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【江戸川乱歩作家デビュー100周年記念】日本の探偵推理小説に多大な影響を与えた高知の3人の文学者「めざめる探偵たち~文豪ストレイドッグス×高知県立文学館~」開催中

       

この情報は2023年10月25日時点の情報となります。

江戸川乱歩が「二銭銅貨」を雑誌「新青年」に発表し、作家デビューしてから100周年を迎える年であることを記念して、高知県立文学館で開催されている「めざめる探偵たち~文豪ストレイドッグス×高知県立文学館~」。

江戸川乱歩や横溝正史といった探偵推理小説家たちに多大な影響を与えた高知県出身の3人の文学者、黒岩涙香、馬場弧蝶、森下雨村。そして再びのコラボとなる「文豪ストレイドッグス」の世界に思いをはせていただきたい。

「めざめる探偵たち~文豪ストレイドッグス×高知県立文学館~」開催中!!

2023年10月7日~2024年1月8日の期間中、高知県立文学館で「めざめる探偵たち~文豪ストレイドッグス×高知県立文学館~」が開催されている。

今年2023年は江戸川明治から昭和にかけて活躍した日本の探偵推理小説家・江戸川乱歩が「二銭銅貨」を雑誌「新青年」に発表し、作家デビューしてから100周年を迎える年である。

今回の企画展はその100周年を記念して、江戸川乱歩や横溝正史に多大な影響を与えた高知県出身の3人の文学者、黒岩涙香、馬場孤蝶、森下雨村を取り上げたものである。

また今回の企画展では2018年に続き、朝霧カフカ(原作)・春河35(漫画)の「文豪ストレイドッグス」と2度目のコラボレーションが展開されている。

映画化・舞台化もされ、熱狂のうちにアニメ第5シーズンも終了した大人気作品とのコラボ展示は必見である。

 

日本探偵小説の黎明期を支えた、高知出身3人の文学者

1890年、現在の高知県佐川町に生を受けた森下雨村は、早稲田大学英文科を卒業後博文館に入社。

「冒険世界」の編集長を務めたのちの1920年に「新青年」の初代編集長となり、広く内外の探偵推理小説の紹介に努め、雨村自身も翻訳・創作を手がける一方で探偵作品の公募を展開した。

「新青年」の中で江戸川乱歩・横溝正史らの作品を世に送り出し、「日本探偵小説育ての親」ともいわれる人物である。

1922年、江戸川乱歩から「二銭銅貨」「一枚の切符」の投稿を受けた雨村は、激賞し、「新青年」掲載の旨を伝えたという。

のちに雨村は「別冊宝石」に寄せた「三十六年前」で、この時の驚きを振り返っている。

机の中から、封もきらない原稿がとり出された。「二銭銅貨」と「一枚の切符」がそれであった。筆者は江戸川乱歩、アラン・ポーをもじったものであることはいうまでもない。早速、目をとおしたぼくの驚きも諸君の想像にまかせる。
 これが日本人の創作だろうか。日本にもこんな作家がいるであろうか。ただただ驚嘆の目を見はるばかり、内心では、なにか外国の作品にヒントを得たものではあるまいかという懸念もうかんだほどの驚きであった。

(底本:「江戸川乱歩 日本探偵小説事典」河出書房新社 1996(平成8)年10月25日初版発行/初出:「別冊宝石 四十二号」岩谷書店 1954(昭和29)年11月10日刊 より) 

 

黒岩涙香は1862年、現在の高知県安芸市川北で誕生し、作家・思想家・翻訳家・記者など様々な分野で活躍した。

1892年「萬朝報(よろずちょうほう)」を発刊し、「相馬家毒殺騒動」や「淫祠蓮門教会」といったスキャンダラスな出来事を他紙よりも長期にわたり報道するとともに、涙香が翻訳した「鉄仮面」「巌窟王」「幽麗塔」等を掲載ことで部数を伸ばし、一時は東京一の発行部数を残すなど、新聞界に大きな業績を残した。

また、涙香の翻訳作は100作を越え、日本の作家たちに大いなる影響を及ぼしたのである。

少年時代より涙香のファンで会った江戸川乱歩は、1937年に「幽麗塔」の舞台を日本に移しリライトし「講談俱楽部」に連載、更に1957年には少年向けにリライトした「時計塔の秘密」を発表している。

 

1869年現在の高知県高知市升形に生まれた馬場孤蝶は、島崎藤村や樋口一葉、与謝野鉄幹、与謝野晶子らと交流を交わしながら、広く小説や随筆を発表した人物である。

翻訳家としても活躍し、トルストイの「戦争と平和」やモーパッサン、ゴーリキー、バルザックなどの作品を翻訳している。

江戸川乱歩は「二銭銅貨」「一枚の切符」の二つの原稿を、森下雨村の「新青年」に投稿する前に、「当時、その方の親玉の様に思った」という弧蝶に送ったが、半月ほどたっても返事がないために乱歩は、質問を箇条書きにした返信用の葉書を同封し、原稿の返送を求めた。

しばらくすると弧蝶から「樋口一葉の何回忌とかで長らく旅行中だった」との丁重な内容の返信とともに原稿は返送されたという。

乱歩は後日弧蝶を訪ね無礼を詫びたが、弧蝶は意に介していない様子であったという。

 

江戸川乱歩は1954年7月発行の「南風」第2巻7号「土佐と探偵小説」の中でこう述べている。

「土佐の風土と探偵小説は、どこでつながっているのであろうか。土佐人の伝統と性格の内には、探偵小説(謎と推理の小説)を愛好するような要素が、他国人に比べて濃厚なのであろうか。」

この随筆は高知県立文学館の館報「藤並の森Vol.102」により詳しく紹介されているので、高知県立文学館のHPよりご覧いただきたい。

 

待望の「文豪ストレイドッグス」コラボレーション第2弾

会場には、絶大な人気を誇る「文豪ストレイドッグス」の展示があちらこちらになされている。

アニメシーンの長大なパネルや、魅力的で美麗なキャラクターパネル、複製原稿の展示にはたくさんのお客様が足を止め見入っていた。

 

畳の上に巻かれた紙の枚数まで忠実に再現されたワンシーンの展示ブースでも、畳の上にあがり記念撮影する観覧者や自作の人形を並べ撮影するファンで盛況であり、皆一様に笑顔である。

文学館学芸員の熱心なオファーにより、2回目のコラボレーションとなった「文豪ストレイドッグス」。

これからも第3弾、第4弾とコラボレーションが続くことに期待していきたい。

 

その他様々な関連イベントも開催されています

今回の企画展にはさまざまな関連イベントが開催されている。

毎週土曜日13:30からの展示内容をより深く知れる展示解説や、日にち限定で全問正解者にポストカードがプレゼントされるクイズイベント、5日間に限り先着100名様に、展覧会ポスター(A2サイズ)と描き下ろしイラストのポストカードをプレゼントされる先着プレゼントdayなど、今回の企画展をより楽しめる関連イベントが目白押しである。

高知県立文学館のHPで詳しい日程をご確認いただき、関連イベントもぜひ楽しんでいただきたい。

 

「めざめる探偵たち~文豪ストレイドッグス×高知県立文学館~」日程はこちら

■イベント詳細■

「めざめる探偵たち~文豪ストレイドッグス×高知県立文学館~」

会場:高知県立文学館2階 企画展示室

期間:2023年10月7日(土)~2024年1月8日(日・祝)※12月27日~1月1日は年末年始のため休館

開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時半まで)

観覧料:500円(常設展含む)※高校生以下無料

 

100年を経て今なお愛される、探偵推理小説・ミステリの世界を楽しんでいただき、またそれに関わった高知の3人の文学者のことをしってみてはどうだろうか。

 

取材協力:公益財団法人 高知県文化財団 高知県立文学館