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【高知グルメPro】ローカル感満載!常連客に愛される大衆居酒屋6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2024年4月21日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなすフードジャーナリスト「美食おじさん」ことマッキー牧元さんが、高知の料理店・生産者さんをめぐる「高知満腹日記」。今回は高知県須崎市浦ノ内の内海に浮かぶ「海の上食堂 浮橋」で貝焼きをいただいてきました。
店は海に浮かんでいた。
須崎市と土佐市にまたがる穏やかな太平洋の入江、浦ノ内湾に浮かんでいた。
海上レストランである。
ここで海の幸、特に貝を焼いて食べさせるのだという。
早速、貝の盛り合わせが運ばれる。
まず目につくのが色とりどりの貝殻が美しい、二枚貝の長太郎だろう。
長太郎貝とは、ヒオウギ貝の高知での呼び名で、ホタテ貝と同じイタヤガイ科の二枚貝なので、ホタテに似ている。
寒い海に住むホタテに比べて、暖かい海域で育つ長太郎は、ホタテより濃厚な味がする。
特に塩分濃度が濃い土佐の海で育った長太郎は、甘みが濃いのだという。
赤やオレンジ、黄色に紫と、様々な殻の色があるが、殻の色が違っても味は変わらないらしい。
卓上コンロに長太郎を置くと、しばらくして貝殻がパカリと開く。
乳白色の肢体に液を滴らした、身が現れる。
たまらずトングで取って、53年間作り続けているという特製ダレにつければ、ミルキーな甘味が口いっぱいに広がった。
「ハハハハ」と、思わず笑わずにはいられない味である。
次がナガレコ。これも高知の呼び名で、トコブシのことを言う。
コンロの上に置くと、活きがいいのだろう、途端に身をよじり出す。
身をよじり、よじり切って静かになった頃合いを見て、身を取り出す。
こいつは少し磯の香りがあって、淡い甘味が潜んでいる。
この二つの食べごろは、焼ける少し手前がいい。
半生より少し火が入ったところである。
これらの貝のスープを新鮮なネギにかけて焼いた「ネギ焼き」が、地元の方たちに人気で、常連は「ネギ焼き」にアサリをいっぱい乗せて食べるのだという。
さらにはサザエに驚いたのは肝の味わいで、苦味やえぐみが一切ない。
海といっても内海なので、波はないし、揺れない。
外に一面に広がる海を眺めながら、かたっぱしから貝を食べていると、なにか自分が貝と同化し、海の中にいる気分となる。
夏はウェイクボートで乗り付けて食べたりするお客さんもいるというが、それもまたいいではないか。
今回は食べなかったが、貝をそのまま出汁に突っ込んで食べる、「貝のしゃぶしゃぶ」もおすすめだという。
また春には牡蠣も出され、冬には猪のしゃぶしゃぶもやられると聞いた。
聞き捨てならないのは猪で、この海で泳いで貝とか海老とかを食っている猪を捕獲して、食べるのだという。
「山の猪より味がよく、たまらない味なんです」と、店の「キャプテン」徳弘 誠さんがおっしゃった。
さらに面白いのは店内に釣り堀があって、天然のチヌやスズキが釣れるのだという。
最後の締めに、アサリと長太郎を使った、旨味が丸い「貝飯」をいただきながら考えた。
貝のしゃぶしゃぶや猪のしゃぶしゃぶに牡蠣、こりゃあ春にも冬にも来なくちゃいけないな。
高知県須崎市浦ノ内東分 鳴無 3715「海の上食堂 浮橋」にて