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【高知グルメPro】地元愛されイタリアンから人気の和食屋に夜の〆の屋台餃子までそろう「廿代町」のおススメグルメ6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2018年5月27日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなすタベアルキストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。
海の味がした。
海底の味がした。
今まで食べてきたところ天とは違う、純真な味に包まれた。
「久礼に来たからには、ところ天を食べんといかん」。
そう言って連れて行かれたのは、町外れにある一軒家だった。
店の前では「土佐久礼名産 ところ天」と書かれた青い暖簾が、風に舞っている。
「いらっしゃいませ」。
出迎えてくれたのは、「高知屋」店主の本井友子さん(78歳)である。
優しい目をされた三代目女店主に、「ところ天ください」と声をかけると、「はい」と微笑んで、さらに目が優しくなった。
ガラスの小鉢に入った「ところ天」は、涼やかな顔をしている。
海苔も辛子もなく、茶色いつゆの中で鎮座しているやつをそうっとすすると、ひんやりと唇に当たり、舌の上に広がった。
噛む。慎重に噛む。
そこにあったのは、そこはかとない海の呼吸だった。
海の底で、まだ人間の手に触れられていない、無垢の汚れなき息吹だった。
ところ天とは、こんなにも澄み切った味わいなのか。
押し出された一本一本に、海の滋養が静かに潜んでいる。
四万十の水を使ったカツオ節の出汁と醤油が出会ったつゆは、すっきりとして、ところ天を生かす。
このところ天とお母さんの笑顔を見るためだけに、また高知に来たいと思った。
創業は、大正10年。
97年間営む、おそらく現存するところ天屋では最古の店は、今日も淡々と店を開け、昔ながらの清らかな心でところ天を作り続ける。