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【高知グルメPro】「また来てしまった…」愛すべき変態シェフが繰り出すイタリアンを存分に味わう「トラットリア トロドーロ」フードジャーナリスト・マッキー牧元の高知満腹日記

この情報は2025年7月6日時点の情報となります。

フレンチにエスニック、割烹にとんかつ、居酒屋から立ち食い蕎麦まで、年間700軒食べ歩き、料理評論、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす、食べるプロ「食いしんぼおじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の飲食店・生産者さんをまわって紹介する高知家の〇〇の人気連載記事「高知満腹日記」。今回は、マッキーさん自身何度も訪れている、愛すべき“変態”シェフが営むイタリアンでおなか一杯いただいてきました。

訪ねたのは高知市菜園場町にある「トラットリア トロドーロ」である。

店に入って挨拶するなり言われた。

「こないだ、うちの親父から、『おい、ネットの記事でお前のこと変態って書かれているぞ、大丈夫か? 』そう言われたので、よく内容読んでよと言ったんです」

山本シェフは、そう言って笑った。

書いたのは、私である。

全国で最もイタリア料理の偏差値の低い高知に移住して店を開き、誰も注文しないのに、自分の好きな郷土料理「リボリータ(トスカーナ地方料理、野菜とパンの粥)」を、毎日作り続けてきた男である。

いつか誰かが、頼んでくれる。

この美味しさをわかってくれる。

そう信じながら、パンを焼き、煮込み続け、イタリアからこの料理用の器を買い、仕方なく、自分のまかないで食べ続けてきた男である。

私は、そんな料理人が大好きで、「変態」と愛すべき表現をしたのであった。

さて、久しぶりにその仕事を確かめたくて訪れたのである。

前菜は、「PESCE  SPADA  AFFMICATO 自家製燻製かじきまぐろと野菜のサラダ」をお願いした。

ルッコラなどの野菜の上に、薄切り燻製カジキマグロが置かれ、その上に微塵のトマトを散らしたサラダである。

食べれば、燻製の香りが強く、食欲を沸かす。

「さあ、もっと腹を空かせろよ」と、煽ってくる。

次は、「DELIZIE DI  MAIALE フェガデッリ(網脂)で巻いた豚レバーと自家製サルシッチャソーセージのオーブン焼き」ときた。

また珍しい。

イタリアン激戦区東京でも、あまりお目にかかれない料理である。

焼いたパンの上にはレバーが置かれ、後ろには太いソーセージが控えている。

実に男っぽい。

ここはどこだ?北イタリアか?と思う光景である。

網脂で巻かれたレバーを噛めば、甘みが流れだし、ソーセージを噛みしめれば、煉肉の旨味が口を満たしていく。

赤ワインを大至急!と叫ぶ。

この料理をいただき、ここは北イタリアか?と、ワクワクしてきた。

さあ、プリモピアット、パスタは何にしようか?

そう考えている時、白い紙のテーブルクロスに手書きされた料理を見つけた。

~オススメ~パスタ・エ・ファジョリ(ひよこ豆とスルメイカ)、とある。

これはもう豆好きとしては、頼むしかない。

地味な料理である。

薄茶とイカの白しかない。

ひよこ豆のズッパ(スープ)に、ショートパスタを合わせ、加熱したスルメイカを載せている。

スプーンですくえば、幅広く、ギザギザ四角麺が現れる。

一口すくって、食べ、おもわず顔がほころんだ。

豆の優しい優しい甘みが、ゆっくりと広がって、体に染み込んでいく。

そこへイカの甘みが、静かに追いかける。

寒い季節には欠かせない料理である。

体を温めるだけでなく、心を温めてくれる料理である。

それは、イタリア人でもないのに、なぜか懐かしい気分を運んできた。

もうひとつパスタをいただこう。

「GNOCC I  DI PATATE CACIO E PEPE じゃがいものニョッキ  カチョエぺぺ」

をいく事にした。

ジャガイモのニョッキに、バターと胡椒、塩だけの味付けという、実にシンプルな料理である。

日本人なら、さしずめ白ご飯に、塩をかけたものを食べる感覚だろう。

じゃがいもの甘み、胡椒の刺激、バターのコク。

その三つが織りなす、黄金比ともいえる純粋な美しさに、ほっとする。

これまたイタリア人でもないのに、「ああ、自分の故郷に戻ってきた」という、安堵感があった。

もう満腹である。

これでやめようと思ったものの、もう少しこの“変態”が繰り出すパスタを味わいたい。

「乾麺を食べたい」。そう山本シェフに言うと、ニヤリと笑って厨房に戻った。

「ホタルイカとオレンジのアラビアータ」だと言う。

スパゲッティーニだろうか、細麺が辛いトマトソースであえられ、所々にホタルイカとオレンジが顔をのぞかせている。

上に乗っているのは、砕いたナッツか。

「ああっ」

一口食べて叫んだ。

今これが食べたい!そう無意識に思っていたのもを、見事に具現化した味だった。

まるでマンマのように、息子が食べたいものを察知して、作ってくれる。

ここはそういう食堂なのである。

だから、高知を訪れるたびに足を運んでしまうのだろう。

店舗情報

トラットリア トロドーロ(TRATTORIA TORO D`ORO)

営業時間:12:00~13:30(L.O)※土日月祝のみ/18:00~21:30(L.O)

定休日:毎週火曜日・ 第3水曜日 ※予告なく休む場合があります⁡

住所:高知県高知市菜園場町4-6  1階

電話:088-855-6994