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【高知グルメPro】ボリューム満点!中華に洋食に和食までメニューの数75種 地元愛されレストラン「スワロー会館」フードジャーナリスト・マッキー牧元の高知満腹日記
この情報は2020年3月1日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」
「おや? いつもと光景が違う」。
目の前にべっ甲色で焦げ一つなく焼かれたうな重が運ばれて来た瞬間に思った。
「かね春」の「うな重」である。
一匹約200数十グラムの蒲焼が綺麗に並んでいるのだが、少し様子が違う。尻尾がないのだった。
尻尾と頭は落として、うざくなどの料理に使っているのだという。
注文入ってから焼かれるうなぎは。皮カリッとし身はふわんりとしている。
うなぎのタレはやや甘めで、濃い味なので、おのずとご飯を描き込む速度が早くなる。
この重なり合った満足のうな重に、茶碗蒸しとわさび漬け、うざく、一口茶そばがつく。
これで3900円なのだから、昨今のうなぎ高騰事情を考えれば、相当お値打ちだろう。
ワサビ漬けは、うなぎの味を一旦切ってリセットするのにいい。
また茶碗蒸しは肝吸いの代わりで、肝吸いは好き嫌いあるのでこれにされている。
ユリ根、エソ100パーセントのかまぼこは、汁物がわりなので、出しが多く、わざとゆるゆるで固まり切っていない。
その一工夫の心配りが、嬉しいではないか。
「かね春」は創業20周年になるという。
先代(現ご主人のお父様)が始められた店だが、先代は高知県で一番初めに養鰻をやられた方だった。
活鰻の会社を作られ、加工も、卸専門で長くやられていたという。
ところが常日頃から「安くて美味しい店がやるのが夢や」と言い続け、ついに65歳からから店を始められた。
最初は10席から始めたのだが、何よりの利点は地下水が良かったことだという。
店に送られて来た活鰻は、地下水で活かされる。
ミネラルが多い地下水で最後を生きる鰻たちは、活力があるままにさばかれ焼かれていったのだろう。
89歳まで焼かれていたという先代のやり方は、白焼きで70パーセント仕上げる。
最後に、表二回、裏一回とタレをつけたら秒単位でひっくり返す。
こうして皮がパリパリに焼き込むのが、先代のやり方で、それは今でも生きている。
写真では、腹側しか見えていないが、このふわりときれいに焼かれた腹の逆側はパリパリ、いやカリッとしてその食感の対比がなんとも楽しい。
地焼きうなぎの醍醐味である。
そしてなによりお父さんの夢であった「安くて美味しい」を、今なお実現させているのが素晴らしいではないか。
高知県高知市春野町芳原「かね春」にて