関西関連, 高知出身
80代後半の今も正確な寸法の型枠工事にこだわり続ける現役社長 大阪府高槻市「西森工務店」
この情報は2022年4月7日時点の情報となります。
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人形浄瑠璃・文楽(以下、「文楽」)をご覧になったことはありますか。文楽は日本の伝統芸能のひとつで、江戸時代に生まれ、明治時代に隆盛をきわめ、今日まで受け継がれてきました。その文楽の人形遣いである吉田玉翔さんは土佐清水市出身。ふるさとの高知県で今までに文楽の公演をなんども行って来られました。今回は吉田玉翔(たましょう)さんに高知と文楽とのつながりについて、お話を伺いました。
―ご出身が土佐清水市と伺いました。どんな幼少時代を過ごされたのですか。
吉田玉翔さん(以下、玉翔さん):小さい頃は、夏になると大岐(おおき)ビーチで泳いでいたのを思い出しますね。とてもきれいなビーチなんですよ。その美しさが当たり前だと思って育ちました。高校までは野球もしていましたので、とにかく体を動かすのが好きでしたね。今でも体力には自信があります。
―なぜ、文楽の世界に入ろうと思われたのですか。
玉翔さん:母が先代の吉田玉男師匠の大ファンだったので、高知から大阪や東京の公演を見に行きました。楽屋に出入りしていたこともあり、少しずつ関わるようになったんです。
高校3年生で進路を選ぶとき、料理にも興味があったので、料理にするか、文楽にするか悩んで文楽を選びました。重いものなら10kgもある人形を操るのは体力勝負だと感じ、体力に自信のある自分には合っていると思ったんです。それで、初代吉田玉男に弟子入りし「人形遣(つか)い」として道を歩み始めました。
―「人形遣い」というお仕事について教えていただけますか?
玉翔さん:文楽には三業という三つの役割があります。物語を語る「太夫(たゆう)」、音楽を奏でて心情を表す「三味線」、人形を操る「人形遣い」です。一体の人形は3人で動かします。人形の足を動かすのは「足遣(あしづか)い」、左手を動かすのは「左遣(ひだりづか)い」、右手と頭部を動かすのは「主遣(おもづか)い」とそれぞれ呼んでいます。私は最近になって、「左遣い」や「主遣い」を担うことが増えてきました。
―なるほど。伝統芸能は敷居が高く感じますが、文楽の魅力はどこにあると思われますか?
玉翔さん:現代のドラマのように、わかりやすく、すぐにおもしろさを感じるものではないかもしれませんが、「情」や「義理」など人間の感情を物語にのせて表現しているところが魅力です。同じ演目を何回か見るうちに自然に、物語に引き込まれていくのです。文楽は物語あってこそ。たとえば『忠臣蔵』は語り継がれてきただけあっていいお芝居だと思います。
―高知で公演をされることもあると聞きました。どんな公演をされているのですか?
玉翔さん:オペラ歌手の上杉清仁(うえすぎ すみひと)さんが土佐清水市の中学校で同級生だった縁で、3年前に文楽とオペラのコラボ公演を行いました(2019年8月18日 土佐清水市 市民文化会館にて)。落語や歌舞伎と違って文楽は、1つの役を演じるのに人形遣いが3人必要で、そこに最低でも太夫1人、三味線1人と最小限の座組でも5人がかりになります。オペラなど別ジャンルとコラボすることは、メリットも多いんです。何より、今までなかった新しい世界もひらけます。
それから、県東部の安田町でも、公演しました(2019年3月)。安田町は、明治期に文楽を支え、後に太夫の名人ともいわれた六世竹本土佐太夫(たけもと とさたゆう)さんのご当地ということで、是非、公演をという町の皆さんの熱意で行われた公演で、「壺坂観音霊験記(つぼさか かんのん れいげんき)」という演目の主役をさせていただきました。そのときは、200人くらいのお客さんが来てくれました。
―高知県での公演は、やはりふるさとへの思いからでしょうか?
玉翔さん:それもありますが、下積み時代から高知で小さなイベントをたくさんさせてもらいました。その経験でプロデュース力も磨かれました。今の自分があるのは、そのおかげなんです。高知はふるさとであるとともに、芸人として育ててもらった大切な場所でもあります。これからも高知で公演して恩返ししていきたいですね。
エメラルドグリーンの海が美しい柏島(撮影:吉田玉翔さん)
―公演などで、よく高知へは帰省されるのですか?
玉翔さん:先日2年ぶりに高知へ帰り、SNSで「仁淀ブルー」として人気の仁淀川と柏島へ行ってきました。生まれも育ちも高知県ですが、行ったのは初めてだったんです。本当に青くてきれいで驚きました。
旅行というと遠くへ行きたくなりがちですが、すぐ近くにもいいものがたくさんありますね。文化も同じで、日本人にこそ文楽をはじめとする日本の伝統文化をもっと見直してもらえたらいいなと思いました。
―新しい発見もありそうですね。今後はどんなことをしていきたいとお考えですか。
玉翔さん:師匠から受け継いだものを次世代にバトンタッチしたいですね。そのための活動のひとつが「文楽夢想継承伝」です。2021年の文化庁関西元気文化圏推進委員会より「関西元気文化圏賞」の特別賞をいただきました。
―関西元気文化圏賞とは、関西から多様な文化を発信したり、文化活動に貢献したりした個人や団体に対して贈られる賞で、特別賞とは大賞に準じる賞なんですよね。
玉翔さん:ええ、そうです。文楽夢想継承伝は、1日だけの自主公演でクラウドファンディングで公演費用を募ったのですが、目標の10倍を超す寄付が集まりました。キャスティングは若手を起用し、親子や師弟の共演など、普段の公演では見られない新しい試みを盛り込んだんです。私は舞台に出ずにプロデュースに徹しました。もっと敷居を下げて気軽に文楽を楽しんでもらえるように、新しい挑戦を続けていきたいですね。
―最後に、これから初めて文楽を見られる方に、どこで見られるのか教えてください。
玉翔さん:地方巡業は毎年10月と3月にありますが、それ以外は東京と大阪で長期の公演を行っています。この4月から、大阪の国立文楽劇場で4月文楽公演を予定しています。3部構成で、僕はその中の演目で第1部の「義経千本桜(よしつね せんぼんざくら)」の「河連法眼館(かわつらほうげんやかた)の段」で「亀井六郎(かめい ろくろう)」という義経の家来の役で出演します(4/14~4/24まで)。第1部は、僕ではありませんが、宙乗りもありますので、よければ、ぜひ観にきてください。
人形浄瑠璃文楽座・人形 吉田玉翔
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・国立文楽劇場 https://www.ntj.jac.go.jp/bunraku.html
・文楽夢想継承伝 https://bunraku-musou.jp/