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この情報は2021年10月8日時点の情報となります。
土佐鶴酒造といえば、言わずとしれた高知の酒蔵。
今回は、酒造りの責任者や取締役に土佐鶴の酒造りへのこだわりや、知っているようで知らない日本酒の豆知識を聞いてきた。
福留 幸一さん(写真左)は、土佐鶴の酒造りを取り仕切る最高責任者である「杜氏」として、25年にわたって酒蔵を牽引している。
兵庫県出身の祖父江 久美さん(写真右)は、大学進学をきっかけに高知県へ引っ越し、大学卒業後に酵母の培養・分析を行う専門職として土佐鶴に就職した。
-酒造りにおける、お二人のご担当を教えてください。
福留さん:私は杜氏として、精米から仕込み、搾りに至るまで全体の責任者として管理をしています。20種類以上のお酒を仕込みますので、一つ一つ確認しながら育てています。
祖父江さん:私は主に酵母を担当しています。お酒は麹と酵母の力を借りてできていますので、微生物である酵母の管理にはとても気を使いますね。
-酒造りはいつ頃行われるんでしょうか?
福留さん:実はまさに今(9月下旬)始まったところです。冷凍保存した酵母を起こすところを今していて、1週間後位には本格的な醸造が始まります。精米機もフル稼働していて、仕込みを今か今かと待っているところです。
-一年で一番忙しい時期なんですね。
祖父江さん:これから始まるなという感じですね。お酒造りには、酒蔵の全員が一丸となって取り組みます。みんなが「いいお酒を造る」という気持ちを共有できているところが、何度経験しても良いなと思いますね。
-お酒造りを行う中で、やりがいと感じる瞬間はどんな時ですか?
祖父江さん:新酒ができて、きき酒をしたときですね。毎回毎回、すごく美味しい!って思います。笑
福留さん:一年のうちでも何度かありますね。新酒ができたときもそうですが、あとは全国新酒鑑評会で金賞をいただいたときです。
(土佐鶴HPより)
-29回連続、全国最多となる通算47回の受賞。受賞するのが当たり前みたいな感じになっているので、すごいプレッシャーですね。
福留さん:美味しい酒を造るというのが目標ですが、鑑評会も一つの目標です。29年連続で受賞させていただいていますので、今年も良い酒を造って記録を伸ばしたいですね。
-好きな商品はありますか?
福留さん:それぞれのお酒にそれぞれの良さがあるので甲乙つけ難いですが、大吟醸の「天平」は特別な日に呑みたいお酒ですね。普段の日には、お手頃な「ツルパック青」を愛飲しています。
祖父江さん:私も「天平」が好きですね。日本酒というと和食を合わせるイメージがあるかと思いますが、華やかな香りで洋食との相性もいいんです。
和食や乾き物といったイメージのある日本酒を洋食と合わせるなんて。華やかな香りのある大吟醸だからこその組み合わせだろう。
土佐鶴では、お酒のそれぞれの特徴と、おすすめの食事の組み合わせをオンラインショップの商品ページで紹介している。
食事と合わせて楽しむお酒「食中酒」としての提案がたくさんされているのだ。
大吟醸に純米酒、「しぼりたて」など、日本酒にはたくさんの種類がある。
「大吟醸は高いお酒」といったぼんやりとした知識しかない◯◯取材班は、疑問をぶつけてみた。
教えてくれたのは、取締役の北添 正さん。
-土佐鶴には、純米大吟醸、大吟醸、純米吟醸、吟醸、純米、本醸造といった種類があります。種類がたくさんあって分からないのですが…
北添さん:これらは、精米歩合や醸造アルコールを添加しているかいないかなどの違いになります。当社では、50%以下になるまで精米した米で仕込んだ酒が「吟醸」、主に40%以下の米で仕込んだ酒を「大吟醸」に分類しています。「大吟醸」では30%になるまで精米した米を使うこともあるんですよ。
30%まで削るとは、なんと贅沢。高精白の米を使い、じっくり低温で発酵させることで、雑味の少ないフルーティな味わいになるそうだ。
北添さん:それから、「しぼりたて」はいわゆる新酒ですね。当社ですと、11月にできて通常は半年ほど寝かすのですが、その期間を設けないのでフレッシュな味わいが魅力です。普段から日本酒を呑んでいるような方だと、こうした季節のものを楽しみにしている方もいらっしゃいます。杜氏のように、特別な日には「天平」、普段の食事には「ツルパック青」といった風にシーンや呑みたい量などで商品を選べるのが、日本酒の良いところであり、楽しいところだと思います。私自身、「ツルパック青」を炭酸で割って、そこに柑橘「ブシュカン」を搾る呑み方にハマっています。
なるほど、日本酒だからストレートで飲まないといけない決まりはないのか。
自分の好みに合わせて、普段の食卓に日本酒を取り入れてみると晩酌がより楽しいものになりそうだ。
これまで、迷うことなく「トサヅル」と呼んできた◯◯取材班。
しかし、福留さんの法被にある文字に気づく。そこには、はっきりと「酒王 トサツル」と書かれている。
勤続年数の長い福留さん。法被を着古してしまい、洗濯している間に濁点だけとれてしまったのだろうか…
それとも、◯◯取材班が「トサヅル」と思い込んでいただけで、実はみんな「トサツル」と呼んでいたのだろうか…
「トサヅル」と連呼しながらここまで取材を進めてきたのに、とても失礼なことをしてしまったのかもしれないと恐る恐る真相を北添さんに確認してみる。
-すみません。「トサヅル」と思い込んでいましたが、正しくは「トサツル」だったのでしょうか?
北添さん:いえいえ。呼称は「トサヅル」で合っています。ただ、ふりがなやこうしたカタカナ表記の場合は「トサツル」なんです。
-ホッとしました!ということは、両方正解なんでしょうか?
北添さん:そうですね。「トサツル」や「TOSATSURU」と表記するのには、濁らない澄んだ酒を造るという意味が込められています。
一時はヒヤリとした取材班だったが、思いがけず酒造りへの想いに触れることができた。
(土佐鶴HPより)
土佐鶴では女性社員が主となり、リキュール商品の開発を行っていて、これまでに、高知市春野町産のベルガモットや柚子や小夏などの柑橘を使用した商品を生み出している。
ホームページでは、温度や酒器といったおすすめの呑み方だけでなく、こちらのお酒に合う食事などの情報も掲載されていて、楽しみ方が一層広がりそうだ。
北添さん:土佐鶴は淡麗辛口の酒造りを長い間続けてきました。これまで土佐鶴の酒を支持してきてくれた方のためにも、これからも変わらない、呑み飽きない辛口の酒造りを続けていかななければと思っています。加えて、女性や若い方々が好む商品の開発を行うことで、お酒を呑む文化を継承していきたいと思います。
高知の酒宴に欠かせない土佐鶴の日本酒。
変わらない部分と、時代の変化に合わせて柔軟に変化する部分を併せ持つ酒蔵であることが分かった。
日常の中で日本酒を楽しむことができれば、高知の食をより一層楽しめること間違いなし。
それぞれの楽しみ方を見つけてみてほしい。
土佐鶴酒造
住所:高知県安芸郡安田町安田1586
電話:0887-38-6511
https://tosatsuru.co.jp
文/長野春子