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【高知グルメPro】これぞビストロ!前菜からワインが止まらない 高知市「モンキュイジーヌ」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2024年2月25日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす「美食おじさん」ことマッキー牧元さんが、高知の料理店・生産者さんをめぐる「高知満腹日記」。今回は高知市のビストロ「モンキュイジーヌ」にお邪魔してきました。

その店は住宅街の中で明かりを灯していた。

小さな店である。

細長い店は手前に、厨房と向かい合ったカウンターが奥に伸び、奥はテーブル席が一つある。

カウンターには、常連らしき男性客が一人、ワイン片手に晩御飯を食べていた。

働くのはご主人ひとり、いかにもパリの下町にありそうなビストロである。

とりあえずシャブリを一本もらい、オードブル盛り合わせをもらうことにした。

やがて「オードブルバリエーション」が運ばれる。

写真手前右から左へ、砂肝のコンフィ、キッシュロレーヌ、トーストしたバケットの薄切りに乗せられた豚のリエット。

その奥、左はカサゴのエスカベッシュ、右にピクルス。

奥右から、パテドカンパーニュ、自家製ハム、上にはサラダが盛られてい。

ふふ、ワインが進むじゃないか。

練り肉の旨味があるパテドカンパーニュ、きれいな味わいの自家製ハム、温かみが感じらられるキッシュロレーヌ、揚げ浸しにしてあっても質の高さが伺えるエスカベッシュ、脂の甘い香りが流れる豚のリエットと、どれも丁寧な仕事が光っている。

一人でパテやハムなどシャルキュトリー類の仕込みは大変だろうが、フランス料理店を開いている気持ちが伝わる前菜盛り合わせである。

なんだか嬉しくなって、これもビストロ料理の定番「牛トリッパの煮込み」をお願いした。

薄切りバケットが添えられた牛トリッパは、分厚いセンマイ使っていて、臭みは微塵もなく、温かみのあるトマト風味で、弾む食感。

素直な味である。

熱々をバケットに乗せ、ほおばったら、速攻白ワインを流し込む。

調子が出てきた。

お腹も刺激されて空いてきた。

矢継ぎ早に数品を頼む。

ビストロとは、いわばフランスの居酒屋である。

フランス料理は、前菜、魚料理、肉料理を順に頼むべしということではなく、お腹の具合で好きなように頼むのが楽しい。

次に運ばれしは、蕪のスープだった。

うす茶色の液体を、一口飲んで唸る。

なんと慈愛に満ちているのだろう。

カブの滋養が、体の隅々まで行き渡っていく。

次は、「生ハムと茸のオムレツ」が運ばれた。

切れば中はトロトロの半熟である。

いいぞ。

きのこの香り、生ハムの旨味、卵の甘みが出会って、響きあう。

誰もが笑顔になる味である。

続いて「イノシシのプラム白ワインソース」が運ばれた。

イノシシのロースとバラ肉が、甘酸っぱいプラムと白ワインソースで煮込まれ、野菜類が添えられる。

ああ、イノシシの優しい甘みを、プラムの酸味が増幅させる。

これもワインが進んで困るじゃないか。

イノシシの皮も添えられていて、そのコラーゲンの甘みが、なんとも美味しい。

最後には「栗のリゾット」が運ばれた。

ハムの香りと塩気に栗の甘みが際立つ。

こりゃあ飲めるリゾットだぞ。

ワインが一本空いた、もう一本頼みたくなってきた。

この気分こそがいいビストロの証である。

近所にあったら通ってしまうな。

実直そうなご主人に話を聞いた。

店を始めて12年目で、高知の新阪急ホテルで働かれた後に独立なさったのだという。

高知の西部、四万十町窪川にご実家があり、栗のリゾットの栗と米はご両親が作られたとものだということであった。

「お一人で仕込みが大変でしょう」というと、

「いえ、ずっと動いていたいんです。でも間に合わないので、開店して料理をしながら仕込みもしています」

と、笑われた。

昼間は金曜日だけやられているという。

店名「モンキュイジーヌ」は、フランス語で自分の厨房、マイキッチンという意味である。

店名の由来を尋ねると。

「お客さんが、友人の家に来てくれたみたいに、寛いでくれたらいいなあ。そう願ってつけました」。

人の良さそうなご主人は、そう答えるのだった。

高知県高知市はりまや町3丁目20-1「モンキュイジーヌ」にて