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【高知グルメPro】四万十町で初めて出会った加圧鍋で茹でるうどん「KOBACO(こばこ)」フードジャーナリスト・マッキー牧元の高知満腹日記
この情報は2024年5月12日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹にとんかつ、フレンチにエスニック、そしてスイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する高知家の〇〇の人気連載記事「高知満腹日記」。今回は、高知家満腹日記の定番メニュー「うどん」。閑静な住宅街にある「さぬき結」にお邪魔してきました。
こんなところにうどん屋があるのだろうか。
そんな閑静な住宅街に、「うどん」の幟が揺れていた。
近くにある丸亀製麺も、ここに讃岐うどんの名店があるとは知らないだろう。
こんな場所でもうどん屋がやっていける。
それこそが高知が隠れたうどん県である証拠でもある。
そんな高知のうどんを数多く食べてきた。
その中でこの店は「さぬき」と名がつくだけあって、高知のうどん屋の中では最もコシが強い。
30回は噛んで、ようやく喉に消えていくうどんである。
強めの塩気もいい。
まずは基本の「ざるうどん」を頼んでみた。
「ざるうどん」はその店のうどんを素性を確かめるためには、まず頼まなくてはならない。
うどんのコシ、香り、塩気、香りなどが最もよくわかるからである。
見たください、この輝き。
太いうどん一本一本に存在感があって、さあ噛んでみろ!と言っているうどんである。
ううーん。コシが強い。
歯を押し返すような弾力があって、奥歯に力を入れて噛んでいく。
すると小麦の香りが立ち上がって、鼻に抜け、30数回噛んだところでようやく小さくなり、消えていく。
早食いなんぞさせるもんかという、根性のあるうどんである。
続いて「五目うどん」を頼んでみた。
少し甘めのつゆに、とろろ昆布、ゆで卵、ネギ、油揚げ、豚肉などが、所狭しと乗せられている。
この大阪うどん的甘いつゆは、やわいうどんが合うと今までは思っていた。
甘いという存在に、強さは合わないからである。
しかし、今回食べて、新しい発見をした。
コシの強いうどんとの対比がいいのである。
なにやら頬を撫でられながら頬を叩かれるといった、アンビバレントな快感があって、やめられない。
合間にちくわ磯部揚げを頼んでみたが、これが揚げたてカリカリで、ますます楽しくなってきた。
次に「肉ぶっかけ」もいってみた。
少し甘辛く味付けをした、豚肉とよく炒めた玉ねぎ、大根おろし、生姜が乗ったうどんである。
味付けがいい。
甘辛いが上品な味付けがうどんを邪魔しすぎず、食べた瞬間うどんが食べたくなる喚起力がある。
さらなる挑戦がしたくなった。
そこで珍しい「味噌カツうどん」というものを頼んでみた。
名古屋の味噌カツがうどんに乗っているのか、あるいは味噌ダレがかかったうどんなのかと想像していたが、果たしてそれは、味噌うどんにカツが二枚乗せられたうどんであった、
ヒレカツである。
味噌と出汁の甘さで、まったりとする。
その中をコシの強いうどんが駆け抜ける。
実は、高知には「味噌カツラーメン」なるものも存在するのだ。
【記事】「高知県民のソウルフード、豚太郎『みそカツラーメン』の謎をさぐれ!」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記
カツをぐいっと噛み、そのうまさの余韻でうどんを噛み締めるのもいい。
これまた新たなうどんの可能性を感じさせるうどんである
この地で店を開いて12年になるという、店主の西川徹さんは、香川で学んだ人にうどんを教わったのだという。
「この立地は通りがかりの人はいないし、誰も気づかないような住宅街で不安はなかったですか?」と聞くと、
「実は実家なんです」と、照れ笑いしながら静かに語られた。
家族みんながうどんが好きだったのだという。
出汁は鰹と昆布と煮干しでとり、元々洋食をやられていたこともあり、平日の定食にチキンカツがいただけたりする。
夏は「トマトぶっかけ」や「冷やしキムチ」「ツナマヨおろし」や温冷の「大葉うどん」といった品書きもあるという。
実は当日売り切れてしまい食べられなかったが、人気は「角煮うどん」だという。
1日二十人前作るがすぐに売り切れるという。
これは夏にも来なくては。
「ご主人の一番好きなうどんはなんですか?」と、聞いてみた。
「ぶっかけです」と、小さな声で答えられた。
「冷たいのは一番味がわかるから」と、続けて加えられた。
物静かなご主人からは想像ができないたくましいうどんは、今日も閑静な住宅街で客を待っている。
マッキーさんが食べたメニューの他に、高知家の〇〇編集部おススメの「編集部いただきメニュー」をご紹介。
実は「さぬき結」の隠れた人気メニューが、こちらの「豚角煮ぶっかけ」。
マッキーさん取材時にはすでに売り切れていたので、改めて編集部がいただきに。
甘辛く煮込まれた豚の角煮と麺に温玉の黄身を絡めれば、この一杯で幾重もの味変と美味しさを楽しめる。
もう一品「天ざるうどん」もいただいてみた。
こちらをいただいて思うのは、高知のうどん屋さんに共通するポイント、「天ぷらがうまい」。
これまでに数多くのうどん屋さんにお邪魔してきたが、どこのうどん屋さんも天ぷらがうまいのだ。
衣をつけすぎず、カリリと揚がった天ぷらは、うどんの「つけつゆ」や「かけつゆ」に浸しても余計につゆを吸うことなく、天ぷらの食感を楽しめるのだ。
高知県高知市高須3丁目「さぬき結」にて