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【高知グルメPro】地元愛されイタリアンから人気の和食屋に夜の〆の屋台餃子までそろう「廿代町」のおススメグルメ6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2023年8月27日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、テレビ、ラジオ出演や料理評論、紀行、雑誌寄稿を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は愛にあふれるクラフトビールがいただける高知県香美市香北町の「TOSACO TAP STAND」にお邪魔してきました。
「ビールの嫌いな妻と一緒に飲めるビールが作りたかったんです」。
前回訪ねた時、オーナーの瀬戸口 信弥さんは、転職してビール作りを始めた理由を、そう語られた。
【記事】バナナ、リンゴに米。様々な高知の産物を使って作るクラフトビールは、妻への愛に溢れていたの巻
こんな素敵な理由で、ビールづくりを始められた方は中々いない。
誰かのためにビールを作る。
愛する人のために作る。
「TOSACO」ビールが多くの人から支持されるのは、そんな熱情がビールに注がれているからに違いない。
僕は、そう思った。
そんな「TOSACO」が、さらなる発展進化をしているらしいという話を聞いて、香美市香北町にやってきた。
前回、お話を伺ったのは、小さな醸造所兼事務所だった。
今回訪れたのは、今年4月15日にオープンした、醸造所併設のビアスタンドである。
つまり出来立てのビールが、すぐさま飲めるという、ビール好き、いや酒好きにはたまらない施設なのであった。
名を「TOSACO TAP STAND」という。
高知の強い太陽の下で、グレーの壁がモダンに輝く場所だった。
テラスもあるので、さぞかしここで飲んだらうまかろう。
店に入ると、ビールを注ぐタップがズラリ9つ並んでいる。
うむ、そそるなあ。
早速何種類か、前回飲んでないビールをいただいた。
「紫蘇」を飲むと、爽やかな香りが広がるともに、柔らかな酸味を感じる。
なんの酸味かというと、乳酸菌だという。
それには驚いた。
本来乳酸菌は、ビール作りにとって敵なはずである。
それを取り込んでしまう。恐るべしである。
だが瀬戸口さんは本当にビール作りが好きなのだろう。
そんな苦労は微塵も見せない。
生き生きとした酸を得た紫蘇ビールは、うだる暑さを見事に吹き飛ばしてくれるのだった。
次はトマトである。
飲めば、これはビールでありながら、トマトを口に突っ込まれているような、強力なトマト感がある。
高知の日高村のトマトを使った、日高村限定販売だそうで、喉奥にいつまでもトマトの旨味の余韻が残って、素晴らしい。
これとピッツァを食べながら飲んだら、旨いだろうなあ。
次に飲んだのが、榧(カヤ)の実のビールである。
榧はイチイ科カヤ属の常緑針葉樹で、木材は最高級の碁盤、種子は食用油などの原料になり、実は縄文時代から食用にされてきた。
しかし今は、あまり食べられない。
瀬戸口さんは、生産者の耕作放棄地で多くの榧木と出会って、これをなんとかしたいと思ったのだという
榧は成長するのに300年かかる樹木である。
300年で大木になる榧が生み出す、持続的な森づくりに自分がかからわせてもらう意義を感じて、何とかこのビールを生み出したかたっのだという。
しかし、食用油に使うのだから、ビールの大敵、油分がある。
また香りが強い分、難しさもある。
何回も挫折して諦めかけていたが、一年たってようやく完成に至ったのだという。
そのビールは森そのものであった。
森林の澄んだ空気を詰め込んで、体を浄化してくれるようなビールである。
僕なら、寝る前に飲みたい。
いや朝風呂に入った後、一人で飲むのもいい。
仕事で疲れた頭を、すっきりとさせるのにもいいかもしれない。
そんなビールだと思った。
瀬戸口さんの作るビールには、他の醸造所と違う個性がある。
それは植物や果物に対する愛である。
彼は、高知に生まれた人ではない。
だが牧野富太郎を生んだこの土地に来て、あまつさえ植物への敬意が深まったのだろう。
何度試行錯誤しても、その本来の植物の持ち味を生かしたビールを完成する瀬戸口さんは最後にこう言われた。
「クラフトビールを通じて、生産者が来てくれる。自分作ったものがビールになっていくことが嬉しくて、来てくれる。 ありがたいです」。
愛に満ちた仕事は、やはり揺るぎない。
高知県香美市香北町橋川野「TOSACO TAP STAND」にて
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