】イタリアンなのに人気メニューがポタージュにエビライスにチキンカツ?高知の地元愛されイタリアン「アミーゴ」 

しかし、僕の長い食体験上では、こうしてメニューを広げてファミリーレストラン化した場合、本家のイタリアンがゆるくなり、イタリアから遠く離れることが多い。

ここ「アミーゴ」では、ポタージュスープやエビライスの次に人気がチキンカツだというし、オムライスやカツカレーにカレーライスもある。

しかし一方で、ピザはカニマヨネーズのような日本的ピザもあれば、マルゲリータをはじめとして、16種類もある。

パスタも、なぜかマカロニグラタンが仲間入りしているものの、自家製パンチェッタ(!)のカルボナーラなど8種類ほどある。

肉・魚料理は、ハンバーグやカニクリームコロッケ、エビフライといった完全洋食料理もあれば、ヘレカツのボローニャ風、チキンのマルサラワインといった、本格イタリア料理も散見される。

要は懐が深いのである。

しかし、席数も多く、これだけ手を広げて大丈夫なのかと、余計な心配も湧いてくる。

そう思っているところへ、今度はイタリア料理が運ばれきた。

「自家製ソーセージ」である。

細いソーセージを切ると、肉汁が滲み出した。

食べれば香草だろうか、肉の香りに混じって爽やかな香りがして気分がいい。

コリッ。

ソーセージを噛んでいると、時折小気味いい食感がある。

聞けば、軟骨を小さくして混ぜ込んでいるという。

うむ。おぬし、なかなかやるな。

続いてパスタの王道トマトソースが運ばれてきた。

食べる前の勝手な想像では、ややナポリタン寄りの味を考えていた。

だが違う。

サルサポモドーロは、トマトの凝縮した旨味にあふれ、その中に優しい野菜の旨味が潜んで調和している。

こりゃあ手間暇かけた正統派トマトソースである。

聞けばイタリア料理用語でソフリットという玉ねぎ、セロリ、にんじんの微塵切を炒めてベースにし、隠し味に肉を少し入れているという。

うむ。おぬし、かなりやるな。

続いてカモッラという名のピザが運ばれた。

名前がピッツァでなく、ピザである。

これもアメリカ的ピザを想像していた。

ところがどうだろう。

生地はモチモチとしてピザの命と言われるコルチニョーネ(ピザの縁)もこんもり盛り上がって、小麦粉の香ばしさがあるではないか。

カモッラは、アンチョビ、オリーブ、ケッパー、生トマト、パルメザンチーズ、胡椒、オリーブ油入りである。

トマトのフレッシュな酸味、海老の食感、ケイバーの酸味、チーズの旨味、オリーブの塩気と酸味が次々と口の中で弾けて、いい。

お腹いっぱいでもついつい食べちゃう。

カモッラ(Camorra)とは、イタリア・マフィアに属する犯罪組織のことである。

こんな犯罪組織なら大歓迎だ。

食べ終わって現在の店主に話を聞いた。

創業は1960年で、祖父が神戸で開業したのが始まりだという。

「長くお爺様が考えられた味を受け継いでいるのですか?」。

そう聞くと、まだ30代の若い店主は答えられた。

「いえ、わからないように、少しづつ変えています」。

伝承とは昔のやり方を変わらずに受け継ぐことだが、伝統とは、お客さんの動向を感じ取りながら、改革していくことにある。

そうしてこそ伝統は生きる。

「アミーゴ」が何世代にもわたって愛されてきた理由はそこだろう。

ああ、全メニュー制覇したくなってきた。

 高知県高知市廿代町「アミーゴ」にて