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【高知グルメPro】地元愛されイタリアンから人気の和食屋に夜の〆の屋台餃子までそろう「廿代町」のおススメグルメ6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2019年8月4日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。
君はウツボの刺身を食べたことがあるか?
と、上段に構えてみたが、実は僕もはじめてである。
仲間のハモや穴子の刺身はあるが、ウツボはない。
なにしろこいつは、不気味である。
エイリアンの口の中から出てくる、鋭い口に似た顔かたちをしていて、全身ホラーである。
性格も凶暴で、岩場の空洞(関西では空洞のことをウツボラといい、それが源となったという説がある)に身を隠し、タコやら小魚を捕獲して食べる。
鯛などもそうで、そういう旺盛な食欲を持っている魚というのは、得てしてうまい。
ではなぜ刺身が、一般的ではないのだろう?
高知に来ても、唐揚げしかなく、一部、久礼に、すき焼きという文化があるだけである。
今回その理由を初めて知った。
クエなどと同じように長生きだから、加齢臭というか、臭いのだという。
生きたままでも臭く、すぐに食べても匂いがあるというほどらしい。
しかし人間の執念は、すさまじい。
これをなんとか刺身で食えないかと考えた人がいたのである。
おろした身を紙で包み、毎日紙を変えながら5日間寝かすのだという。
これによって、余分な水分が抜け、臭みも同時に弱まるのだろう
臭みが取れたからといっても安心してはいけない。
刺身にする捌き方も、極めて困難である。
なにしろ骨が硬い。
小骨がある。
背骨とヒレが離れている。
などと、他の魚にはない個性があるので、コツがいる。
さばいてくれたのは、「うつぼ料理研究所」を主宰されている、町戸太である。
ちなみに高知では、あらかじめ予約をしておくと町戸さんが関わられた「酔夜」と「かとう」という店で食べられるらしい。
包丁を入れて、身を起こすように切っていく。
素人目にも、難儀さがわかる。
だが町戸さんは、鮮やかな手つきで、刺身にされた。
薄造りにされたウツボは、見た目はフグである。
半透明の白き身が美しい。
ポン酢につけて食べてみる。
シコシコシコシコ。
強靭な体が歯の間で爆ぜる。
噛み込んで行くと、うっすらと甘みが滲み出る。
こりゃあうまいやと思った瞬間である。
獣のような、一筋縄ではいかない香りがかすかに漂った。
その品をも感じる甘みと、香りとのギャップがたまらない。
品のある顔立ちした高知の女性が、時折見せる気の強さにも似て、惚れてしまう。
その後出していただいた「煮こごり」も、葉にんにくソースを添えた「湯引き」も同様である。
品の中にしたたかさがある。
「なめたらいかんぜよ」。
そう、噛むごとに、言われるのである。