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「シラスが主役か?ナスが主役か?美味かき揚げちりめん丼のおもてなし御前にご満悦」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2021年3月7日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回はシラスの本場、安芸市でシラスをいただくだけかと思いきや、ライバルのナスも一緒に味わえるかき揚げちりめん丼の御膳を紹介。

丼好きとしてはたまらない、迫力のあるかき揚げ天丼である。

ご飯の上に乗ったかき揚げが「食べんしゃい」と迫ってくる。

「廓中(かちゅう)ふるさと館」の名物「かき揚げちりめん丼」である。

かちりじゃこと水菜と人参の季節野菜によるかき揚げだが、かじれば、サクッとした衣の下から優しい野菜の甘みと共に、かちりじゃこのしっかりとした歯ざわりが現れる。

この衣の軽やかさとじゃこの硬さの対比がいい。

さらにかちりじゃこは、噛めば噛むほどに旨味が滲み出てきて、猛烈にご飯が恋しくなる。

そこでご飯をかき込もうとかき揚げを上げれば、なんとご飯の上には、ちりめん(釜揚げしらす)がびっしりと敷き詰められているではありませんか。

食べればその柔らかい身から淡い甘みが伝わって、ご飯の甘みと抱き合う。

ちりめんじゃこの名産地、安芸市ならではのちりめんじゃこ二重奏が、実にいい。

おっとここで、しらすやちりめんじゃこのこともおさらいしておこう。

どちらもイワシの稚魚を使った食材だが、釜茹でしたものを「しらす」→釜茹でした後に少し干したものを「しらす干し」→じっくり干したものを「ちりめんじゃこ」と、一般的には呼ぶところが多い。

しかし高知では、しらすもちりめんじゃこも「ちりめんじゃこ」と呼んでいる。

さらに「かちりじゃこ」とは、イワシ稚魚の成長過程の中ぐらいの奴を指し、旨味が濃厚で苦味がないものをいい、もっと小さい「ちか」や大きい「かえり」より、好む人が多い、人気の品だという。

そんな人気者とやはり人気者である釜揚げしらすがタッグを組んでいるのだからたまらない。

それらを甘辛いタレに漬け、柚子果汁をかけながら食べ進む。

うむ。おいしいなあ。

と悦にいっている場合ではない。

まだ主役はいる。

この「かき揚げちりめん丼のおもてなし御前1,550円」には、「ナスのタタキ」なる料理が添えられている。

素揚げしたナスに焼き鯖のほぐし身、生姜、ニンニク、ネギなどの薬味を散らした料理で、ポン酢につけて食べる。

日本でも有数のナス生産量を誇るこの地方でよく食べられていたという料理で、鯖の旨味とナスの甘みがよく合う。

「おいしい。これもご飯ほしくなりますね」というと、「サバが出汁になって、ナスとよくあうでしょ。でも昔はそれしかおかずはなかったがよ」と、食堂のお母さんは言われた。

「ちりめんかき揚げ丼のほうも、いいですねえ」と言えば、

「これは平成27年に、ちりめん丼を始めたがやけんど、最初は珍しいって、面白いくらい出たがよ。けんど、どこでも似たのをやるようになって、新しいものをと考えて、かき揚げを添えるようになったがです」。

うむさすが岩崎弥太郎の出身地である。

人と違う工夫と進取の才があるやもしれぬ。

他に添えられた、「ナスそぼろあんかけ」も「冬瓜と海老の焚き合わせ」も優しい味で、おばあちゃんちに遊びに来て食べているような、安堵感がある。

他の料理も食べたくなり、「土佐ジロー親子丼」も頼んでみた。

これまた卵の半熟とじ具合がいいねえ。

たまらず箸をつけたくなる光景である。

早速かき込めば、上品な味付けで、その中から現れる土佐ジローの凛々しい肉との対比がいい。

聞けばこの食堂は、もてなしの心で故郷の味わいを伝えたいねえと、平成4年に地元の者たちだけで始めたそうである。

今も地元の方が働かれていて、70を超える方もおられるという。

どうりで食べると、暖かい心で満たされるわけだ。

おそらく店を出てしばらく経つと、無性にまたここに来たくなるのだろうなあ。

 

高知県安芸市土居「廓中(かちゅう)ふるさと館」にて