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【高知グルメPro】地元愛されイタリアンから人気の和食屋に夜の〆の屋台餃子までそろう「廿代町」のおススメグルメ6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2022年9月4日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす美食おじさんことマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は、とんかつ狂シェフが繰り出す「四万十豚のバラ煮込み」をいただいてきました。
また高知市のとんかつ屋「ぼるころっそ」にやってきた。
「四万十豚バラ煮込み定食」を、食べるためである。
バラ煮込みと言っても、大方が想起する煮込み料理ではない。
4時間、沸騰する手前で野菜と共に煮込んだバラ肉を揚げた、「バラカツ」なのである。
全国のとんかつ屋でも、バラをカツにしている店はほとんどない。
僕の知る限りでも、鹿児島の「あぢもり」しかない。
しかも、ここは本来豚しゃぶの店であり、とんかつ屋ではなく、サイドメニューとしてのバラカツであるから、とんかつ屋としてはここが唯一かもしれない。
店主の笹垣さんに、なぜ始めたのかと聞けば
「長崎で豚バラの角煮を食べた時に思ったんです。これをかつにしたらおいしんじゃないかってね」。
さすが、とんかつ狂である。
そのまま揚げるのではなく、一旦煮込んでから揚げるというのもいい。
ご存知のようにバラ肉とは、豚の肋骨のある腹側の肉で三枚肉ともいう。
肋骨の周囲の肉であることからの名で、「あばら」の「あ」が略され「バラ肉と呼ばれるようになったという。
脂肪と赤身が三層に折り重なっているため、「三枚肉」と呼ばれ、ベーコンやサムギョップサルに使われ、骨つきだとスペアリブと呼ばれる肉の部位である。
つまり脂が多く、揚げるとしつこいのではという発想から、揚げて料理されることはない。
しかしとんかつ好き=脂好きであるから、バラカツと聞いただけで、猛然と食欲が湧いてくるのだ。
バラ肉は小さくカットされ煮込まれたバラ肉を、豚の部位が書かれたTシャツを着た笹垣さんが、慎重に揚げ、一口大に切っていく。
皿に盛られて、身を寄せ合った小さなバラカツが、妙に可愛い。
箸で持ち上げれば、煮込まれてその境界線が淡くはなっているものの、脂と肉が層になっているのがわかる。
一口で言ってみた。
ちゅるん。
口の中で脂が溶けた。
甘く溶けた。
思わず顔が崩れる。
これはいい。
煮込まれているので、揚げ油とぶつからなくしつこさが和らいではいるが、豚脂の魅力は十分にある。
これはまず塩がいい。
塩を衣にふって食べる。
すると塩が豚脂の甘みを引き立て、さらにおいしくなるではないか。
ご飯を喚起させるなら、ソースもいいが、辛子を醤油に溶いた、辛子醤油がいい。
辛子の刺激と酸味が油を緩和し、醤油のうま味がご飯を恋しくさせる。
ちなみにこの辛子は、高知特産の柑橘「文旦」の皮入りだという。
ほんのり香る文旦が、心にくいのだな。
さらにはご飯も、豚汁も、キャベツや野菜も、お新香も、一切の手抜きがない。
すべての脇役が、とんかつをおいしく食べてもらうよう盛り立てている。
それこそが、とんかつをこよなく愛する笹垣さんの誠意なのである。
そのせいだろうか?
バラカツをいただいた我々は、もうひとつ食べたいねと言って、上ロースカツを頼み、今度は肉の滋味を、存分に堪能したのであった。
高知県高知市高そね「紅豚 ぽるころっそ」にて