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「高知昼酒天国の規範「葉牡丹」主人の波乱万丈人生とは?」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2019年2月24日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなすタベアルキストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

高知は昼酒天国である。

みなさん、昼から堂々とお酒を飲んでいらっしゃる。

例えば、高知市内の名所となっているフードコートの「ひろめ市場」に行くと、女子高生がお菓子を食べながら宿題をしている横で、おっさんたちが赤い顔をして酒を交わしていたりする日常がある。

そこには、「昼酒は世間様に申し訳ない」という気持ちが微塵も感じられない。

そんな潔い、高知が好きである。

高知人が酒好きなのか、酒が高知を呼んだのかはわからない。

さすが、吉田類を生んだ土地柄である。

あなたも高知に来たら、大手を振って昼酒を楽しむことができる。

ならば、どこでやるか?

それは、なにはなくとも「葉牡丹」だろう。

開店は11時、店が開くと、一人また一人と年配の男性が入っていき、12時過ぎには、カウンターがほぼ埋まっている。

とにかく昼だというのに、みなさん静かに、嬉しそうに酒と対話をしてらっしゃる。

さて何を頼もうかと、メニューを見れば、「ホルモン煮込み」、「串フライ盛り合わせ5本」、「親鳥の足」、「シメサバ」。

これらがすべて、安い。

これでは、つい頼みすぎ、飲みすぎてしまうじゃありませんか。

まず、エビにイカ、キスに豚肉、ナスの串フライでビールをやり、

酢醤油味で味つけられた豚の胃袋や腸の煮込みと、

噛みしめる喜びがある親鳥で、燗酒をやる。

お腹がすいて来たら、鶏肉がゴロゴロと入ったオムライスを頼んで、これで酒を飲むという手もある。

とにかくメニューは、刺身から高知の珍味、名物串揚げに串焼、たこ酢に土手鍋、八宝菜にニラレバといった中華料理、サイコロステーキに寿司、親子丼に牛丼とバラエティーに富み、100種類近くある。

その上サービスは皆年配の女性で、気働きがよく、キビキビとして、快適と来ている。

いかようにも楽しみ、過ごすこともできる、懐の深い店なのである。

その秘密は、71歳になられる二代目店主、吉本さんにあるのではないだろうか。

値段が安いことを言うと、

「値上げしたら、メニューを新しくしなきゃいけないし、新たな値段も覚えんといかん。自分がメンドくさいから、値上げはしてない。ガハハ」

と、笑われた。

酢醤油味という珍しい煮込みの味が、どうして考えられたのかを聞くと、

「いやあ、お客さんが勝手に酢醤油入れて、こうなったがよ。ガハハ」

と、また笑う。

そう、恰幅のいい体を揺らしながら、よく笑われる吉本さん自身が、寛容力のある方なのである。

先代時代は、7〜8席のカウンターがある串カツ屋だったという。

吉本さんがまだ幼稚園時代である。

そのうちに二階に雀荘を作り、その出前用に洋食を作れる料理人を雇う。

手狭になって増築し、中華料理の料理人が入ったりしていくうちにメニューが増えていったのだと言う。

聞けば、吉本さんはすぐに店を継がれたのではないと言う。

20歳の頃、ホテル学校に通いたくなり、ワシントンで店をやっている従兄弟を訪ねて、渡米した。

まだドルが360円時代であるから、渡米は至難だったに違いない。

向こうで10年ほど働き、いよいよ腰を落ち着けようかと思った矢先に、連絡が来た。

兄が大阪で店を出すことになったから、お前が葉牡丹を継げ、という連絡だった。

アメリカでの夢を捨てて、高知に帰り、高知市を代表する居酒屋に育て上げたというわけである。

こうした波乱万丈の人生を抱えていられるからこそ、鷹揚で、少々のことは動ぜず、あらゆる世代のお客さんを受け入れる、懐の深い店となったのだろう。

うむ。親父さんの人生の話を聞きに、また「葉牡丹」で飲みとうなって来た。

高知市堺町「葉牡丹」にて