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地元愛され居酒屋の王道メニューでおじさん昇天するの巻「仙樹」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2023年7月16日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は高知市で地元民にも観光客にも愛されているThe 居酒屋の「仙樹」にお邪魔してきました。

「ホタレのひいといぼしに、しょいのみ、ひめいちフライ、モチくじらに、ながれこ、はだかちゃんをちょうだい」。

この一連のくだり、他県の人はさっぱりわからんだろう。

ここは、高知市の居酒屋「仙樹」である。

先日アップした「満潮」を出た我々は、炉端焼きの「仙樹」へと移動した。

【記事】高知で貝料理と言えばココ!心もお腹も満たされる「満潮(みちしお)」

高知のいいところは、市内中心部にぎゅっと良き居酒屋が集まっているところである。

ここも人気居酒屋で、あらゆる層の客が来ている。

壁にずらりと貼られた品書きを見て、にこりと笑う。

居酒屋定番メニューもあるが、うむむ、お主やるな!と思ったのは、ニロギ、ほたれ、うるめ干し、メヒカリ、そしてハダカイワシの干物があることである。

こうした小魚の干物は、酒飲みに欠かせない。

だが一般的な居酒屋で置いているのは丸干くらいで、こんなに多く揃えている店は少ないのが現状である。

ちなみにニロギは、体長10センチほどの平たい魚で、高知ではよく食べられる。

小さいながらもうまみが深く、くせになる。

本名はヒイラギで、1日干し(高知ではこれを、「ひいといぼし」と呼ぶ)がいい。

ホタレとは、片口鰯のことで、頬が垂れるほどうまい(つまりほっぺたが落ちるほどうまい)ことからホタレと呼ぶのだそうである。

まずは、しょいのみをつけて食べるもろきゅうを、燗酒で迎える。

醤油の実から来たしょいのみは、天然の生醤油を搾る前のコクのあるもろみを汲みだし、桶の中でじっくりと発酵・熟成させたもので、濃厚な味わいがキュウリをうまくさせる。

次に来たのが、あか牛レバー塩である。

たたきのように焼いたレバーは新鮮なのだろう。

血臭くなく、ねっとりと甘い。

以上で燗酒が二本空いた。

お次は、「ヒメイチ(ヒメジ)のフライ」である。

一見キスフライのようだが、カリリと香ばしい衣が弾けると白い身が顔を出し、その味に思わず笑った。

上品な甘さがあって、心が穏やかになるような味わいである。

ここで酒を、日本酒から無手無冠 ミステリアスリザーブに変えた。

栗焼酎で有名な高知のダバダ火振りの原液を長期間熟成させたもので、ストレートで飲むのが正しい。

度数は強いが、コクとうまみが封じ込められ、栗の甘い香りがするグラッパという感じで、こりゃあたまらんばい。

ええい、今夜は酔うてやるぞ。

ここで運ばれたのが、「ニラ豚」である。

言ってしまえばニラと豚の炒め物なのであるが、高知県人が愛するニラがこじゃんと入っていて、これまた焼酎にあうんだな。

続いてハダカちゃん、つまりハダカイワシの干物が運ばれた。

名前通り、皮なき干物で裸をさらしている。

味が濃い。なんとも味が濃い。

噛むほどに味が膨らんで来て、大至急酒である。

これ数本で一晩飲めると思うほど、良き酒のあてである。

最後に前の店で頼み忘れていたナガレコの煮つけを頼んだ。

しっかり煮込まれたそいつを噛んでいくと、貝の味がグイグイ出てくる。

つい遊び心が出て、一緒に頼んだ香り高い焼き筍の上に肝を少し乗せて食べてみる。

ああ、筍の甘さと肝のほろ苦みと甘みが共鳴して危険な味となった。

そこへすかさず、無手無冠を流し込む。

ああ。

無手無冠、肝、筍三者の異なる甘みが共鳴して、僕は仙樹をまっとうし、昇天するのであった。

高知県高知市大川筋1丁目「仙樹」にて