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「まだまだあったか!奥深き高知の居酒屋でいただく刺身に鍋に子芋の煮物」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2021年2月28日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす美食家・食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は煮物が好きとおっしゃるご主人が営まれる居酒屋をご紹介。

食べログで高知市内の居酒屋を検索すると、595軒出てくる。

さすが飲兵衛の街、人口から考えると、かなり多い。

これまで、たくさんの店に行かせてもらった。

精鋭の20数軒である。

実はもうこれ以上、いい店がないだろう、と思っていた。

しかし、甘い。

まだあったのである。

ひっそりと明かりを灯す、この店「豊き(きは七が三つ)」がそうだった。

運ばれてきた刺身の盛り合わせを見て、おぬしなかなかやるじゃないかと思わず微笑んだ。

さあ食べよう。

いさきはねっとり甘く、かつおはもっちりとして滑らかである。

脂ものっていて、実によろしい。

この二つで俄然嬉しくなって、酒を追加する。

のど黒の炙りも、脂のダレがなくてよろしいぞ。

 

お次は、四万十鶏のつくね鍋といってみた。

うん、素直な鳥の滋味に油揚げのコクが加わって、これまた酒が進んで困るのだな。

 

次に選んだのは、「鯨ニンニク葉」である。

東京では、本格麻婆豆腐を作るときに、このニンニク葉の確保に苦労するが、高知では日常である。

こいつは、ちょいとクセのある肉に合うのだな。

だから鯨の一筋縄では行かない脂の個性と合う

一緒に合わせて食べるとおいしく、これまた熱燗を一本。

 

「花ニラのぬた」も頼んでみた。

ぬた味噌の茶色に花ニラの緑が輝く。

花ニラも東京ではあまり見かけないが、ニラの産地である高知では日常である。

みずみずしく、歯切れ良く、噛むことが実に痛快で、ニラの香りがほんのりとする。

この花ニラと油揚の取り合わせもいい。

 

締めは、山形のこんにゃくそばといってみた。

酒と料理で熱くなった体を、清涼なそばが清めていく。

そんな感覚が清々しい

ご主人の話を聞けば、32年前からやられていて、今の場所は12年前からだという。

高知出身で、大阪で修業をして戻られて、お店を始めたという。

こりゃあ季節ごとに来なくちゃと思い、他はどんなものを出されるのか聞いてみた。

「冬はクエ鍋がいいですね。あとはブリにニンニクぬたとか、カンパチをピリ辛で食べてもらったりとか。春は山菜です。虎杖(イタドリ)、タラの芽、コシアブラなんかを天ぷらにします。タケノコですか?筍は1月から出ます。春先あさりもおいしいですよ。浅瀬のところにいる大きいあさりを酒蒸しにしてね。夏は鱧とイサキかな。秋になると地の松茸や、太刀魚が良くなってくるので塩焼き。あとは、皮を見せずに身の方を表にしたかいさま寿司もやります。かいさまとは高知の方便で逆さまの意味です。後はアオリイカも甘くなってくる。伊勢海老 焙烙(ほうろく)でバター焼きか具足煮か刺身ですね」。

話を聞いているだけで唾が湧いて、また腹が減ってきた。

その様子を感じたのか、ご主人が唐突に「小芋、煮たの食べますか?」と聞いてきた。

一も二もない。当然「はい。お願いします」と答える。

色白く仕上げた芋の煮っころがしは、ソウダガツオの出汁をつかっているのだという。

人懐っこいうまみがあって、気分がほっこりと暖かくなる味である。

それは「煮物が好きだ」というご主人の朴訥な人柄が出ている、まあるい味だった。

 

高知県高知市帯屋町1丁目「豊き」にて