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【高知グルメ】土佐ジローを使った旨みたっぷり中華そば「中々。」ほっとこうちおすすめ情報
この情報は2022年5月8日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹にとんかつ、フレンチにエスニック、そしてスイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する高知家の〇〇の人気連載記事「高知満腹日記」。今回は、ご家族で営んでいる中華「箸の和 AZONO村」にお邪魔してきました。
閑静な住宅街に、ぽつねんと明かりが灯っていた。
まるで映画セットのような佇まいである。
外から覗くと、割烹着姿のお母さんと鉢巻きを閉めたお父さんが立っており、横では息子さんだろうか、慌ただしく料理を作っている男性が見えた。
「いらっしゃいませ」。
店に入ると、お母さんの柔らかい口調に包まれた。
店名は「AZONO村」という。
料理人であり店主は、息子さんであり、渡された名刺には、橋詰太郎村長とある。
お通しが出された。
鰯の黒酢煮込みと鳥レバーの山椒ソースがけだという。
ここで初めて気がついた。「AZONO村」は、中国料理居酒屋なのである。
ほろりと崩れるイワシの脂に黒酢のコクがからむ。
中国料理のおこげの下に隠されたレバーは甘く、山椒の刺激が一層その甘みを引き立てている。
こうして、丁寧な仕事と工夫が行き届いたお通しが出されると、俄然燃えてくる。
嬉しくなって、さあ食うぞというモードに火が入る。
次に「よだれ鶏」を頼んでみた。
おや、普通のよだれ鶏とは少し味が違うぞ。なんだろう。
聞けば、よだれ鳥のソースに、土佐ぬた(葉にんにくをすりつぶして、白味噌、柚酢などを加えた郷土の合わせ味噌調味料)を加えたのだという。
よだれ鶏の引き締まった辛味や刺激に、のほほんとした温かみが潜んでいていい。
つい、燗酒を頼んでしまった。
次に頼んだのは、広東料理の王道「すすぎの清蒸(蒸し物)」である。
ああ、うまい。
火の入り具合がギリギリで、実はしっとりとして、スズキという魚の勢いを捉えている。
そしてなにより味が濃すぎず薄すぎず、抑制が効いている。
この村長、なかなかの腕だぞ。
土佐の郷土料理だという「きゅうりと海老の煮物」は、どこまでも優しく、しみじみとしたおいしさがある。
うん。こいつも燗酒だな。
内臓好きとしては「ホルモン唐揚げ」も頼みましょう。
おそらく、いったん揚げてから、四川の唐辛子と花椒(中国山椒)でさっと炒めたのだろう。
脂の甘みを広げるホルモンに、辛子と山椒の香りが効いていて、箸が止まらない。
この料理には、大至急ビールである。
ネギの甘みの活かし方もにくい。
次は渋く、台湾オムレツを頼んでみた。
干し大根を混ぜた、平たいオムレツである。
大根の甘みが卵に溶け込んで、こいつも酒が進んで困る。
よし最後は「麻婆豆腐」だあ。
この料理も正しく、美味しい。
つまり、主役である豆腐が崩れていない。
しかも豆腐が中まで熱々である。
このことができていない店がいかに多いことか。
なんでも、お父さんとお母さんがやっていらした居酒屋を、息子さんが中華風に変えたのだという。
フライパン一つで息子が次々と作っていく姿を、微笑みながら眺めるご両親の姿が微笑ましい。
73歳になられたというお母さんに聞いてみた。
「お母さん、息子さんが作った麻婆豆腐食べますか?」
「はい。なんでも食べます。なんでもおいしくて」。
そうなんだ。息子さんが作る料理には、愛がこめられてるんだな。
高知市薊野中町「箸の和 AZONO村」にて