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「惚れ薬を作ろうと思って」西込さんが育てる気品あふれる香りの土佐ベルガモット 美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2021年11月14日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は、高知でベルガモットをはじめとした柑橘農園を営んでいる西込さんを訪ねました。

高知市春野町の南東を向いた山の斜面には、300本のベルガモットの木が、気持ちよさそうに枝を伸ばしていた。

ベルガモット。

そう聞いても、イタリア料理好きな人以外はピンと来ないだろう。

主な産地はイタリアで、果実は生食や果汁飲料にはされず、精油を採取して香料として使用される柑橘である。

その鎮静効果のある爽やかな香りは、オーデコロンや香水の原料として使われ、

紅茶のアールグレイはベルガモットで着香した紅茶となる。

しかし、なぜ高知でベルガモットなのか。

株式会社にしごみ(旧名:西込柑橘園)の主である 西込浩一さんに聞いてみた。

「惚れ薬が出来たらええと思って」

そういって西込さんは笑われた。

「惚れ薬はできましたか?」

そう聞くと、

「もうヨーロッパの香水屋がいっぱい作っちゅう。入る余地ないわ」

そういって笑われた。

高知市春野町にある農園は、柑橘農家である。

ハウス栽培ではなく露地で蜜柑類や文旦、珍しいところではブラッドオレンジを作られている。

ベルガモットを作り始めたのはいいが、寒気に弱い。

寒い風が吹き抜けると、一気に成長が止まってしまう。

だから木陰の方が影響を受けにくいが、日照量が少ないために成長がままならない。

またイタリアにはない病気にかかることもあった。

そうして苦労を重ね、今は300本3トンの収穫ができるようになったという。

緑色の実をつけているベルガモットの香りを嗅いでみた。

だが、香りはあまりしない。

「もぎって皮に爪立ててみな」

西込さんに言われるがままに、一個もぎって爪で傷をつけてみた。

おお、一気に香りが立つではないか。

鼻腔が清められるかのような爽やかな香りである。

これを枕元に置いておけば、よく眠れるだろうなと思うような鎮静効果が期待できる香りである。

癒し、気持ちが整う。

そんな香りが顔を包む。

だがそれも収穫時期で香りが違うのだという。

「12月は男性オーデコロン。1〜2月の熟したやつは、女性用香水の柔らかい香りとなる。リモネンが消えてベルガモールが強くなるからな」

そう西込さんは言われた。

「土佐鶴はこれでリキュール作りゆう」。

高知の酒蔵土佐鶴の土佐ベルガモットリキュールである。

まだ飲んだことはないが、きっと寝酒には最高だろう。

また「アンフィニ」という東京イタリアンでは、この土佐ベルガモットを使っているのだという。

試しに葉をちぎって揉んでみた。

ああ、揉まれて空気と触れ合った葉から、良い香りが漂ってうっとりとなった。

素晴らしい。

果皮も葉も人を魅了する。

毎日嗅がれているせいだろう。

ベルガモットのことを語る西込さんの表情は、どこまでも穏やかだった。

高知県高知市春野町弘岡中「株式会社にしごみ」にて

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