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「食べ歩きスト・マッキー牧元が出会った高知の魚料理ベスト5」マッキー牧元の高知満腹日記 その69

       

この情報は2019年9月22日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

2018年の5月から始まった「マッキー牧元の高知満腹日記」。

この1年半で、70軒近くのお店や生産者さんを訪ね歩き、食べた中での「魚料理ベスト5」をあげてみよう。

どれもこれも甲乙つけがたい中からの厳選である。

第5位 「うつぼ料理研究所」の「ウツボの薄造り」

半透明の白き身が美しく、見た目はフグ刺しのようである。

こいつをポン酢につけて食べてみると「シコシコシコシコ」と、強靭な身が歯の間で爆ぜる。

それを噛み、噛む。

するとどうだろう。うっすらと甘みが滲み出てくるではないか。

どう猛な顔立ちから想像できない品がある。

それに惚れ、「こりゃあうまい」と膝を叩く。

その時、獣のような、一筋縄ではいかない香りがかすかに漂った。

品を感じる甘みと、野生の香りというギャップがたまらない。

品のある顔立ちした高知の女性が、時折見せる気の強さにも似て、すっかり惚れてしまった。

高知県高知市「うつぼ研究所」

関連記事➡「気品の中に野生あり。“はちきん”のようなウツボの刺身に魅了されるの巻」

 

第4位 「干魚のやまさき」の「沖ウルメとアオメの干物」

沖ウルメとアオメと呼ばれる、メヒカリより大きい、トモメヒカリの干物を外で炙って食べた。

熱々を口にすれば、舌の上で魚が爆ぜる。

凝縮した味が、これでもかと湧き出てくる。

干物だというのに、生の魚より生命力を感じさせるではないか。

瞬間思ったのは、「ああ、酒が飲みたい」ということである。

次に思ったのは、「こいつをおかずに、ご飯を猛然と掻き込みたい」ということである。

高知の力ある魚と、豊かな太陽の光が生んだ傑作を齧り、噛み締めながら、しみじみと思う。

酒や白いご飯を思い起こしながら考える。

一年中これを常備できたら、なんと幸せだろうかと。

高知県高知市御畳瀬「干物のやまさき」

関連記事➡「酒を白飯を誘う、鮮魚よりも魚を主張する土佐の干物」

 

第3位 「魚兼」の「一本釣り潤目鰯のおから鮨 と鮎の寿司」

魚屋ながら、週末だけ魚料理を出す

塩麹につけた鮎を、酢洗いし、寿司にしたもので、鮎の淡い旨味が舌を包み、夏の香りが鼻から抜けていく。

一方イワシは、一本釣り潤目鰯ならではの味の綺麗さと濃さが共存していて、それをおからの優しさが軽くいなして、美しいバランスを作る。

ああ、しみじみとおいしい。

京都や東京の一流割烹のレベルであり、その洗練と気品に、唸らずにはいられない。

高知県吾川郡いの町藤町「魚兼」

関連記事➡「日本一幸福にさせてくれる魚屋さん」

 

第2位 「ヴィラサントリーニ」の「ホエーに漬けた黒ムツの炭火焼、ヴァンブランソース、原木なめこ、焼き菜花」

焼くと少し野暮ったい黒ムツに、色気が忍び寄っている。

食べればしっとりとして、身が舌に吸い付くように口の中で崩れていく。

脂をじっとりと舌に流し、身の穏やかな甘みが、広がる。

ホエーに漬け込んだことによって生まれた、味の濃縮と品なのだろう。「ああ、うまい」。そう、思わず呟かせる力がある。

ヴァンブランソース(白ワインと魚のフォンによるソース)は、豊かな旨味と酸味で黒ムツの魅力を輝かせ、色気を灯す。

付け合わせの焼き菜花は、香りと苦味でアクセントをつける。

さらに無駄なものは一切なく、高みに登っていこうという勢いが、我々の胸を焚きつける。

この魚の魅力を存分に引き出した、傑作。

高知県土佐市宇佐町「ヴィラサントリーニ」

関連記事➡「真っ青な目に染みる海、紺碧なる空、そして輝く白。高知にギリシャがあった」

 

第1位 「ゆう喜屋」の「刺身 カツオ、清水サバ、真蛸、宗田鰹の新子」

土佐で刺身をいただくならここである。

気さくなご主人と笑顔がステキな奥さんの二人で切り盛りされている和食店だが、ご主人の魚の目利きが図抜けている。

例えばカツオの滑らかさと凛々しさ。身のきめ細やかさ、味の上品さ、奥に秘めたたくましさ、香りの高さなど、同じ魚だろうかと思うほどである。特に香りの高さの差が、歴然としている。生きている魚の、爆ぜる香りがする。

そのほか、まだ生きているかのようなクリッとした食感で魅了する清水サバ。ミルキーな甘みが噛むほどに出るまだこ。

そして、8月~9月のわずかな時期だけだが、ソウダガツオの子供の「新子」は、微かにモチッと歯の間で弾み、これから大人にならんとする命の息吹が溢れ出る。それでいながら切なさと、一瞬を切り取った、いたいけな甘みに唸る。そこへ高地特有の仏手柑を絞れば、香りが切なさに優しく寄り添って、命をいただくありがたみを膨らます。

そのほか、アジやイカ、キスなど、普段食べている魚の概念が変わる体験ができる店なのだ。

高知県高知市帯屋町1丁目「ゆう喜屋」

関連記事➡「カツオとキスをした日」 「新子の初々しさに、恋をしたの巻」