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【高知家の後継者募集】店舗ディスプレイ「飾り樽」の特殊部材の木材加工・製造を引き継ぐ高知県四万十町「共栄木材有限会社」

この情報は2025年7月19日時点の情報となります。

    市街地に立地するオシャレなカフェやブティックに、木製の雰囲気のある樽がディスプレイされているのを、見かけたことはないだろうか。

    全面にヒノキ材が使用され、「BLUE MOUNTAIN」 とか「COFFEE」などの文字が施された樽である。

    この樽は実際にコーヒーが入っていた樽ではない。そういう樽で輸入されていた時代もあっただろうが、今、飾られている多くの樽は、その洒落たデザインを残してディスプレイ用に製造された「飾り樽」だ。

    この特殊用途の樽の原材料を製造しているのが共栄木材有限会社。高知県西部を流れる大河、四万十川沿いの四万十町希ノ川に立地する企業だ。

    「この材料を造るには特殊な機械が幾つも必要。日本で飾り樽の材料を造ることができるのはうちだけなんです」

    共栄木材の社長の父で前社長の味元和義さん(73)が胸を張る。高級な建築材料として使用される四万十ヒノキ。

    その端材を原材料にして、複雑な作業を経て、樽の外側の木材部品に仕上げていく。

    機械によって削り出していく作業なのだが、使用する機械は4種類もあり、それぞれが特殊な機械。原材料を投入すれば、自動的に製材された部材が出てくる訳ではなく、4回もの工程を経てやっと出来上がる。

    機械は使用するが、もはや手造りと言っていいような造り方なのだ。

    詳しく見てみよう。

    最初の機械では、部材の湾曲を削り出す。予め部材の長さに製材された原木を、ドラム状の筒ノコが装備された特殊機械に手作業で送り込み、中央部が外側に出ている緩やかな三日月形の湾曲した部材を削り出す。

    次は各部材の上下部に溝を付ける作業だ。

    樽に組み上げた際に、底板や蓋が、取り付けられる溝を造る工程で、「あり切り」と呼ばれる。

    その次は、微妙な樽の曲線を創るために行う「バッテラ」という工程。この作業を終えると、部材は「笹かまぼこ」のような形状になる。

    最後に、部材の左右に凹凸の溝を付ける「さねはぎ」という工程を行う。

    この凹凸を使って樽を組み上げる。

    こうして4台の機械を渡り歩いたヒノキ材がやっと飾り樽の部材になるというわけだ。

    和義さんは、こうやって50年近く、樽材を造り続けてきた。

    しかし、コロナ禍による不況の影響などを受けて売上高が減少、従業員を募集しても応募はなく、深刻な人手不足にも陥った。

    三男の雄也さん(39)に社長を譲ったものの、建て直す見通しが立たず「今の自社の状況では事業継続ができない」として、廃業に舵を切ったという。

    「昔は、この地域に同じような樽の部材を造る企業が幾つかありました。しかし、どんどん廃業していって、今は私たちだけになってしまった。この部材を造る機械と技術を何とか引き継いでもらいたいんです」

    和義さんはこう力を込める。

    工場の土地建物と内部の機械類などすべての一括売却が希望だが、樽材を造る機械類だけを格安で売却しても構わないという。

    いずれの場合も一定の技術指導は行うそうだ。

    工場の立つ「希ノ川」地区は、昔は「四手ノ川」と呼ばれていた。

    ところが、2006年の町村合併の際に、大字を「希ノ川」に変更した。合併によって自治体名が変わることはよくあるが、大字を変えるケースは数少ない。

    変更された理由は「若い人に帰って来て欲しい。そんな希望の持てる集落にしたい」という地元住民の願いだったという。

    地域の人々が希望を込めた地名「希ノ川」。

    全国的に見ても希少な樽を製造する機械や技術が継承されて、地域に希望の灯が輝き続けることを願わずにいられない。

    企業情報

    共栄木材有限会社

    住所:高知県高岡郡四万十町希ノ川53

     

    経営は上手く行っているのに、後継者がいないために廃業せざるを得ない――そんな悩みを持つ企業が全国的に激増し、大きな社会問題になっている。

    高齢化先進県である高知県は全国に輪をかけて、事業承継の課題が山積している。

    「県内での事業承継を少しでも増やしたい」。このコーナーは、事業を譲りたい人と受け継ぎたい人を繋ぐ連載です。

    高知県事業承継・引継ぎ支援センター(088-802-6002)

    メール:kochi-center@kochi-hikitsugi.go.jp 

    担当:野本・谷

     

     

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