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「ざる」「五目」「味噌カツ」閑静な住宅街のうどんの名店でいただく「さぬき 結」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

       

この情報は2023年6月4日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹にとんかつ、フレンチにエスニック、そしてスイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する高知家の〇〇の人気連載記事「高知満腹日記」。今回は、高知家満腹日記の定番メニュー「うどん」。閑静な住宅街にある「さぬき結」にお邪魔してきました。

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こんなところにうどん屋があるのだろうか。

そんな閑静な住宅街に、「うどん」の幟が揺れていた。

近くにある丸亀製麺も、ここに讃岐うどんの名店があるとは知らないだろう。

こんな場所でもうどん屋がやっていける。

それこそが高知が隠れたうどん県である証拠でもある。

そんな高知のうどんを数多く食べてきた。

その中でこの店は「さぬき」と名がつくだけあって、高知のうどん屋の中では最もコシが強い。

30回は噛んで、ようやく喉に消えていくうどんである。

強めの塩気もいい。

まずは基本の「ざるうどん」を頼んでみた。

「ざるうどん」はその店のうどんを素性を確かめるためには、まず頼まなくてはならない。

うどんのコシ、香り、塩気、香りなどが最もよくわかるからである。

見たください、この輝き。

太いうどん一本一本に存在感があって、さあ噛んでみろ!と言っているうどんである。

ううーん。コシが強い。

歯を押し返すような弾力があって、奥歯に力を入れて噛んでいく。

すると小麦の香りが立ち上がって、鼻に抜け、30数回噛んだところでようやく小さくなり、消えていく。

早食いなんぞさせるもんかという、根性のあるうどんである。

続いて「五目うどん」を頼んでみた。

少し甘めのつゆに、とろろ昆布、ゆで卵、ネギ、油揚げ、豚肉などが、所狭しと乗せられている。

この大阪うどん的甘いつゆは、やわいうどんが合うと今までは思っていた。

甘いという存在に、強さは合わないからである。

しかし、今回食べて、新しい発見をした。

コシの強いうどんとの対比がいいのである。

なにやら頬を撫でられながら頬を叩かれるといった、アンビバレントな快感があって、やめられない。

合間にちくわ磯部揚げを頼んでみたが、これが揚げたてカリカリで、ますます楽しくなってきた。

次に「肉ぶっかけ」もいってみた。

少し甘辛く味付けをした、豚肉とよく炒めた玉ねぎ、大根おろし、生姜が乗ったうどんである。

味付けがいい。

甘辛いが上品な味付けがうどんを邪魔しすぎず、食べた瞬間うどんが食べたくなる喚起力がある。

さらなる挑戦がしたくなった。

そこで珍しい「味噌カツうどん」というものを頼んでみた。

名古屋の味噌カツがうどんに乗っているのか、あるいは味噌ダレがかかったうどんなのかと想像していたが、果たしてそれは、味噌うどんにカツが二枚乗せられたうどんであった、

ヒレカツである。

味噌と出汁の甘さで、まったりとする。

その中をコシの強いうどんが駆け抜ける。

実は、高知には「味噌カツラーメン」なるものも存在するのだ。

【記事】「高知県民のソウルフード、豚太郎『みそカツラーメン』の謎をさぐれ!」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記

カツをぐいっと噛み、そのうまさの余韻でうどんを噛み締めるのもいい。

これまた新たなうどんの可能性を感じさせるうどんである

この地で店を開いて12年になるという、店主の西川徹さんは、香川で学んだ人にうどんを教わったのだという。

「この立地は通りがかりの人はいないし、誰も気づかないような住宅街で不安はなかったですか?」と聞くと、

「実は実家なんです」と、照れ笑いしながら静かに語られた。

家族みんながうどんが好きだったのだという。

出汁は鰹と昆布と煮干しでとり、元々洋食をやられていたこともあり、平日の定食にチキンカツがいただけたりする。

夏は「トマトぶっかけ」や「冷やしキムチ」「ツナマヨおろし」や温冷の「大葉うどん」といった品書きもあるという。

実は当日売り切れてしまい食べられなかったが、人気は「角煮うどん」だという。

1日二十人前作るがすぐに売り切れるという。

これは夏にも来なくては。

「ご主人の一番好きなうどんはなんですか?」と、聞いてみた。

「ぶっかけです」と、小さな声で答えられた。

「冷たいのは一番味がわかるから」と、続けて加えられた。

物静かなご主人からは想像ができないたくましいうどんは、今日も閑静な住宅街で客を待っている。

高知県高知市高須「さぬき結」にて

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