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【高知グルメPro】地元愛されイタリアンから人気の和食屋に夜の〆の屋台餃子までそろう「廿代町」のおススメグルメ6選 食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記セレクション
この情報は2023年4月30日時点の情報となります。
立ち食いそばから割烹にとんかつ、フレンチにエスニック、そしてスイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす「美食おじさん」ことフードジャーナリストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する高知家の〇〇の人気連載記事「高知満腹日記」。今回は、高知の一般の方からプロのシェフ、小売店さんから観光客まで、大人気の高知市「日曜市」であれこれ買い物をしてきました。
全国を旅すると、必ず朝市を覗く。
輪島朝市、三崎朝市、八戸舘鼻岸壁朝市、函館朝市。高山の陣屋前朝市、佐賀県武雄温泉の楼門朝市などである。
どの朝市も個性にあふれ、地元の食文化が反映されている。
だが、ここ、高知の日曜市は図抜けていると思う。
理由は三つある。
一つ目は、「地味な」伝統食文化が根付いていること。
二つ目は、日照時間が多く、植物が育ちやすい高知ならではの野菜や果物があふれ、かつ魚介加工品が多いこと。
三つ目は、どの朝市も売り手の高齢化による減少方向にあり、日曜市とてその傾向は否めないが、志高き若い人たちによる出店が増えていることである。
10年近く、この日曜市の推移を見てきたが、特に3の傾向は、近年著しいように思う
今回、日曜市で買い求めたものは以下である。
まず、植田おばあちゃんの「すごくからいがおいしい唐辛子」を買った。
おばあちゃんと話していると、
「山の高いとこで育てゆうけんど、車もないし取りにも行けん。それやき、もう来月で終わり」という話をきいて、思わず4束を購入した。
小さいが辛い。唐辛子が持つ旨みもある。
家でアリオペペロンチーノを作り、普段の一人前一本の法則で入れたら、激辛であった。
これは長く持つぞ。
次は梅干しである。
仁淀川にある池川自然農園の自然農法の梅を、松田じいちゃんが漬けた「梅干」である。
なんと16年ものだという。
それなのに、300円という値段で、もうこれは誰にも教えたくない。
梅干、丸い。
味が、丸い。
歯がふわりと梅肉に抱かれると、旨みが滲み出るが、塩がまったく舌に当たらない。
16年の間、塩と梅が馴染に馴染んだ自然がある。
そして赤紫蘇を食べれば香り高く、ハッと胸を突かれる。
塩味が丸いので、ご飯が進むというより、米の甘みと仲良くして、味わいを深めてくれる、そんな梅干しである。
おそらく6〜7個食べても、くどくならない。
いや、できることなら、お茶を飲みながら、時間をかけて6〜7個食べたい。
さすれば、きっと裕福な気分が訪れるだろう。
そんな我々の時間に、福を与えてくれる梅干しである。
次に、
「もうやめようと思ってたんだけど、みんながやめないでって言うの」という、おばあちゃんが漬けた胡瓜の粕漬け200円も買った。
「酒粕にも甘い、辛いがあってね、毎回味が違うのが面白い」と、言ってたなあ。
ポリッ。齧れば味が深い。
胡瓜と酒粕が、完全に一体化して、新しい宇宙を作っている。
これは絶対燗酒である。
二切れで一合。
ご飯なら、二切れで一膳はいける、危険な粕漬けである。
次は、農家の弘田さんが漬けた、大根の「パリッパリッ漬け」を購入した。
塩漬けしてから無添加の調味液で二週間漬けたという。
噛めば、ガリッ、パリンッと、痛快な音が響く。
隣の人が噛んでいる音が聞こえるほどである。
漬け汁のあまみと旨味がきて、噛んでいくと、大根の辛味や甘味、そして香りが顔を出す。
二週間以上経ってシワシワなれど、まだ生きている感がみなぎっている。
上品なべったら漬けという情趣もあって、日本酒のつまみにもよし、ご飯の友にもよし、お茶受けにもよし。
軽く1本半は行けちゃうね。
フランス料理のシェフが作ったという、田舎寿司と焼き鯖寿司も買った。
おばあちゃんが作る田舎寿司より味が丸く、優しい。
この味わいは、プロとしての矜持なのだろうか?
優しい分、するするとお腹に収まり、止まらない田舎寿司であった。
最後が若い方がやられている。自然農法で作る「ハーブ仁淀川」の「レモングラスティー」と「ローレル」、「ピクルスセット」を購入した。
とても気持ちのいい青年だったなあ。
東京に戻ってお茶を飲み、料理にローレルを使った。
普段、東京で買うローレルとは違う、香りの高さで肉を生かしてくれる
一方お茶は、なにか精神をゆっくりと沈めていく効能があって、バッハのチェロ曲を聞いたような安寧を運んでくる。
いま家の冷蔵庫では、きゅうりと玉ねぎ、人参を漬けたピクルスが眠っている。
楽しみである。
いやぁ、今回も掘り出し物を購入できた。
ただ見て回るだけでなく、売ってる方と話すと、嬉しい発見が必ずある。
そして我々の食生活に、新たな喜びを運んできてくれる。
それが高知の日曜市なのである。
高知県高知市追手筋1丁目 ・2丁目「日曜市」にて