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【高知グルメPro】地元愛されイタリアンから人気の和食屋に夜の〆の屋台餃子までそろう「廿代町」のおススメグルメ6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2024年8月11日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす高知県観光特使でもある、食いしんぼおじさんことマッキー牧元さんが高知の美味しいお店や生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は、四万十市中村の天神橋商店街の「はれのば」にあるカジュアル割烹「コの字サカバ mihoki」でいろいろいただいてきました。
高知には何度も来て、もう200軒以上は外食しているが、アワビをいただいたのは初めてだった。
高知でナガレコと呼ぶトコブシが一般的で、何回もいただいている。
しかし、アワビには出会っていない。
高知の海では、ナガレコのような小さな一枚貝は育つが、アワビはあまり育たないのだろう。
勝手にそう思っていた。
しかし、豊穣な高知の海には、堂々たるアワビがいたのだ。
そのことを教えてくれたのが、ここ四万十市中村天神橋に店を構える「コの字サカバ mihoki」のご主人だった。
「コの字サカバ mihoki」は、天神橋商店街にある商業施設「はれのば」にあるカウンターだけのカジュアルな割烹である。
長い間料亭で働かれていたご主人は独立して5年、去年、四万十市の中村でこの店を始められた。
そのときに思ったのが、地元で採れる高級魚介を、高値であろうが正当な値段で買い、料理に活かすことだったという。
おそらく、ナガレコが普及しているせいで、アワビはあまり人気がないのかもしれない。
そのせいで、漁師も積極的に獲ろうとはしないのだろう。
しかし、出された蒸し鮑の肝ソースは、東京の高級割烹や鮨屋と肩を並べるレベルだった。
その身を噛めば、歯がアワビの体躯に包まれて、磯の香りが漂い出す。
その後から、昆布をたくさん食べたであろうと思われる旨味が、じんわりと滲み出してきた。
「うまいなあ」。
そうしみじみつぶやいて、辛口の純米酒を飲む。
酒に溶け込んだ米の甘みが、アワビを抱きすくめる。
「こんなアワビです」。
ご主人が見せてくれた。
こりゃ、なかなか立派なアワビではないか。
地元のアワビだという。
もっと高知のアワビを獲って食べさせる店が増えればいいと思う反面、全国的に大きなアワビが減少している現状では、そっとして大きく育つまで待ってほしいとも思う。
高知の海の豊かさは、底しれぬ。
さらに出されたのが、焼き白甘鯛である。
これまた高級魚である。
食べれば、品のいい甘みが口の中に広がって、酒が恋しくなる。
白甘鯛もまた、高知では初めてである。
どうしてもカツオやウツボの影に隠れて、市場流通が少ないのだろう。
年々高騰が続く白甘鯛やアワビを、8千円ほどのコースで食べられるなんて、地物の人は幸せである。
東京や京都の人が聞いたら、腰を抜かすに違いない。
聞けば、地元のお客さんが東京のお客さんを連れてよく来るという。
「高知にはこんな高級魚介もあって、安く食べられるんですよ」と、自慢したくなる気持ちが、よく分かる。
料理自体も、地に足がついている。
突き出しの、長芋の昆布締めにたたきオクラ、蛸のさっと煮も長芋とオクラの粘りが蛸の皮下のコラーゲンと共鳴して、ニヤリとさせられる。
新生姜の漬物も、焼き鯖鮨も、塩梅がピタリと決まっている。
ご主人一人、地元ではあまり人気のない魚介を目利きし、真っ当な値段で買い、的確に料理して、お客さんに喜んでもらう。
また違う季節に来るのが楽しみな店が、一軒増えた。
高知県四万十市中村天神橋39「コの字サカバ mihoki」にて