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【高知カツオ県民会議シンポジウム】「高知と言えばカツオ!」…だったのが高知の美味しいカツオを自慢できなくなる日がやってくるかも!
この情報は2018年6月10日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなすタベアルキストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。
「子供の頃はね。泣きよったらブリ食わすぞいわれてね。そんくらい、安うて、しょっちゅう食べよったがよ」。
田中鮮魚店の主人田中さんは、そう言って笑われた。
尋ねたのは3月初めだというのに、店頭には丸々と太った天然ブリが横たわっている。
その立派な姿を見て歓声を上げたら、すかさずそう言われた。
ここは全国の市場ランキングで9位に推された、中土佐町にある久礼大正町市場である。
人気店、田中鮮魚店の店頭には太刀魚やブリ、モンゴイカやかますなどのおなじみの魚に混じって、ベンケイやウツボなど馴染みの薄い魚も並んでいる。
「カツオ? カツオはまだ早いねえ。まだあがってない」
そう言いながら、様々なカツオ料理を教えてくれた
「カツオの中骨は筍と煮ると美味いがよ。酸味と旨味を筍が吸うてね。あとくるぶしいう部位もあってね。ここが甘い。別名犬殺しともいうがよ。犬が食うと骨が喉詰まって苦しむが」。
この田中鮮魚店の素晴らしきところは、向かいに直営の食堂があり、店頭に並んだ魚を選んで料理してもらい、食べられるところにある。
早速、珍しいベンケイやブリの白子、そしてブリと白イカをお願いすることにした。
そして、どうにも気になったものがあった。
「ブリわた」である。
様々なブリの内臓が、詰められて輝いている。
これはどうしても食べねばならないと思って尋ねると、「これはニンニクの葉と一緒にして、すき焼き風に甘辛く煮つけるとうまいがよ。でもニンニクの葉がないとね」。
「ニンニクの葉がないとだめですか」。
「ダメやね」。
しかしこれはどうしても食べねばならない。
そこで市場の八百屋に走った。
店頭には、ニンニクの葉がない。
「ニンニクの葉ありますか?」
「うーん。昨日のでよかったらあるよ」といって奥から出してきてもらった。
お代を払おうとすると、「いや昨日のやから、お代はいらん」。
さすが大正町市場。太っ腹である。
言葉に甘えてニンニクの葉を掴んで戻った。
「ニンニクの葉ありました!」
「よし、そんなら作ろうか」。
まず刺身が並ぶ。ブリの刺身は、実にしなやかで、塩をつけると甘みが引き立つ。脂が入っていながら、しつこさやいやらしさがない。
白いかは甘く。ナマコは柔らかい。
ベンケイの食感はアジに似て、微かに肝の風味が漂う。
小さいのに、マナガツオの刺身のようなエロさがある。
ブリの白子は、ふんわり甘い。
そしてブリわたである。
心臓は凛々しく、シコシコと弾む腸はその食感が楽しく、肝臓にはねっとりとした甘みがある。
全体にコラーゲンの甘みが溶け込んで、それが醤油と砂糖の甘辛味と相まって、ご飯を呼ぶ。
時折香る、ニンニクの葉の刺激的な香りが味を引き締め、飽くことがない。
「こりゃあ。たまらん。すいません、お酒頼んでいいですか」。
ううむ。昼の田中鮮魚店には、嬉しい危険が待っている。