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【高知グルメPro】旨い魚がある 会いたい大将がいる 四万十の大人気居酒屋「なかひら」食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2024年7月21日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食いしんぼおじさんことマッキー牧元さんが高知の美味しいお店や生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は、四万十市中村の天神橋商店街にある人気居酒屋「なかひら」にお邪魔してきました。

四万十市中村の天神橋商店街に店を構える「なかひら」に行くと、名物大将、店主の中平 富士夫さんがしゃがれ声で声かけてきた。

「今日は市場が休みやけん、ホントはビリガツオは無いんやけど、あんたらが来るいうけん特別に仕入れたわ」。

さすが、四万十市中村で一番人気の居酒屋である。

「ビリガツオ」とは、獲れたてのカツオのことを指す。

鮮度がよく、まだ活かっている状態で、その身の食感は弾力に溢れ、高知では特に珍重されているという。

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頼むまでもなく運ばれたカツオの刺身は、色が深い。

だが透明感のある、赤さである。

さあ食べよう。

モッチモチ、モチモッチ。

口に入れて目を丸くした。

これがモチガツオと呼ばれる代物か。

まだ生命力を感じさせる弾力があり、歯を押し返す力が漲っているではないか。

いやあ素晴らしい。

食べていると、何かこちらにも力を吹き込まれたようで、鼻息が荒くなる。

モッチモチと噛んでいくと、カツオに潜んだ鉄分の旨みが開いて来る。

爽やかな香りが、鼻に抜けていく。

「このビリガツオ食べたら、他のカツオはもう食えん!」と、コーフンしていると、大将がまた出てきて言う。

「これサービス。四万十川で趣味で獲りよるけん」と、なんと天然鰻を出してくれた。

鰻屋で食べたら1万円はする四万十川産の天然高級鰻である。

趣味で獲ったからと、サービスしてくれる大将の剛気に惚れた。

食べるとよく動いているからだろう、皮下のコラーゲンの感じが違う。

ダレておらず筋肉感がある。

さらには、脂のくどさがなく、すっきりとしていて、小骨も少ない。

これを受け止めるご飯の美味しいこと。

何か無性に腹が空いてきて、常連たちが必ず頼むという「ソース焼きそば」も注文してしまった。

湯気を上げて運ばれたソース焼きそばは、もやし、キャベツ、ニンジン入りである。

ソースだけでなく、醤油が少し入っているのだろうか?

親しみやすく、日本酒に合う味わいで、こりゃあ酒の肴になるわい。

続いてこれも常連たちの定番だという「鶏皮餃子」も頼んでみた。

小麦粉の皮の代わりに、鶏皮で包んだ餃子である。

おぉ、餃子は皮が命だとよくいうが、こういう命もあるのか。

これはいける。

さらに中村の居酒屋には必ずあるという「チーズカリカリ」を頼む。

チーズに衣をつけてあげたものであるが、店によってチーズは異なり、衣も違うのでいろいろ試してみると面白い。

「中は白いクセがないチーズで作っちょうがよ」。

大将が運びながら説明してくれた。

外のカリッとした衣と、中でとろけるチーズの、対照的な食感がクセになる。

どの料理も「特製なかひらサラダ」がついてくるのも、飲んべオヤジたちにとってはいいことだね。

そして、ここは飲み物もいい。

一番のおおすすめは、お母さんが漬けた梅漬けと焼酎である。

果肉が多く、てれんと崩れる梅干しの塩味と酸味が焼酎に溶け込んで、もうたまらん。

その時、また大将がビリガツオを運んできた。

「10分単位で食感変わるき。さっきとは違うけんね」と、言う。

噛めば、さっきのがもっちもちだつたのが、今回はもっちりな感じである。

面白い。たった10数分でこんなに変わるのか。

今回食べてみて、切れ端の分厚いところがおいしいことを発見した。

噛んでいるとうまみだけが出てくる。

そして、もっちりとした勇壮な歯応えと、爽やかな香りの対比が面白い。

こりゃ、今後はビリカツオ以外は食えんわ。

「また来てよ」。

最後は大将が入り口まで見送ってくれた。

実はこのご主人、高知県四万十市出身の漫画家、安倍夜郎の名作「深夜食堂」主人のモデルになったと言われているのだ。

眉毛から目の下への傷跡はないが、そっくりである。

顔がそっくりなだけではない。

お客のことを思い、様々なサービスをしてくれる姿も似ている。

いや、それより「深夜食堂」は、マスターの作る料理だけでなく、マスターに会いたくて皆きている。

「なかひら」もまた、大将に会いたくてお客さんが集まる店なのだった。

高知県四万十市中村天神橋34「なかひら」にて