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黒潮を泳ぐ豊かな生命を感じてほしい 大阪海遊館海洋生物研究所『以布利センター』
この情報は2024年5月28日時点の情報となります。
これまでたくさんの記事をご覧いただいている「高知家の〇〇」ですが、その中でも人気だった記事や、まだまだみなさんにご覧いただけていないおススメ記事を「Back To 高知家の○○」としてご紹介します!
今回は2019年3月5日にご紹介した、須崎市の名産品「虎斑竹」の記事です。
これまでご愛読いただいている方も、初めて来たよという方も、是非お楽しみください!
須崎市の中心部から車で約15分。人口約740人の安和(あわ)地区。
太平洋が一望できる無人駅のJR安和駅や温暖な気候によって育まれるポンカン等の柑橘類、そして今回紹介する『虎斑竹(とらふだけ)』もこの地区を語るうえで欠かせないもののひとつだ。
淡竹(はちく)の仲間である『虎斑竹』は表面に虎皮状の模様が入っていることから、こう呼ばれる。
この模様は幹に付着した寄生菌の作用によるものだという学説がある、全国でも安和地区でしか生育しない珍しい竹だ。
また、わずか1.5キロメートルの間口の狭い谷間でしか生育しない『虎斑竹』は筍で生えてから伐採に至るまで一切の薬剤、化学肥料等を使用していない無農薬の竹材である。
この『虎斑竹』を加工し、販売しているのが『竹虎(株)山岸竹材店』だ。
明治27年(1894年)に竹材・竹製品製造卸業として大阪府で創業。
太平洋戦争の勃発により再出発する地として2代目が選んだのが、母の実家があり家族の疎開先であった須崎市安和だった。
その後、商売は軌道に乗り従業員も60名以上、竹の取り扱いも8万束を誇るようになったものの、3代目の頃には業績にかげりが見え始めた。
海外から輸入の竹製品の流通、生活スタイルの変化によって下火になりつつあった竹製品。それに追い打ちをかけるように、工場が火災に見舞われるなど、困難な状況が続いた。
この状況を打破したのが、4代目・山岸義浩社長である。
「竹文化の創造と発信で豊かな竹のある暮らし」を経営理念にインターネットを活用した営業と情報発信に本格的に力を入れた。
その結果、数々の賞を受賞し、その名が知られるようになると新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど多くのメディアに取り上げられた。
近年ではクラウドファンディングに挑戦し、日本唯一の竹虎電気自動車「竹トラッカー」が国内外で話題に。また第11回世界竹会議では発表者として日本人で唯一招待され、基調講演を行うなど目覚ましい活躍ぶり。
「社長は人と違っていて突き抜けているからこそ、欠けている部分も多い。そこを補っているだけ。お互い様です。」
と笑うのは、お兄さんを支える弟・山岸龍二さん。竹虎の工場長だ。
今回、虎斑竹の加工作業について話を伺った。
店舗の横にある工場に入ってすぐ目に入ったのは、立てかけられた青みがかった竹と綺麗な虎模様の竹。
「これがビフォーアフター。写真じゃ分かりにくいけどね。」
生育の段階から虎斑の状態で生えていると勘違いしている人も少なくないそうだが、この状態に至るまでには熟練した技術を持つ職人の手が加わっている。
虎斑竹は、伐採・山出し・選別作業・製竹作業・矯め直しという加工工程を行う。
秋から1月下旬にかけて1年分の虎斑竹を全て「伐採」して山から降ろす「山出し」の後、太さ・品質・用途別に1本ずつ「選別」され、結わえなおされてそれぞれの保管場所に運ばれる。
規格の長さに切りそろえたり、わき枝のつけ根部分を一つ一つ切り落としたりする「製竹作業」、最も重要なのが「矯め直し」と言われる油抜きだ。
竹虎では700℃の高温になる大型のガスバーナーを使用して行う。
油分の多い竹は油抜きすることにより、耐久性を高めるとともに竹表面の汚れ落としやツヤ出しの効果がある。この作業によって、青々とした竹に虎皮状の模様がはっきりと表れるのだ。
さらに油抜きした竹は熱を利用して節々をまっすぐに矯正していく。
これらを経て美しい模様のまっすぐな虎斑竹へと生まれ変わる。
日用品からオーダーメイド品まで形を変え様々な製品となり、日本のみならず海外との取引も行っている。
地域と共に生きてきた企業。
そう感じるのは工場長のこの言葉だ。
「先代の頃の従業員さんも住んでいる。山の持ち主も切り子さんも安和の人。切らせてもらえなくなったら、うちは終わり。だから関係はきちんと持ち続けないといけない。」
こう続けた。
「うちは安和の人に支えられて、ずっとお世話になっている。どこかで恩返ししていかないと、という思いはいつも持っている。」
自身も青壮年の活動を行い、神祭や地区民運動会などの行事には積極的に参加している。
地域で商売をしているからやって当たり前だ、と工場長は話していたが、会話の端々から地域を大切に想っていることが伝わってくる。
そう思った理由のひとつが「安和の特産品を小学生が書いたことがあってね。子どもが安和には『虎斑竹』があるって。嬉しいし、ありがたいね。」というエピソード。
これまで会社を支えてきてくれた人たちと、土地の恵みに感謝し商売をしていく。
持ちつ持たれつ。125年余り続く地元企業には、継承した技術と培ってきた揺るぎない信頼があることを肌で感じた。
竹虎(株)山岸竹材店
住所:高知県須崎市安和913-1
電話:0889-42-3201
https://www.taketora.co.jp/
文/上野 伊代