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【高知グルメ】お酒に合うバルメニューが並ぶ「maru cafe&bal」ほっとこうちおすすめ情報
この情報は2025年1月26日時点の情報となります。
割烹にとんかつ、フレンチにエスニック、居酒屋から立ち食い蕎麦まで、年間700軒食べ歩き、料理評論、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす、食べるプロ「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の飲食店・生産者さんを紹介する高知家の〇〇の人気連載記事「高知満腹日記」。今回は、高知県安芸市の特産野菜「入河内(にゅうがうち)大根」の定食をいただいて来ました。
「本当にこんなところにあるのだろうか?」
高知の取材では、海沿いの町から山に入り、車を走らせているうちに不安になることが何度もあった。
今回もそうである。
安芸市から、細い細い山道を伊尾木川沿いに走らせること1時間、辺りには民家もない。
不安を重ねていると、やがて柚子畑が開け、温泉付き食事処「こまどり温泉」が現れた。
ここに来たのは、温泉に入るためではない。
入河内大根(にゅうがうちだいこん)を食べるためである、と言っても、聞いたことがない人が多いだろう。
入河内大根とは、安芸市の山あいにある入河内地区の伝統野菜で、長さが60センチ、重さは5キロ以上になる大きな大根である。
また、土から顔を出した部分が赤紫色で、最大10キロになるものもあるという。
まずその大根を見せていただいた。
でかい。
ご主人の濱田智子さんが持っている姿は、赤子を抱いているかのようである。
早速、毎年1月~2月末頃限定の「伝統野菜・入河内大根定食」をいただくことにした。
まず、挟み揚げについてきた、生の大根スライスを食べてみた。
おお。
なんともみずみずしい。
シャキッ、シュバッと大根の汁が弾け、ほんのりと甘い味が広がる。
梨のようでもある。
ピクルスは歯切れ良く、はつらつとしている。
次に挟み揚げをいってみる。
豚肉を挟んでフライにした料理で、過熱されたことにより、さらに膨らんだ甘さがこぼれ落ちた。
それが豚肉の甘さと出会って、微笑みが生まれる。
ご飯は大根の葉を炊き込んだ菜飯である。
葉が力強い。
焚かれても負けない青々しさがある。
それが米の甘い香りと合うんだな。
さらに大根と米のポタージュを飲めば、地平線の彼方まで優しい。
次に土佐あか牛と大根の煮込みを食べてみた。
不思議なことに、生やフライでは感じなかった、大根の辛みがかすかにある。
こんないい大根が世に知られていないとは、もったいない。
この土地でしか育てることができないせいもあるが、これだけ大きいと手間がかかるのだろう。
「この大根は、育てるのは結構大変なんでしょうか?」
「まあ大きいから抜くのは労力かかるけど、育てるのはそんな苦労はしません。2月末で収穫は終わりで、ほっとけばもっと大きくなるけど、スが入っちゃうからね」と、答えられた。
断面を触ってみると、ハリがあって、1ミリの緩みもない。
「私は根菜です」と誇っている、果肉が詰まった、しっかり感がある。
聞けば、平家の落人が持ち込んだという伝説があるのだという。
代々育てられてきたが、戦争中に聖護院大根などとかけ合わさって、違う方向に進んでいった。
それを今、元の姿に戻そうという活動を始め、本来の入河内大根に戻すことができたのだという。
濱田さんは「でも、昔はこんなにデカくはなかったんだけどね」と、笑われた。
手打ちのざるそばについてきた大根おろしが美味しかったので、「おろし汁ありますか?」と、聞くと、「飲んでみます?」と、持ってきてくれた。
甘い。
おろし汁が甘い。辛味は一切ない。
他の大根にはない、おろし汁の甘さである。
このおろし汁を脇に添えながら、あまご開きや、豚肉の濃い味に対してナスが癒し役となっている「なす丼」をかき込むのもいいだろう。
入河内大根、山奥まで車を走らせた甲斐のある、希少な大根である。
高知県安芸市黒瀬「こまどり温泉」にて
住所:高知県安芸市黒瀬550
Tel:0887-36-2260
営業時間/11:00~19:00 冬季時間/11:00~18:30(11月~2月)
食事/12:00~18:00
札止/閉店30分前
定休日/毎週水曜・年末年始