高知家の◯◯高知家の◯◯ 高知県のあれこれまとめサイト
高知県のあれこれまとめサイト
  • facebook
  • x
  • instagram
  • youtube
 

【高知グルメPro】10キロにもなる入河内大根のみずみずしさを定食であますことなく堪能できる「こまどり温泉」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

この情報は2025年1月26日時点の情報となります。

割烹にとんかつ、フレンチにエスニック、居酒屋から立ち食い蕎麦まで、年間700軒食べ歩き、料理評論、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす、食べるプロ「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の飲食店・生産者さんを紹介する高知家の〇〇の人気連載記事「高知満腹日記」。今回は、高知県安芸市の特産野菜「入河内(にゅうがうち)大根」の定食をいただいて来ました。

「本当にこんなところにあるのだろうか?」

高知の取材では、海沿いの町から山に入り、車を走らせているうちに不安になることが何度もあった。

今回もそうである。

安芸市から、細い細い山道を伊尾木川沿いに走らせること1時間、辺りには民家もない。

不安を重ねていると、やがて柚子畑が開け、温泉付き食事処「こまどり温泉」が現れた。

ここに来たのは、温泉に入るためではない。

入河内大根(にゅうがうちだいこん)を食べるためである、と言っても、聞いたことがない人が多いだろう。

入河内大根とは、安芸市の山あいにある入河内地区の伝統野菜で、長さが60センチ、重さは5キロ以上になる大きな大根である。

また、土から顔を出した部分が赤紫色で、最大10キロになるものもあるという。

まずその大根を見せていただいた。

でかい。

ご主人の濱田智子さんが持っている姿は、赤子を抱いているかのようである。

早速、毎年1月~2月末頃限定の「伝統野菜・入河内大根定食」をいただくことにした。

まず、挟み揚げについてきた、生の大根スライスを食べてみた。

おお。

なんともみずみずしい。

シャキッ、シュバッと大根の汁が弾け、ほんのりと甘い味が広がる。

梨のようでもある。

ピクルスは歯切れ良く、はつらつとしている。

次に挟み揚げをいってみる。

豚肉を挟んでフライにした料理で、過熱されたことにより、さらに膨らんだ甘さがこぼれ落ちた。

それが豚肉の甘さと出会って、微笑みが生まれる。

ご飯は大根の葉を炊き込んだ菜飯である。 

葉が力強い。

焚かれても負けない青々しさがある。

それが米の甘い香りと合うんだな。

さらに大根と米のポタージュを飲めば、地平線の彼方まで優しい。

次に土佐あか牛と大根の煮込みを食べてみた。

不思議なことに、生やフライでは感じなかった、大根の辛みがかすかにある。

こんないい大根が世に知られていないとは、もったいない。

この土地でしか育てることができないせいもあるが、これだけ大きいと手間がかかるのだろう。

「この大根は、育てるのは結構大変なんでしょうか?」

「まあ大きいから抜くのは労力かかるけど、育てるのはそんな苦労はしません。2月末で収穫は終わりで、ほっとけばもっと大きくなるけど、スが入っちゃうからね」と、答えられた。

断面を触ってみると、ハリがあって、1ミリの緩みもない。

「私は根菜です」と誇っている、果肉が詰まった、しっかり感がある。

聞けば、平家の落人が持ち込んだという伝説があるのだという。

代々育てられてきたが、戦争中に聖護院大根などとかけ合わさって、違う方向に進んでいった。

それを今、元の姿に戻そうという活動を始め、本来の入河内大根に戻すことができたのだという。

濱田さんは「でも、昔はこんなにデカくはなかったんだけどね」と、笑われた。

手打ちのざるそばについてきた大根おろしが美味しかったので、「おろし汁ありますか?」と、聞くと、「飲んでみます?」と、持ってきてくれた。

甘い。

おろし汁が甘い。辛味は一切ない。

他の大根にはない、おろし汁の甘さである。

このおろし汁を脇に添えながら、あまご開きや、豚肉の濃い味に対してナスが癒し役となっている「なす丼」をかき込むのもいいだろう。

入河内大根、山奥まで車を走らせた甲斐のある、希少な大根である。

高知県安芸市黒瀬「こまどり温泉」にて

 

店舗情報

住所:高知県安芸市黒瀬550

Tel:0887-36-2260

営業時間/11:00~19:00 冬季時間/11:00~18:30(11月~2月)

食事/12:00~18:00

札止/閉店30分前

定休日/毎週水曜・年末年始

HP:https://komadori-onsen.com/