グルメ
【高知グルメPro】地元愛されイタリアンから人気の和食屋に夜の〆の屋台餃子までそろう「廿代町」のおススメグルメ6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2024年6月2日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、テレビ、ラジオ出演や料理評論、紀行、雑誌寄稿を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は高知市の中央卸売市場にある中華「上海」にお邪魔してきました。
朝3時に開店する、高知市の中央卸売市場にある「上海」にやってきた。
店名は「上海」なのに四川料理である。
「いらっしゃい!」
店に入ると、店主・竹内宣夫さんの大きな声が響きわたる。
50年間も市場で働く人々の胃袋を満足させてきたこの食堂の名物は、「激辛四川ラーメン」だという。
店の一番人気で、ほとんどの客が頼むだけでなく、わざわざこれを目当てに来る人がいるという。
早速食べてみたいところだが、戦略としてはいきなり「激辛四川ラーメン」には行かずに、周辺から攻めてみることにした。
前菜はどうしようか。
実はこの店、町中華としての料理だけでなく、定食屋も兼ねている。
店内の冷蔵庫には、「さあ、たくさんご飯食べてね」と、様々な料理が入っている。
まず刺身かな。
マカロニサラダも、もらっておこう。
なにやら具が入っただし巻き卵もハンバーグも行ってしまえ。
朝からミニ宴会である。
朝でなかったら確実に飲んでいる。
刺身は、ビンチョウマグロで、なめらかな身質がうまい。
そりゃそうだ、ここは魚を扱う市場、質の高い魚しか出せないものね。
マカロニサラダもハンバーグも安定の味わいで、ついご飯を頼みたくなったが、グッとこらえた。
具入り玉子焼きを食べてみたら、中の具材はうなぎの蒲焼、つまり「う巻き」であった。
朝から「う巻き」が食べられるなんて、憎いねこんちくしょう。
さあ調子が上がってきた。そろそろ激辛ラーメンといくか。
いや、その前にオーソドックスなラーメンを食べてみよう。
湯気を立てて運ばれたラーメンには、懐かしい風景がある。
モヤシが乗り、シナチクが入り、その下には煮豚が見える。
堂々たる昭和の眺めである。
おそらく50年間微動だに変わってない味なのだろう。
コクリとした醤油味が濃く、そこに中細のカンスイ入りの黄色麺がからむ。
煮豚もシナチクの配置もいい。
さあ、それではいよいよ「激辛四川ラーメン」といってみよう。
溶岩なような、真っ赤な湖に沈んだ野菜や麺が見え隠れする、壮絶なラーメンが運ばれた。
真ん中に黄身が落とされているのが、唯一の救いである。
顔を近づけるだけで、目がしばしばするほどの辛い湯気が登ってくる。
スープを一口。
最初に感じたのは、旨味である。
しかし、すぐその後から辛味がやってきた。
唇、舌、上顎、喉と、口腔内のあらゆる粘膜に張り手を食らわす。
真ん中の黄身を潰し、これに麺を絡めてすすってみる。
これはいい。
黄身の甘みがまず広がって舌が和らぐと、その少し後に強烈なる辛さがやってくる。
撫でられてから殴られているような、ツンデレなれぬデレツンな感覚があって、これはハマるに違いない。
布陣は、唐辛子、辣油、胡椒、白菜、ネギ、豚肉、イカだが、すべて辛さの中に埋没している。
食べているうちにこのスープを、飯にかけてもおいしいかもしれないと、白ご飯も頼んでみた。
ああ、これはいい。
ご飯の甘みが辛さを少しだけ吸収して、いい塩梅になる。
さらには、スープの底に沈んでいた、肉やイカなどをサルベージできるという良さもある。
このラーメンはご飯必須です。
市場の人はこの辛さで、働いて疲れた体に喝を入れるのだろう。
これを食べてしまったら、他の辛いラーメンなど、土佐弁の言うところの「たっすい(≒弱々しい)」に違いない。
癖になり、常習化する人がいるに違いない。
激辛を食べ終え、余韻の辛味を消火するために炒飯も頼んだ。
塩味は薄いが白胡椒が強く、醤油をほぼ感じさせぬ炒飯はあっさりとして、燃え盛った舌や唇をそっと鎮めるのだった。
そうして、ひとしきり「激辛四川ラーメン」の辛さが和らいだと思ったすぐさま、不思議とまたあの辛さが恋しくなっているのだ。
マッキーさんが食べたメニューの他に、高知家の〇〇編集部おススメの「編集部いただきメニュー」をご紹介。
まさに「町中華」であるこちらに来たからには、王道の「麻婆豆腐」に、ジャンルにとらわれずに市場の胃袋を満たすガッツリメニューの「カレーライス」もいただかないわけにはいかないのです。
まずは「麻婆豆腐」。
名物の「激辛四川ラーメン」の流れを受けたかのようなその紅の見た目に、ちょっと腰が引けるが、ダイレクトにひと口いただいた後に、秘伝の「オン・ザ・ライス」で攻めれば、するすると食べられるじゃないですか。
まさに、ご飯がススムの逸品。
そして、上海に渡りし異国代表の「カレーライス」がこちら。
シンプルな具材に、皿の「上海」の文字がミックス食文化風情を盛り上げる。
朝飯昼飯すべての定食に、セットとして出してほしいものだ。
そのなにもかもが「うまいねぇ」と言わしめる「上海」。
50年の歴史はだてじゃない。
高知県高知市弘化台 高知中央卸売市場内「上海」にて